裏金候補への逆風は和らいだのか?序盤情勢を分析
はじめに
2026年2月8日投開票の衆議院議員総選挙の序盤情勢調査で、注目すべき変化が浮かび上がりました。自民党派閥の裏金事件で政治資金収支報告書に不記載があった候補者37人のうち、約8割が「有力」または「優勢」との評価を得ているのです。
2024年の前回衆院選では、同様の候補者の約6割が落選しました。わずか1年余りで逆風が和らいだように見える背景には何があるのか。有権者の意識変化と各党の戦略から、この現象を読み解きます。
前回選との比較:激変した不記載候補の環境
2024年衆院選での厳しい処遇
2024年10月の衆院選では、自民党派閥パーティーの政治資金不記載問題が選挙を直撃しました。当時の石破茂首相は事態の深刻さを踏まえ、12人の不記載関係候補を公認せず、残りの候補にも比例代表との重複立候補を認めませんでした。
この結果、不記載関係候補46人のうち約6割にあたる28人が落選するという厳しい結果となりました。有権者の「政治とカネ」への怒りは明確で、自民党は議席を大幅に減らし、単独過半数を大きく割り込みました。
2026年衆院選での方針転換
高市早苗首相の下で行われた今回の衆院選では、対応が一変しています。不記載関係候補45人のうち、離党した1人を除く44人を公認しました。さらに、前回は認めなかった比例代表との重複立候補も原則として解禁しています。
党幹部は「みそぎは済んだ」との認識を示しており、高市政権は不記載問題を過去のものとして扱う姿勢を明確にしました。ただし、事件の全容解明は依然として進んでおらず、党内からも世論の批判が再燃するリスクを懸念する声が上がっています。
逆風が和らいだ3つの要因
政権交代効果による「リセット」感
最大の要因は、石破首相から高市首相への政権交代が事実上の「リセット」として機能している点です。高市首相自身は裏金事件と直接的な関係がなく、新しい政策課題(消費税減税、給付付き税額控除など)を前面に打ち出すことで、有権者の関心を「政治とカネ」から経済政策にシフトさせることに成功しています。
選挙ドットコムの分析によると、石破内閣時代はSNS上のネガティブ動画が80%超を占めていましたが、高市政権下ではポジティブな反応が大幅に増加しています。ネット世論の変化が、不記載候補への直接的な逆風の緩和にも寄与していると考えられます。
争点の多様化
今回の衆院選は「政治とカネ」だけでなく、消費税減税、物価高対策、外国人政策など多くの争点が並立しています。有権者の関心が分散した結果、不記載問題が選挙における唯一の判断基準とはなりにくくなっています。
特に食料品の消費税ゼロをめぐる各党の競争が激しくなる中、経済的な関心が「政治とカネ」への怒りを上回る構図が生まれています。
野党の分裂と対立軸の不明確化
前回選では、野党側が「裏金」を最大の攻撃材料として統一的に訴えることができました。しかし今回は、立憲民主党と公明党が中道改革連合として合流するなど、野党の構図が大きく変わっています。
野党各党が自らの政策を売り込む必要に迫られた結果、「裏金」への集中的な批判は前回ほどの迫力を持たなくなっています。野党は引き続き追及の構えを見せていますが、選挙戦全体のトーンとしては物価・経済対策が前面に出ています。
序盤情勢と自民党の全体像
自民単独過半数に迫る勢い
日本経済新聞や読売新聞の序盤情勢調査によると、自民党は単独過半数にあたる233議席に迫る勢いです。選挙前の198議席から大幅に伸ばし、「安定多数」の243議席も射程圏内とされています。連立を組む日本維新の会の議席を合わせれば、「絶対安定多数」の261議席も視野に入ります。
一方、中道改革連合は公示前の167議席から減少する可能性があり、国民民主党はおおむね横ばい、参政党は5倍の10議席程度まで伸びる勢いとの分析が出ています。
高市首相の「退陣ライン」
高市首相は与党で過半数を獲得できなければ「即刻退陣する」と明言しています。序盤の情勢では過半数は確保できる見通しですが、選挙終盤での情勢変動は十分にあり得ます。投票率の変動や無党派層の動向次第で、結果は大きく変わる可能性があります。
注意点・展望
不記載候補への逆風が和らいだとはいえ、政治資金の透明性の問題が解決したわけではありません。事件の全容解明が不十分なまま「みそぎ済み」とする姿勢に対しては、選挙後に改めて批判が強まる可能性があります。
また、序盤情勢はあくまで現時点のスナップショットです。選挙戦終盤に新たな事実が判明したり、テレビ討論で裏金問題が再燃したりすれば、情勢が急変することも考えられます。過去の選挙でも、序盤と最終的な結果が大きく乖離したケースは少なくありません。
有権者にとって重要なのは、各候補者が不記載問題に対してどのような説明責任を果たしているかを個別に確認することです。「逆風が和らいだ」ことと「問題が解決した」ことは全く異なります。
まとめ
2026年衆院選の序盤情勢で、不記載候補の多くが当選圏内にいることは、政権交代効果、争点の多様化、野党構図の変化という複合的な要因によるものです。前回選で6割が落選した状況からの急変は、日本の有権者の関心がいかに流動的であるかを示しています。
「政治とカネ」の問題は本質的には未解決のまま残っています。選挙結果にかかわらず、政治資金の透明性確保に向けた制度改革の議論は今後も続く必要があります。
参考資料:
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