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by nicoxz

自民党内に消費税減税慎重論、2割が現状維持を主張

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はじめに

2026年2月8日の投開票に向けて公示された第51回衆議院議員選挙において、消費税減税が主要な争点として浮上しています。日経新聞の候補者調査によると、自民党候補者の約2割が閣僚を含めて消費税の現状維持を主張していることが明らかになりました。一方、野党各党はほぼ全党が減税を支持しており、与野党間だけでなく自民党内部でも意見が分かれる状況となっています。1,285人の候補者が立候補する今回の選挙で、高市早苗首相が解散を断行した背景には、物価高対策としての消費税減税を巡る政治的判断があったとされます。しかし、社会保障財源に関する質問には8割の候補者が回答を避けており、財源論議の不透明さが課題として残されています。

自民党内の消費税減税慎重論

閣僚を含む2割が現状維持を主張

日経新聞の候補者調査では、自民党の候補者のうち約20%が消費税を現行の税率で維持すべきだと回答しました。この中には現職閣僚も含まれており、党内の温度差が鮮明になっています。政府高官の一人は「やると決まったわけではない」と明言し、党内では既に「実現しない」との見方が広がっていることが報じられています。

自民党は1月21日に発表した公約で、飲食料品を2年限定で消費税の対象外とすることについて「国民会議で財源やスケジュールの検討を加速する」という表現にとどめました。これは党内の慎重論に配慮した結果と見られています。食料品の消費税率をゼロにすると年間5兆円の税収減となることから、財源確保の現実的な困難さが背景にあります。

高市首相の立場変化と党内の戸惑い

高市早苗首相は昨年10月の自民党総裁選の際、「選択肢として捨てるわけではないが、すぐにできることを優先したい」と慎重な姿勢を示していました。総裁選では党内議員の支持を集めるために持論を封印し、レジのシステム改修など実務上の課題を指摘していたのです。

しかし、2026年1月19日の記者会見では一転して、食料品の消費税を2年間ゼロにする考えを「かねてからの個人的な悲願」として表明しました。この急激な方針転換に対して、自民党内からは「そんないいかげんなことを」といった戸惑いの声が上がっています。首相の「レジの壁」という主張がどこに消えたのか、発言を裏返した背景には野党との競争を意識した選挙戦略があると見られています。

実際、首相は1月28日に北海道で遊説を行った際、「危機管理投資」による経済成長や経済安全保障の必要性を訴えたものの、消費税減税には触れませんでした。この沈黙は、党内の反発と財源論の困難さを反映したものと分析されています。

各党の消費税政策と財源論争

野党はほぼ全党が減税を支持

今回の衆院選では、野党各党がほぼ全党で消費税の減税や廃止を公約に掲げています。中道改革連合(立憲民主党と公明党)は食品消費税ゼロの恒久化を今秋に実施すると訴えており、自民党の2年限定案よりも踏み込んだ内容となっています。

国民民主党は賃上げが定着するまで消費税を一律5%にすることを主張しています。さらに、れいわ新選組は直ちに廃止、参政党は段階的廃止、共産党は廃止を目指して5%への減税を掲げるなど、各党が競うように減税策を打ち出しています。

連立政権を組む日本維新の会も自民党と足並みをそろえ、食料品について「2年間ゼロ」を主張しています。公示前の党首討論会では多くの党が消費税の減税や廃止を訴え、消費税政策が選挙戦の主要な争点となっています。

財源確保の議論は不透明

最大の課題は財源の確保です。食料品の消費税8%をゼロにすると、年間約5兆円の税収減となります。これは日本の年間教育支出にほぼ相当する規模です。高市首相は「特例公債に頼ることなく、補助金や租税特別措置、税外収入などの歳出・歳入全般の見直しが考えられる」と述べるにとどめており、具体的な財源案は示されていません。

社会保障財源に関する候補者調査では、実に80%の候補者が回答を避けました。これは財源論議の難しさと、政治的に答えにくい問題であることを示しています。日本は急速な高齢化に伴い社会保障給付費が増加しており、2025年5月には加藤財務相が「全世代型社会保障制度を支える重要な財源」として消費税の税率引き下げは「適当でない」と述べていました。

市場では放漫財政への警戒感が広がっており、消費税減税の見通しが強まったことで、10年物日本国債の利回りが27年ぶりの高水準となる2.275%まで上昇しました。国際的な信用格付け機関や投資家も、日本の財政懸念を高めています。

注意点・展望

今回の消費税減税論争は、選挙向けの人気取り政策との批判も根強くあります。経済専門家の試算では、食料品の消費税2年間ゼロによるGDP押し上げ効果はわずか0.22%程度で、5兆円の税収減に見合う効果があるのか疑問視されています。

また、2年間の時限措置として始めた場合、期限後に再び課税することが政治的に可能なのかという問題もあります。一度ゼロにした税率を再び引き上げることは極めて困難であり、実質的に恒久措置になる可能性も指摘されています。

自民党内の慎重論は、こうした長期的な財政リスクを懸念したものと言えます。閣僚クラスが現状維持を主張する背景には、財政規律の維持と社会保障制度の持続可能性を重視する姿勢があります。一方で、物価高に苦しむ国民の生活支援という喫緊の課題も無視できません。

まとめ

2026年衆院選における消費税減税論争は、自民党内の2割が現状維持を主張する一方、野党各党がほぼ全党で減税を支持するという構図となっています。高市首相の方針転換は選挙戦略としての側面が強く、党内には根強い慎重論が存在します。年間5兆円の税収減をどう補うかという財源論は候補者の8割が回答を避けており、実現性には大きな疑問符がついています。投開票日まで残りわずかとなった中、有権者は各党の公約だけでなく、その実現可能性と長期的な財政への影響を見極める必要があります。物価高対策と財政規律のバランスをどう取るか、日本の将来を左右する重要な選択が迫られています。

参考資料

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