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by nicoxz

OpenAIアルトマン氏がICE批判、巨大テックは沈黙

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はじめに

2026年1月、米ミネソタ州ミネアポリスで移民・税関捜査局(ICE)の職員が市民2人を射殺する事件が発生しました。この事件を巡り、米テクノロジー業界の対応が大きく割れています。

OpenAIのサム・アルトマンCEOやAnthropicのダリオ・アモデイCEOは批判の声を上げましたが、Meta、Google、Apple、Amazonといった巨大テック企業のトップは沈黙を続けています。

本記事では、ミネアポリスで何が起きたのか、テック業界がなぜ分裂しているのか、そしてこの問題が示す米国社会の深刻な対立について解説します。

ミネアポリスで起きた2つの射殺事件

1件目:レネー・グッド氏の死(1月7日)

1月7日、ミネアポリスの住宅街で37歳の女性レネー・グッド氏がICE職員に射殺されました。ICEは当時、同州で2,000人以上の連邦要員を投入した大規模な移民取り締まり作戦を展開していました。

ICEは、グッド氏が車両を使って職員に危害を加えようとしたため、自己防衛として発砲したと主張しています。しかし、現場の映像では、ICE職員がグッド氏の車両前に立ちはだかり、車両が離れようとした際に至近距離から複数発の銃撃を行った様子が映っていました。

ミネアポリス市長やミネソタ州知事は、被害者が即時の危険を与えていないとの見解を示し、射撃は不当であった可能性があると批判しました。

2件目:アレックス・プレッティ氏の死(1月24日)

1月24日、さらに衝撃的な事件が起きました。37歳のICU看護師アレックス・プレッティ氏が、ICE職員の抗議デモ中に射殺されたのです。プレッティ氏は米国市民でした。

国土安全保障省(DHS)は、プレッティ氏が拳銃を持って捜査官に「近づき」、武装解除に「激しく抵抗した」と主張しました。しかし、CNNの映像分析では、銃撃の前に連邦捜査官がプレッティ氏から銃を取り上げているように見えると報じています。

この2件の事件を受け、全米で大規模な抗議デモが発生しました。1月10日にはミネアポリスで数万人が「ICEは出て行け」と叫び、全米1,000か所以上でデモが行われました。

テック業界の二極化した対応

声を上げたアルトマン氏とアモデイ氏

OpenAIのサム・アルトマンCEOは、全社員向けのSlackメッセージで「ICEの現状は行き過ぎだ」と批判しました。

「暴力的な犯罪者の国外退去と、今起きていることには大きな違いがある。この区別を正しく認識する必要がある」とアルトマン氏は述べています。

同時にアルトマン氏は「私は米国とその民主主義・自由の価値観を愛している。国を愛するということには、政府の行き過ぎに対して異を唱えるというアメリカの義務も含まれる」と説明しました。

Anthropicのダリオ・アモデイCEOもX(旧Twitter)で「ミネソタで起きている恐怖」に言及し、NBCニュースでは「私たちは国内でも民主主義の価値観を守る必要がある」と発言しました。アモデイ氏はまた、AnthropicがICEとの契約を一切持っていないことも明らかにしました。

沈黙する巨大テック企業

一方、Amazon、Apple、Google、Metaの各CEOは公式な声明を出していません。特に注目すべきは、これらの企業のトップがトランプ大統領の就任式に出席し、就任基金に個人または企業として寄付を行っていることです。

Appleのティム・クック氏は特に批判を浴びています。プレッティ氏が射殺された夜、クック氏はホワイトハウスでメラニア・トランプ氏に関する映画の上映会に出席していたことが報じられました。

従業員からの圧力

Google、Meta、OpenAI、Amazon、Salesforceなどの企業から450人以上のテック従業員が公開書簡に署名し、CEOに対して3つの要求を突きつけました。

  1. ホワイトハウスに電話してICEが米国の都市から撤退するよう要求すること
  2. ICEとの全ての企業契約を解除すること
  3. ICEの暴力に対して公に声明を出すこと

Google内部では、AI部門の長であるジェフ・ディーン氏が「政治的立場に関係なく、すべての人がこれを非難すべきだ」と発言し、射撃映像を共有しました。

巨大テックとトランプ政権の関係

政府との契約

巨大テック企業の沈黙の背景には、連邦政府との巨額の契約があります。

Palantirは3,000万ドルのAI監視契約を保有しています。Clearview AIは顔認識技術を提供し、Amazon Web Services、Microsoft、Oracleはクラウドインフラとサービスを提供しています。

これらの企業にとって、トランプ政権を公然と批判することは、政府契約を失うリスクを意味します。

プラットフォームの対応

Metaは司法省の要請に応じ、ICEの目撃情報を共有していたFacebookグループを削除しました。このグループには削除時点で約8万人のメンバーがいたと報じられています。

Appleも、ICE活動の証拠映像を収集するアプリ「Eyes Up」をApp Storeから削除するなど、取り締まり強化に協力する姿勢を見せています。

注意点・今後の展望

政治的分断の深刻化

この問題は、テック業界内部の政治的分断を浮き彫りにしています。トランプ政権との関係を重視する企業と、民主主義的価値観を優先する企業・従業員との間で緊張が高まっています。

元MetaのチーフAI科学者ヤン・ルカン氏は射殺映像を共有しながら「M U R D E R E R S」と投稿しました。ルカン氏は昨年末にMetaを退社し、独自の会社を設立しています。

テック企業の影響力

過去には、テックリーダーがトランプ大統領の政策に影響を与えた例もあります。10月にトランプ大統領がサンフランシスコに州兵を派遣すると脅した際、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOやSalesforceのマーク・ベニオフCEOらの電話を受けて、大統領は撤回しました。

今回のICE問題でも、テック業界が一致団結して声を上げれば、政策に影響を与える可能性があります。しかし、現状では業界の足並みは揃っていません。

まとめ

ミネアポリスでの2件の射殺事件は、単なる法執行機関の暴力問題にとどまらず、米国テック業界と連邦政府の関係、そして企業の社会的責任という大きな問題を提起しています。

OpenAIやAnthropicのCEOが批判の声を上げる一方で、政府契約を持つ巨大テック企業は沈黙を保っています。450人以上の従業員が声を上げていることは、業界内部の変化の兆しかもしれません。

今後、米国社会の分断が深まる中で、テック企業がどのような立場を取るのか注目が集まります。

参考資料:

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