物語コーポ、低価格カルビ丼店で出店余地500店超
はじめに
「焼肉きんぐ」や「丸源ラーメン」を展開する物語コーポレーションが、低価格カルビ丼専門店「焼きたてのかるび」の積極出店を進めています。インフレが外食業界の逆風となる中、630円の名物メニューを武器にした低価格業態が好調に推移しています。
2026年6月期は6期連続の増収増益を見込み、国内外で過去最高となる計105店の新規出店を計画。加藤央之社長は「焼きたてのかるび」の出店余地が500店を超えると見通しを語っています。この記事では、物語コーポレーションの成長戦略と外食市場における低価格業態の可能性を解説します。
「焼きたてのかるび」の強さ
490円から楽しめる本格カルビ丼
「焼きたてのかるび」は、物語コーポレーションが展開するファストカジュアル業態の専門店です。看板商品の「焼きたてのカルビ丼」は税込490円からという手頃な価格設定で、熟成肉を使用したカルビ丼とユッケジャンスープを提供しています。
タレには20種類の調味料をブレンドし、甘み・辛味・酸味のバランスを追求しているのが特徴です。人気メニューの「旨塩ねぎカルビ丼」は630円で、外食でありながら手軽に本格的な焼肉を楽しめる点が支持を集めています。
35店舗から全国展開へ
2024年時点で全国35店舗を展開しており、2026年2月には新たに富士宮市への出店も行われるなど、着実に店舗網を拡大しています。さらに2026年2月5日からは営業時間を24時まで延長し(一部店舗を除く)、夜食需要の取り込みにも乗り出しました。
加藤社長が「出店余地は500店超」と語る背景には、カルビ丼という業態の汎用性の高さがあります。ファストフード並みの手軽さと焼肉の満足感を両立した業態は、ロードサイドから駅前まで幅広い立地に対応できます。
物語コーポレーションの全体戦略
6期連続増収増益の見通し
2026年6月期の通期業績予想は、売上高が前期比18.7%増の1471億円、営業利益が16.5%増の107億円、純利益が20.4%増の74億円と、いずれも過去最高を更新する見込みです。6期連続の増収増益は、外食業界ではトップクラスの安定成長と言えます。
この好業績を支えているのは多業態展開戦略です。主力の「焼肉きんぐ」は食べ放題スタイルの焼肉チェーンとして国内トップクラスの店舗数を誇り、「丸源ラーメン」「寿司・しゃぶしゃぶ ゆず庵」「お好み焼本舗」など17の業態ブランドを展開しています。
過去最高105店の新規出店
2026年6月期には国内外で計105店の新規出店を計画しています。この出店数は物語コーポレーションの歴史で過去最高であり、成長投資を加速させている姿勢がうかがえます。
国内では751店舗(直営499店、フランチャイズ252店)を展開しており、海外は59店舗まで拡大しています。2025年1月には台湾に現地法人を設立し、同年4月には米国で鉄板焼きレストランを運営するSHOGUNグループを買収するなど、海外展開も積極的に進めています。
2030年に向けた中長期ビジョン
物語コーポレーションは2030年までにグループ店舗売上を3000億円に引き上げる目標を掲げています。2025年6月期の1726億円から約1.8倍という野心的な計画であり、国内の多業態展開と海外市場の開拓の両輪で達成を目指しています。
インフレ時代の外食戦略
値上げと低価格業態の二刀流
外食業界では原材料費や人件費の高騰が続いており、多くのチェーンが値上げを余儀なくされています。物語コーポレーションは主力の「焼肉きんぐ」などで戦略的な値上げを実施しつつも、売上を増加させることに成功しています。
一方で、「焼きたてのかるび」のような低価格業態を新たに育てることで、価格に敏感な消費者の受け皿を用意しています。490円のカルビ丼はコンビニ弁当と同価格帯であり、「外食が高くなった」と感じる消費者に対する有力な選択肢となっています。
加藤社長の経営哲学
加藤央之社長は2009年に神奈川大学法学部を卒業後、物語コーポレーションに入社。業態開発本部長などを経て、2020年にわずか34歳で社長に就任した異例の若手経営者です。趣味は外食という根っからの飲食好きで、現場感覚を重視した経営を行っています。
加藤社長は「飲食業界は成熟したマーケットだからこそ、接客の質や仕入れルートの改善など、小さな差別化の積み重ねが大切」と語っています。「出る杭こそ育て、どんどん引っこ抜く」という人材育成方針も、同社の成長を支える要因の一つです。
注意点・展望
出店スピードと品質維持の両立
105店という過去最高の新規出店は成長の加速を意味しますが、急速な拡大に伴う品質管理の課題も想定されます。特に「焼きたてのかるび」は低価格がゆえに薄利多売のビジネスモデルであり、1店舗あたりの収益性を維持しながら拡大できるかが鍵です。
海外展開のリスク
台湾・米国への進出は成長余地を広げますが、現地の食文化への適応やオペレーションコストの管理など、海外特有のリスクも存在します。特に米国市場は人件費が高く、日本国内と同じ低価格戦略が通用するかは慎重な見極めが必要です。
競合環境の変化
低価格の丼ぶり市場は、すき家や松屋などの牛丼チェーン、唐揚げ専門店など競合が多い分野です。「焼きたてのかるび」が500店規模に拡大する過程で、差別化の維持がますます重要になります。
まとめ
物語コーポレーションは、多業態展開と低価格業態の育成を組み合わせた独自の成長戦略で、インフレ下の外食市場でも好業績を維持しています。「焼きたてのかるび」の500店超の出店余地は、同社の成長ポテンシャルの大きさを示しています。
2026年6月期は6期連続増収増益と過去最高105店の新規出店が見込まれ、2030年にグループ売上3000億円という中長期目標に向けた歩みを着実に進めています。外食業界の投資先として、物語コーポレーションの動向は今後も注目に値します。
参考資料:
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