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by nicoxz

マイクロソフト株急落、AI巨額投資の回収に市場が不安

by nicoxz
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はじめに

2026年1月29日、マイクロソフト(MSFT)の株価が前日比約10%の急落を記録しました。1日の下落率としては、2020年3月の新型コロナショック以来の大きさです。時価総額にして約3,600億ドル(約55兆円)が1日で消失した計算になります。

きっかけは、前日28日に発表された2025年10〜12月期(第2四半期)の決算です。売上高・利益ともに市場予想を上回る好決算だったにもかかわらず、AI関連の巨額設備投資とクラウド事業の成長鈍化が嫌気されました。この記事では、マイクロソフト株急落の背景と、AI投資をめぐる市場の懸念について詳しく解説します。

好決算でも売られた理由

数字は予想超え、しかし市場は反応せず

マイクロソフトの2025年10〜12月期の売上高は前年同期比16.7%増の812億7,300万ドルでした。調整後の1株当たり利益(EPS)は4.14ドルとなり、アナリスト予想の売上高802億7,000万ドル、EPS 3.97ドルをいずれも上回っています。

クラウド事業の売上高は初めて500億ドルの大台を突破しました。通常であれば株価上昇の材料となる決算内容です。しかし、投資家の目は別の数字に向いていました。

設備投資375億ドルの衝撃

市場が最も注目したのは、設備投資額です。10〜12月期の設備投資は375億ドル(約5兆7,600億円)に達しました。前年同期比で66%の増加であり、アナリスト予想の362億ドルも大きく上回っています。

このペースが続けば、2026会計年度(2025年7月〜2026年6月)の設備投資総額は約1,400億ドルに迫ります。AIインフラの構築に向けた巨額投資が、いつ収益として回収できるのかという疑問が投資家の間で広がっています。

Azure成長率の減速

もう一つの懸念材料が、主力クラウドサービス「Azure」の成長鈍化です。Azure の売上高成長率は39%となり、前四半期の40%からわずかに減速しました。

CFO(最高財務責任者)のエイミー・フッド氏は、新しいGPUチップの全てをAzureに振り向けていれば40%成長を達成できたと説明しています。一部の計算資源を社内製品「Copilot」などに配分したためだとしていますが、この説明は投資家の不安を完全に解消するには至りませんでした。

AI投資の「回収リスク」が焦点に

需要は旺盛だが、利益への転換が課題

マイクロソフトのクラウドサービスの受注残高(コマーシャル・リメイニング・パフォーマンス・オブリゲーション)は6,250億ドルに達しています。2025年9月末時点の3,920億ドルから約60%増加しており、AI関連の需要が急拡大していることは明らかです。

しかし、受注残が積み上がっても、それが利益として実現するまでには時間がかかります。巨額の設備投資が先行する一方で、利益率への圧力が高まっている点を投資家は懸念しています。実際に、1〜3月期の営業利益率見通しは約45.1%と、市場予想の45.5%を下回りました。

OpenAIへの依存リスク

受注残6,250億ドルのうち、約45%にあたる約2,500億ドルがOpenAIとの契約です。OpenAIはマイクロソフトにとって最大の顧客であると同時に、最大のリスク要因でもあります。

OpenAIは急速に事業を拡大していますが、莫大な運営コストを賄うための資金調達に課題を抱えています。また、GoogleのAIモデル「Gemini」との競争も激化しています。マイクロソフトの業績がOpenAI1社に大きく依存している構造は、投資家にとって不安材料です。

MetaとのAI投資対照

同じタイミングで決算を発表したMeta(メタ)は、AI投資の成果をより明確に示すことができました。Metaの株価は決算発表後に上昇しており、AI投資に対する市場の評価はまちまちです。

投資家が求めているのは、巨額投資そのものではなく、投資が具体的な収益に結びつく道筋の明確さです。マイクロソフトは「需要が供給を上回っている」と繰り返し説明していますが、それだけでは市場を説得しきれない状況になっています。

注意点・展望

ウォール街の見方は依然強気

株価急落にもかかわらず、ウォール街のアナリストの多くは引き続き「買い」推奨を維持しています。64人のアナリストによるコンセンサス目標株価は623ドルで、急落後の株価から約29%の上昇余地があるとされています。62人が「買い」、2人が「中立」で、「売り」推奨はゼロです。

モルガン・スタンレーのキース・ウェイス氏は「設備投資が予想以上に伸びている一方で、Azureの成長が予想をやや下回っている」と指摘しつつも、長期的な成長ストーリーは健在だとしています。

今後の焦点

1〜3月期の売上高見通しは806.5億〜817.5億ドルで、中間値の812億ドルは前年同期比15.9%増の水準です。10〜12月期の16.7%増からさらに減速する可能性があり、成長鈍化のトレンドが続くかどうかが今後の焦点となります。

また、AIインフラへの投資が実際にAzureの成長加速に結びつくかどうかも注目されます。計算資源の供給制約が解消されれば、成長率は再加速する可能性があります。

まとめ

マイクロソフトの株価急落は、AI投資の「期待」から「回収」のフェーズへと市場の関心が移りつつあることを象徴しています。売上・利益ともに予想を上回る好決算でありながら、設備投資375億ドルという巨額のコストと、Azure成長率の減速が投資家心理を冷やしました。

受注残6,250億ドルが示す通り、AI需要そのものは旺盛です。問題は、その需要をいかに効率的に収益化できるかという点にあります。AI時代のインフラ投資競争において、マイクロソフトが先行投資の果実を刈り取れるかどうか。今後の四半期決算が、その答えを示すことになるでしょう。

参考資料:

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