退職代行モームリ違法あっせん発覚、労組悪用の全容
はじめに
退職代行サービス「モームリ」をめぐる警視庁の捜査で、労働組合を利用した違法な報酬スキームの実態が明らかになりつつあります。運営会社「アルバトロス」の社長・谷本慎二容疑者らは2026年2月に弁護士法違反(非弁提携)の疑いで逮捕されました。
累計利用者4万人超を誇り、メディアにも頻繁に登場していた「モームリ」の逮捕劇は、急成長を遂げた退職代行業界全体に波紋を広げています。本記事では、事件の全容と弁護士法違反の仕組み、そして退職代行サービスを利用する際の注意点について解説します。
事件の経緯と逮捕の背景
家宅捜索から逮捕まで
事件は2025年10月、警視庁保安課がアルバトロス本社(当時は東京・品川区)や谷本容疑者の自宅、さらに関連する弁護士事務所など複数の関係先を家宅捜索したことで本格化しました。押収資料の分析や関係者への事情聴取を経て、2026年2月3日、谷本慎二容疑者(37)と妻の志織容疑者が弁護士法違反の疑いで逮捕されました。
谷本容疑者は2022年にモームリの事業を開始。依頼者に代わって勤務先の担当者に退職の意思を伝え、有給休暇の日数確認や必要書類の手配など退職手続きを代行するサービスを提供していました。
違法あっせんのスキーム
捜査で浮上した違法スキームは次の通りです。モームリは退職代行の依頼を受けた際、未払い残業代の請求や退職条件の交渉など、弁護士資格が必要な業務が発生するケースで依頼者を弁護士事務所に紹介していました。その紹介に対して弁護士事務所から1人当たり16,500円の報酬を受け取っていた疑いがあります。
弁護士法72条は、弁護士以外の者が報酬を得る目的で法律事務のあっせんを行うことを明確に禁止しています。違反した場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
労働組合を「隠れみの」にした手口
賛助金への偽装
事件の核心は、違法な紹介料の受け取りを巧妙に偽装していた点です。弁護士事務所からの報酬は、表向きは「ウェブ広告の業務委託費」や「労働組合への賛助金」という名目で振り込まれていました。
モームリは労働組合と提携し、「団体交渉権」を背景にした交渉を行うことをサービスの特徴として打ち出していました。しかし捜査の結果、この労働組合には実質的な活動実態がないことが判明。組合の代表者は警視庁の事情聴取に対し、「モームリを運営するための仕組みだった」と説明しています。
非弁行為と労組の関係
労働組合には労働組合法に基づく団体交渉権があり、組合員の退職に関する交渉を行うことは法的に認められています。この点を利用して、退職代行業者が労働組合と提携する手法は業界では「グレーゾーン」として広く知られていました。
しかし、活動実態のない労働組合を設立し、その名義で資金の流れを偽装することは、労働組合法の趣旨を逸脱した悪用に他なりません。今回の事件は、こうしたグレーゾーンの手法が法的に許容される限界を超えていたことを示しています。
退職代行業界への影響
業界全体への波及
モームリの逮捕は、退職代行業界全体に大きな衝撃を与えています。これまで多くの業者が労働組合との提携を「合法性の担保」としてアピールしてきましたが、その手法自体の適法性が改めて問われることになりました。
弁護士ドットコムニュースの解説によれば、退職代行サービスが合法的に行える範囲は「退職の意思を伝えること」に限定されます。有給休暇の消化日数や退職日について会社と交渉する行為、未払い残業代の請求などは、弁護士または弁護士法人のみが行える業務です。
利用者への影響と救済措置
モームリの逮捕を受け、弁護士法人AdIre法律事務所などがモームリ利用者や依頼を検討していた方への救済措置を実施すると発表しています。退職手続きが途中で止まってしまった利用者にとっては、不安な状況が続いています。
注意点・展望
退職代行サービスの利用を検討する場合、以下の点に注意が必要です。
まず、サービス提供者の資格を確認することが重要です。退職の意思を伝えるだけであれば民間業者でも対応可能ですが、会社との交渉や未払い賃金の請求が必要な場合は、弁護士または弁護士法人が運営するサービスを選ぶべきです。
労働組合との提携をうたっている業者については、その組合の活動実態を確認することも大切です。形だけの労働組合では、いざという時に依頼者の権利を守れない可能性があります。
今後、退職代行業界には規制強化の動きが予想されます。厚生労働省や弁護士会による監督が強化されれば、業界の健全化が進む一方で、真に困っている労働者がサービスを利用しにくくなるリスクもあります。
まとめ
モームリ事件は、急成長した退職代行業界の構造的な問題を浮き彫りにしました。労働組合を隠れみのにした違法な紹介料スキームは、弁護士法の規制を回避するための巧妙な仕組みでしたが、警視庁の捜査によってその実態が明らかになりました。
退職代行サービスを利用する際は、運営者の資格とサービスの範囲を慎重に確認することが不可欠です。正当な理由で退職を望む労働者の権利を守りつつ、違法行為を排除するためのルール整備が求められています。
参考資料:
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