信用買い残の手じまい売り拡大、主力株に下落圧力
はじめに
2026年1月28日の東京株式市場では、日経平均株価が続伸するなか、一部の主力銘柄で逆行安が目立ちました。第一三共が前日比4%安、ソニーグループ(ソニーG)が2%安で9日続落となるなど、信用取引の買い残が膨らんだ銘柄に集中的な売り圧力がかかっています。
信用買い残の整理は、個別銘柄の値動きを大きく左右する要因です。本記事では、信用取引のメカニズムから、なぜ買い残の増加が株価下落につながるのか、投資家が注目すべきポイントを解説します。
信用買い残と株価下落のメカニズム
信用取引の基本構造
信用取引とは、投資家が証券会社からお金や株を借りて売買する仕組みです。「信用買い」は証券会社から資金を借りて株を購入するもので、制度信用取引では原則6カ月以内に決済(売却して返済)しなければなりません。
「信用買い残」とは、信用買いされたまま未決済の株数を指します。これは将来必ず売却される株数を意味するため、買い残が多いほど潜在的な売り圧力が大きくなります。
信用倍率が示す需給バランス
信用倍率は「買い残÷売り残」で計算されます。この数値が高いほど、買い方が売り方に対して優勢であり、将来の売り圧力が大きいことを意味します。
1月23日時点の信用倍率は、第一三共が95倍、ソニーGが19倍と、いずれも極めて高い水準にあります。一般的に信用倍率が5倍を超えると将来の売り圧力が強いとされ、数十倍を超える場合は買い残の解消に伴う急落リスクが意識されます。
買い残増加がもたらす3つの売り圧力
信用買い残が過度に膨らんだ銘柄には、主に3つの売り圧力が働きます。
第一に、返済期限による強制的な売りです。制度信用取引には6カ月の期限があるため、含み損を抱えたまま期限を迎えた投資家は損失覚悟で売却せざるを得ません。
第二に、追証(追加保証金)による投げ売りです。株価が下落して担保価値が低下すると、追加の保証金を求められます。資金が用意できない場合は強制決済となり、さらなる株価下落を招く悪循環が生じます。
第三に、戻り売り圧力です。含み損を抱えた投資家が多い場合、株価が少し反発しただけでも「やれやれ売り」が出やすくなり、株価の上昇を阻害します。
ソニーGと第一三共に何が起きているのか
ソニーGの9日続落
ソニーGは1月28日に2%安となり、9営業日連続の下落を記録しました。2025年後半から信用買い残が増加傾向にあり、2025年10月時点では信用買い残増加ランキングのトップに位置していました。
その後、2026年1月にかけて買い残は大幅に減少しており、これは投資家がポジションを解消する「手じまい売り」が進んでいることを示しています。1月9日時点の買い残減少幅は前週比で約1115万株と、東証プライム市場で最大の減少幅を記録しました。
第一三共の急落
第一三共は信用倍率95倍という極端な数値が示すとおり、売り残がほぼない状態で買い残だけが一方的に積み上がっていました。このような状態では株価上昇への期待が過剰に織り込まれており、何らかのきっかけで買い残の解消が始まると下落が加速しやすくなります。
製薬大手の業績自体に大きな問題があるわけではありませんが、需給面での脆弱性が株価の重荷となっている状況です。
注意点・展望
個人投資家が陥りやすいナンピン買いの罠
信用買い残が増加する典型的なパターンとして、株価下落局面での「ナンピン買い」があります。株価が下がるたびに平均取得コストを下げようと追加で信用買いを行う手法ですが、これが買い残をさらに膨らませ、将来の売り圧力を一段と高めるという悪循環に陥ることがあります。
信用買い残が増加し続ける銘柄では、買い残の整理が十分に進むか、信用売り残が大きく増加して需給バランスが改善するまで、本格的な株価上昇は見込みにくいとされています。
投資判断のポイント
信用倍率だけでなく、日々の出来高との比較も重要です。買い残が出来高の10倍を超えるような銘柄では、買い残の解消に長い時間がかかり、株価への下押し圧力が長期化する傾向があります。逆に、信用倍率が1倍以下の銘柄は「好取組銘柄」と呼ばれ、売り方の買い戻しによる株価上昇が期待されることもあります。
まとめ
ソニーGや第一三共など主力銘柄で広がる信用買い残の手じまい売りは、日経平均が上昇するなかでの個別銘柄の逆行安という形で表面化しています。信用倍率が極端に高い銘柄では、買い残の解消売りが株価を押し下げるメカニズムが働いています。
投資家は、銘柄選定の際に信用倍率や買い残の推移、出来高との比較を確認することが重要です。需給面で過熱感のある銘柄への新規投資は、買い残の整理が進んでからでも遅くはありません。
参考資料:
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