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by nicoxz

高専生に三顧の礼、金融業界が大卒同等で争奪戦

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はじめに

「来たれ高専生」――銀行や証券会社が相次いで高等専門学校(高専)の卒業生の採用に乗り出しています。SMBC日興証券は2025年4月入社から高専生の新卒採用を開始し、初任給を大卒と同じ33.7万円に設定しました。三菱UFJ銀行も2026年度入社の採用活動からシステム開発やデジタル関連のコースで高専生の募集を始めています。

これまで製造業やIT企業が主な就職先だった高専生に対して、なぜ金融業界が熱い視線を送るようになったのでしょうか。DX人材不足という構造的な背景と、高専教育の特徴から読み解きます。

金融機関が高専生の採用を本格化

SMBC日興証券の先行事例

SMBC日興証券は2025年4月入社から高専卒業生の総合職採用を開始しました。記念すべき「1期生」となったのは、苫小牧工業高等専門学校を卒業した長谷川翔音さん(22歳)です。システム関連の部門に配属され、アプリケーション開発に携わっています。「新人ながら思ったより裁量が大きい」と語っています。

注目すべきは初任給の設定です。高専卒の初任給を大卒と同じ33.7万円(退職金前払給3.7万円を含む)としており、学歴による処遇差を設けていません。これは従来の金融業界の慣行からすると画期的な対応です。

同社は2021年から「高専インカレチャレンジ」というコンテストを開催しており、高専生の技術力だけでなく、発想力やコミュニケーション力にも注目していました。数年にわたる接点づくりが、正式な採用制度の導入につながったと言えます。

三菱UFJ銀行のコース別採用

メガバンクの三菱UFJ銀行も、2026年度入社の採用活動からシステム開発やデジタル関連のコース別採用で高専生の募集を開始しました。同行のシステム・デジタルコースでは、銀行ビジネスの根幹を支える業務アプリケーションの構築・運用に加え、AI、Open APIなどの最新技術を活用した業務効率化やサービス高度化に取り組んでいます。

ITオープン(システム開発の上流から下流工程)、サイバーセキュリティ、グローバルIT、AI・データサイエンス、デジタル企画など、幅広い職務が用意されており、高専で培った実践的なスキルを直接活かせる環境が整っています。

なぜ金融業界が高専生を求めるのか

深刻化するDX人材不足

金融業界が高専生に注目する最大の理由は、DX(デジタルトランスフォーメーション)人材の深刻な不足です。2030年には日本国内で約40万〜80万人のIT人材が不足すると予想されており、金融機関も例外ではありません。

フィンテック企業との競争、オンラインバンキングの高度化、AIを活用した与信判断やリスク管理の導入など、金融業界のデジタル化は急速に進んでいます。これらを支えるエンジニアの確保が経営上の最重要課題の一つとなっています。

高専教育の強み

高専は5年間(本科)の一貫教育で、実践的な技術者を育成する教育機関です。大学とは異なる高専教育の強みが、金融業界のニーズと合致しています。

まず、15歳からの専門教育により、20歳の時点で大学3年生相当の専門知識と実践力を備えています。プログラミング、データベース、ネットワークといった基礎技術に加え、AIやIoT、データサイエンスなどの先端分野にも踏み込んだカリキュラムが組まれています。

さらに、卒業研究やインターンシップを通じた実務経験が豊富で、即戦力として期待できる点も企業にとって魅力です。

充足率の低下が示す争奪戦

高専生の人材市場は「売り手市場」が加速しています。2025年春入社の高専生の内定充足率は74.1%にとどまり、前年比で5.2ポイント低下しました。企業が採用したい人数に対して、供給が追いついていないのです。

これまで高専生の主な就職先は製造業やIT企業でしたが、金融業界の参入により、争奪戦はさらに激しくなることが予想されます。

高専生の金融業界での活躍の可能性

システム開発からビジネス創造へ

金融機関における高専生の活躍の場は、従来のシステム保守にとどまりません。フィンテック領域でのアプリ開発、ブロックチェーン技術の活用、データ分析に基づく新商品開発など、技術とビジネスの融合領域での貢献が期待されています。

SMBC日興証券の1期生がアプリ開発に携わっていることからも分かるように、入社直後から実践的な開発業務に従事できる環境が整いつつあります。

キャリアパスの多様化

高専卒業後に金融業界に就職するというキャリアパスが確立されれば、高専生の進路選択肢は大きく広がります。従来は大学編入を経てから金融業界を目指すケースが一般的でしたが、本科卒業後に直接入社できる道が開かれたことで、2年早くキャリアをスタートできるメリットがあります。

注意点・展望

処遇の継続性に注目

現時点では「大卒と同等の初任給」が注目を集めていますが、重要なのは入社後のキャリアパスや昇進機会が実際に平等であるかどうかです。初任給だけでなく、昇格スピードや管理職への登用において学歴による差が生じないかどうか、今後の実績を見守る必要があります。

他業界への波及効果

金融業界の動きは、他の業界にも影響を与える可能性があります。すでに高専生の獲得競争は激化していますが、「大卒同等の処遇」という待遇面での競争がさらに広がれば、高専教育の社会的評価が一段と高まることになるでしょう。

一方で、高専生の供給は限られているため、企業間の争奪戦が過熱すれば高専生の初任給がさらに上昇し、大卒との逆転現象が起きる可能性もあります。

まとめ

金融業界による高専生の採用は、DX人材不足という構造的課題に対する具体的な回答と言えます。SMBC日興証券が先陣を切り、三菱UFJ銀行が追随する流れは、今後さらに加速する可能性があります。

高専生にとっては、新たなキャリアの選択肢が広がる好機です。金融業界にとっては、即戦力のデジタル人材を確保する重要な採用チャネルとなります。学歴ではなく実力で評価される時代の到来を象徴するこの動きが、日本の人材市場全体にどのような変化をもたらすのか注目されます。

参考資料:

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