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by nicoxz

ミネアポリス緊迫、ICE射殺事件で抗議拡大と反乱法発動の危機

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はじめに

2026年1月、米国ミネソタ州ミネアポリスが再び全米の注目を集めています。連邦移民・関税執行局(ICE)職員による米国人女性射殺事件をきっかけに、大規模な抗議デモが発生。トランプ大統領は軍隊を国内に派遣できる「反乱法」の発動を警告し、州政府との対立が深刻化しています。

ミネアポリスといえば、2020年にジョージ・フロイド氏の死亡事件で世界的な抗議運動が起きた場所です。今回の事態は、移民政策をめぐる連邦政府と州・地方政府の対立、そして分断するアメリカ社会の縮図となっています。この記事では、事件の経緯と背景、そして今後の展望について詳しく解説します。

事件の経緯

1月7日の射殺事件

2026年1月7日、ミネアポリス郊外で不法移民の摘発作戦を実施していたICE職員が発砲し、37歳の米国人女性レニー・ニコル・グッドさんが死亡しました。グッドさんは受賞歴のある詩人で、ICEの活動を監視する「リーガルオブザーバー」(合法的な監視者)として現場にいたとされています。

国土安全保障省は、ICE職員の行動について正当防衛だったと主張しています。しかし、詳細な状況は不明な点が多く、市民の間に強い疑念と怒りが広がりました。

全米への抗議拡大

事件を受けて、ミネアポリスでは即座に抗議デモが始まりました。1月10日には地元住民ら数万人が参加する大規模デモが実施され、「ICEは出て行け」というスローガンが叫ばれました。

抗議活動は東部のニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴなど全米各地に波及。「ICE、永久に出て行け」をスローガンに、1,000件を超えるイベントが計画されました。

2度目の発砲事件

1月14日、ミネアポリスで再び連邦職員による発砲事件が発生しました。国土安全保障省によると、シャベルとほうきの柄を持ったベネズエラ国籍の3人がICE職員を襲撃したため、職員が発砲したと説明しています。この事件では負傷者が出ましたが、死者はいませんでした。

しかし、相次ぐ発砲事件は市民の不信感をさらに高め、抗議活動の激化につながりました。

トランプ政権の強硬姿勢

反乱法発動の警告

トランプ大統領は1月15日、SNSで反乱法発動の可能性を警告しました。「ミネソタ州の腐敗した政治家たちが法に従わず、プロの扇動者や反乱者たちが職務を遂行しようとしているだけのICEの愛国者を攻撃するのをやめないようであれば、反乱法を発動する」と投稿しています。

反乱法は1807年に成立した法律で、特定の状況下で大統領が議会の承認なしに米国内に軍隊を派遣することを認めています。21世紀に入ってからは一度も発動されておらず、発動されれば歴史的な出来事となります。

1,500人の軍隊が待機

国防総省は、アラスカ州に駐屯する約1,500人の現役陸軍兵士に対し、ミネソタ州への派遣準備を命じました。これは反乱法発動に備えた措置とみられています。

ブレナンセンターの弁護士ジョセフ・ナン氏は「もし今トランプが反乱法を発動すれば、それは反乱法の明白な乱用であり、国の歴史上前例のないことだ」と警告しています。現代における反乱法の使用は、すべて州知事の要請を受けて、または公民権保護の拡大のために行われてきたからです。

州知事・市長への捜査

司法省は1月16日、ミネソタ州のティム・ウォルズ知事とミネアポリスのジェイコブ・フレイ市長について、連邦移民当局の業務を妨害した疑いで捜査を開始しました。

ウォルズ知事がICEを「現代のゲシュタポ」と表現したことが問題視されています。司法省副長官のトッド・ブランチ氏は、両氏の発言を「テロリズム」と非難しました。

これに対しウォルズ知事は「司法制度の武器化と政治的敵対者への脅迫は、危険な権威主義的戦術だ」と反論。フレイ市長も「明らかな威圧の試みだ」と批判しています。

ICEとは何か

組織の概要

ICE(U.S. Immigration and Customs Enforcement)は、2001年の同時多発テロを受けて2003年に設立された連邦捜査機関です。国際犯罪やテロリストの捜査、移民法の執行を担っています。

ICEには令状なしで逮捕する権限があり、対象者が重大な危険をもたらすと判断された場合は致死的な武力の行使も認められています。

トランプ政権下での活動拡大

第2次トランプ政権発足後、ICEの移民取り締まりは大幅に強化されました。ニューヨーク、シカゴ、マイアミなどの主要都市で取り締まりが強化され、ミネアポリス周辺には約3,000人の連邦捜査官が投入されています。

ICE長官のトッド・M・ライアンズ氏によると、ミネソタ州での作戦開始以来、2,500人を逮捕したと発表しています。トランプ大統領就任から100日間では、6万5,000人以上の外国人を強制送還したとされています。

犯罪歴のない人々の拘束

注目すべきは、拘束された人々の多くが犯罪歴を持たないことです。NBCテレビの報道によると、拘束者の約48%は犯罪歴がないか、非暴力的な軽微な前科のみでした。

これまでの方針を覆し、学校、病院、礼拝所での捜索もICEに許可されたことが、市民の反発を強める一因となっています。

ミネアポリスの歴史的背景

2020年ジョージ・フロイド事件

ミネアポリスは2020年5月、ジョージ・フロイド氏の死亡事件で世界的な注目を集めました。白人警察官が黒人男性のフロイド氏の首を膝で8分46秒間押さえつけ、死亡させた事件です。

「息ができない」と訴えながら亡くなったフロイド氏の映像は世界中に拡散し、全米50州、さらにはヨーロッパ、アフリカ、アジアにまで抗議デモが広がりました。「Black Lives Matter」運動が世界的なムーブメントとなったきっかけです。

根深い人種問題

ミネアポリス市警察には、根深い人種差別の問題が指摘されています。2010年から2022年にかけて、逮捕や拘束時の実力行使で14人が死亡し、そのうち93%にあたる13人が有色人種と先住民でした。市人口における有色人種の割合は42%にすぎません。

今回のICE射殺事件も、こうした歴史的文脈の中で理解する必要があります。連邦政府による強権的な取り締まりへの反発は、地域社会に蓄積された不信感と結びついています。

世論の反応

取り締まりへの批判的な世論

複数の世論調査によると、ICEの取り締まり方法に対する批判的な見方が広がっています。

CBS News・YouGov の調査(1月14〜16日実施、成人2,523人対象)では、61%がICEの取り締まりは「厳しすぎる」と回答しました。クイニピアック大学の調査(登録有権者1,133人対象)では、57%がICEの移民法執行方法を不支持としています。

分断する意見

一方で、不法移民の取り締まり強化を支持する声も根強くあります。トランプ支持層の多くは、ICE職員を「愛国者」とみなし、抗議活動を「法の支配への挑戦」と捉えています。移民問題は、アメリカ社会の深い分断を象徴する争点となっています。

今後の展望と注意点

反乱法発動の可能性

トランプ大統領は反乱法発動を警告した翌日、「今は必要だとは思わない」と発言し、即座の発動は見送りました。「必要なら使う」とも述べており、今後の状況次第では発動される可能性は残されています。

もし発動されれば、州知事の意向に反して連邦軍が抗議活動を鎮圧するという、前例のない事態となります。

法的闘争の行方

州知事と市長への捜査、そして彼らによる連邦政府への対抗措置は、法廷闘争に発展する可能性があります。連邦政府の権限と州の権限のバランスをめぐる憲法上の議論にも発展しうる重大な問題です。

移民政策の行方

トランプ政権の移民政策は、今後も激しい議論を呼ぶことが予想されます。強制送還の拡大は継続される見込みですが、今回のような事件が続けば、政策の見直しを求める圧力も高まるでしょう。

まとめ

ミネアポリスで発生したICE射殺事件は、トランプ政権の移民政策がもたらす社会的緊張を如実に示しています。反乱法発動の警告、州政府との対立、全米規模の抗議デモという事態は、移民問題がアメリカ社会の根幹を揺るがす争点であることを改めて浮き彫りにしました。

2020年のジョージ・フロイド事件で世界的な抗議運動の発火点となったミネアポリスが、再び緊張の中心となっています。連邦政府と州・地方政府の対立、市民の権利と国境管理のバランス、そしてアメリカ社会の分断という複合的な問題が絡み合う中、今後の展開を注視する必要があります。

参考資料:

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