自民・維新の衆院選公約、構造改革は後回し傾向に
はじめに
2026年の衆院選に向けて、自民党と連立を組む日本維新の会がそれぞれ公約を発表しました。しかし、その内容は日本経済の成長につながる構造改革の取り組みが乏しいと指摘されています。
特に注目されるのは、コメの増産政策やライドシェアの全面解禁といった、企業の新規参入を促進する改革が後回しにされている点です。物価高対策として消費税減税が前面に打ち出される一方で、成長に向けた規制緩和や競争促進の視点が欠けているとの批判があります。
本記事では、自民党と維新の公約内容を検証し、構造改革が進まない背景と課題について解説します。
コメ政策:増産方針からの後退
石破政権のコメ増産路線は転換
2025年、石破政権下で打ち出されたコメ増産方針は、高市政権への移行に伴い大きく軌道修正されました。2025年参院選では増産方針が掲げられていましたが、今回の自民党公約ではその方針に触れられていません。
農林水産省は2026年産のコメ生産量について、2025年産から5%少ない711万トンを目安とする方向で検討しています。2025年産の収穫量見込み748万トンからの大幅な減産であり、「需要に応じた生産」という従来路線への回帰といえます。
「需要に応じた生産」の法制化
2025年12月、鈴木農林水産大臣は食糧法改正案に「需要に応じた生産」を位置づけることを発表しました。これは各産地や生産者が需給動向を踏まえて作付けを判断するという考え方です。
しかし批判的な見方もあります。実態として、補助金を交付して生産を制限させる減反政策の法定化であるという指摘です。1971年から続いた減反政策は2018年に廃止されましたが、補助金による転作誘導は継続しており、コメの収穫量は下落基調のままでした。
新規参入の障壁
コメ政策において重要なのは、農業への新規参入を促進し、生産効率を高める視点です。日本維新の会は「担い手や法人への農地の集積・集約・大区画化を進め、生産コストの大幅削減を目指す」と主張していますが、具体的な規制緩和策は明確になっていません。
農地取得の規制や農業参入に関する障壁が残る限り、効率的な大規模農業への移行は進みにくい状況です。
ライドシェア:全面解禁は見送り
日本版ライドシェアの限定的解禁
2024年4月から「自家用車活用事業(日本版ライドシェア)」が限定的に解禁されました。一般ドライバーが自家用車で有償運送を行える制度ですが、運行管理はタクシー会社に限定されており、米国のUberやLyftのような完全なライドシェアとは異なります。
2025年11月末時点で、全国の大都市部12地域における事業者数は418社、登録ドライバー数は約9,700人、運行回数は約104万回に達しています。しかし、その9割は大都市部に集中しており、地方の交通課題解決には至っていません。
全面解禁への道のり
2024年5月、政府の規制改革推進会議はライドシェア全面解禁の法整備について、2025年通常国会への法案提出も視野に入れるべきだと提起しました。しかし、自民党内の一部や公明党の慎重姿勢により、全面解禁の時期は明示されませんでした。
日本維新の会は2025年4月、ライドシェア全面解禁法案を衆院に提出。タクシー会社以外の事業者参入を可能とし、需給に応じた運賃変動(ダイナミックプライシング)の導入も盛り込んでいます。
高市政権下での停滞
高市政権発足後、ライドシェア議論は進展していないとされています。推進派だった河野太郎氏や小泉進次郎氏の発言力が低下し、日本版ライドシェアを維持する方向で話が進む可能性が高いとみられています。
タクシー業界の既得権益が壁となり、利用者利便性の向上や地方の交通課題解決よりも、現状維持が優先されている状況です。
消費税減税と成長戦略のバランス
消費税減税の公約化
日本維新の会の藤田文武共同代表は、次期衆院選の公約に食料品の消費税率ゼロを盛り込む考えを示しました。「2年間に期間を限定したゼロは我が党がずっと言ってきた」と述べ、物価高で傷んだ家計への対策として位置づけています。
短期的な家計支援策として一定の効果は期待できますが、消費税減税は社会保障財源の確保という観点から課題も指摘されています。
成長戦略の重要性
経済同友会は2026年年頭見解で、規制改革・緩和の推進により投資環境の魅力を高めていくことの重要性を強調しています。半導体、AI、エネルギー分野を特に重視し、企業や産業の新陳代謝を活性化することが日本の産業競争力引き上げに不可欠としています。
政府も「日本成長戦略会議」で重点投資対象17分野を選定し、新たな減税措置で民間投資を後押しする方針を示しています。しかし、規制改革や新規参入促進といった構造改革については、具体的な進展が見えにくい状況です。
構造改革が進まない背景
既得権益との調整
コメ政策における農協(JA)の影響力、ライドシェアにおけるタクシー業界の反発など、構造改革には既得権益との調整が不可避です。選挙を控えた政治状況では、これらの利害関係者との対立を避ける傾向が強まります。
日本維新の会は「既得権に囚われない大胆な規制改革」を掲げていますが、連立与党として政策実現には自民党との調整が必要であり、単独では改革を推進しにくい構造があります。
短期的な物価高対策の優先
足元の物価高により、国民の関心は短期的な生活支援策に向かっています。消費税減税や社会保険料引き下げといった施策は分かりやすく、有権者への訴求力があります。
一方、構造改革は効果が現れるまでに時間がかかり、選挙公約としてのアピール力は弱くなりがちです。結果として、成長につながる改革よりも、目先の負担軽減策が優先される傾向があります。
注意点と今後の展望
選挙後の政策実行に注目
衆院選は2026年6月の通常国会会期末が有力視されています。公約に掲げた内容がどこまで実行に移されるかは、選挙後の政治情勢次第です。
特に、維新が連立与党として実質的な政策決定力を持てるかどうかが、構造改革の進展を左右するポイントとなります。
国際競争力への影響
規制改革の遅れは、日本の国際競争力に直結する問題です。デジタル分野やシェアリングエコノミーで後れを取れば、新たな産業・雇用の創出機会を逃すことになります。
2026年の実質GDP成長率予測は0.6〜0.9%と緩やかであり、より高い成長を実現するには構造改革による生産性向上が不可欠です。
まとめ
自民党と日本維新の会の衆院選公約は、コメ増産やライドシェア全面解禁など、成長につながる構造改革が後回しになっている点で共通しています。消費税減税など短期的な物価高対策が前面に出る一方、規制緩和や新規参入促進といった競争促進の視点は弱いといえます。
既得権益との調整の難しさや、選挙を意識した短期的施策の優先など、構造的な要因がこの状況を生み出しています。選挙後、どこまで本格的な改革に踏み込めるかが、今後の日本経済の成長を左右する重要なポイントとなるでしょう。
参考資料:
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