多党化で揺らぐ「政権選択」、2026年衆院選の構図を読む
はじめに
高市早苗首相は2026年1月19日、通常国会冒頭での衆議院解散を表明しました。2月8日投開票という戦後最短の短期決戦となる今回の衆院選を、首相は「政権選択選挙」と位置づけています。
しかし、現在の日本政治は多党化が急速に進んでいます。自民党と日本維新の会が連立を組む与党陣営に対し、立憲民主党と公明党が新党「中道改革連合」を結成して対抗。国民民主党は両陣営と距離を置く姿勢を示しています。
さらに与党内でも自民党と維新の間で候補者調整は行われず、野党側も政策の類似点と相違点が複雑に絡み合っています。有権者にとって、何をもって「政権を選択」すればよいのか、判断が難しい状況が生まれています。
与党陣営:自維連立の実態と課題
初めての自維連立政権
2025年10月20日、自民党の高市早苗総裁と日本維新の会の吉村洋文代表は連立政権合意書に署名しました。維新が政権与党に加わるのは党史上初めてのことです。
ただし、維新は「閣外協力」にとどめ、新内閣に閣僚を出していません。高市内閣は「日本初の女性首相」であると同時に、「過去70年で初の就任時に少数与党の首相」という記録も残しました。
衆院では、無所属の「改革の会」所属議員3人が自民党会派に合流したことで、与党会派はちょうど過半数を確保しました。しかし参院では過半数に6議席足りない「ねじれ国会」の状態が続いています。
選挙協力はしない方針
注目すべきは、連立を組む自民党と維新が選挙協力をしない方針であることです。高市首相は「基本的にしない」と明言しています。
これは各選挙区で自民党候補と維新候補が競合する可能性があることを意味します。同じ与党内で票を奪い合う構図が生まれれば、結果的に野党候補を利する可能性もあります。
維新側からは、内閣支持率が高い中で与党内に「埋没」する懸念が指摘されています。独自色を出すためには、選挙では自民党と距離を置く必要があるという判断が働いているとみられます。
連立政権の合意内容
自維連立の合意には、いくつかの具体的な政策が盛り込まれています。
維新が条件とした「副首都構想」については、2026年通常国会で法案を成立させることが明記されました。また、社会保険料の引き下げを含む社会保障改革、国会議員定数の1割削減を目標とする議員立法の提出も合意内容に含まれています。
選挙制度についても、小選挙区比例代表並立制の廃止や中選挙区制の導入を検討する協議体を設置することで合意しています。
野党陣営:中道改革連合の誕生
立憲民主党と公明党の合流
2026年1月15日、立憲民主党の野田佳彦代表と公明党の斉藤鉄夫代表が会談し、新党「中道改革連合」を結成することで合意しました。翌16日に設立届け出がなされ、高市首相の解散表明からわずか1週間での結党となりました。
公明党は2025年10月、26年間続いた自民党との自公連立を解消していました。高市政権の誕生で自公の政策距離が広がったことが背景にあります。
立憲の衆院議員148人と公明の24人を合わせれば172人となり、自民党の衆院勢力196人に迫る規模です。「中道」を掲げることで、保守色の強い自維連立との対立軸を明確にする狙いがあります。
基本政策は「生活者ファースト」
中道改革連合は「生活者ファーストの政治の実現」を基本政策として掲げています。
具体的には、手取り対策にとどまらない額面が増える経済構造の構築、行き過ぎた円安の是正、食料品・エネルギーなど生活必需品の物価引き下げなどが挙げられています。また、防災・減災・国土強靭化の強化、再生可能エネルギーの最大限活用も政策の柱です。
新党結成後の世論調査では、次期衆院選の比例投票先で中道改革連合は自民党に次ぐ支持を集めています。
国民民主党は両陣営と距離
一方、国民民主党は与党の自維連立とも、野党の中道改革連合とも距離を置く姿勢を示しています。
「中道」を標榜し、「手取りを増やす」をキャッチフレーズとする国民民主党は、政策面では自民党や維新と重なる部分も多くあります。消費税5%への引き下げや所得控除の拡大など、より踏み込んだ減税策を打ち出している点が特徴です。
衆参両院で多党化が進む中、選挙後にどの政党が政権を担っても、政策を実現するには国民民主党の協力が必要な状況が続くとみられています。
「政権選択」は機能するか
多党化がもたらす複雑な構図
今回の衆院選は、単純な与野党対決の構図ではありません。与党内でも自民と維新は候補者調整をせず、野党側も中道改革連合と国民民主党が別々に戦います。さらに参政党など保守系の小政党も大量の候補者を擁立しています。
有権者が投票を通じて「どの政権を選ぶか」を明確に示すことは、従来の二大政党対決型の選挙に比べて難しくなっています。
特に、政策面での類似点が目立つことが状況を複雑にしています。減税については、自民党が慎重姿勢を維持する一方、維新・立憲・国民民主はそれぞれ消費税の軽減策を掲げています。社会保障改革についても、維新が最も具体的な提案をしている一方、他党は負担増の議論を避ける傾向があります。
選挙後の連立枠組みが焦点
今回の衆院選では、選挙結果そのものだけでなく、選挙後にどのような連立枠組みが形成されるかが焦点となります。
与党が議席を伸ばせば、自維連立が継続・強化される可能性が高まります。一方、中道改革連合が躍進すれば、国民民主党を加えた新たな政権の枠組みが視野に入ってきます。
参院がねじれ状態にある以上、どちらが勝っても野党の協力なしには政策を実現できません。「政権選択」というより、「どの連立の組み合わせを選ぶか」という選挙になるといえます。
注意点と今後の展望
短期決戦の影響
解散から投開票まで16日という戦後最短の短期決戦は、各政党の選挙態勢に影響を与えます。候補者の準備が十分でない選挙区もあり、組織力の差が結果に反映されやすくなる可能性があります。
また、政策論争が深まる前に投票日を迎えることで、有権者の判断材料が限られる懸念もあります。
投票率と議席配分
多党化が進むと、小選挙区では相対的に少ない得票でも当選できるケースが増えます。比例代表では各党の得票に応じた議席配分になりますが、小選挙区では「死票」が増える傾向があります。
投票率の変動も結果に大きな影響を与えます。どの層の投票率が上がるか、あるいは下がるかによって、各党の議席は大きく変わる可能性があります。
まとめ
高市首相が「政権選択選挙」と位置づける2026年衆院選ですが、多党化が進む現状では、その意味は従来とは異なってきています。
自維連立と中道改革連合という二つの陣営が対峙する構図は明確になりましたが、与党内でも野党側でも候補者調整は行われず、国民民主党は独自路線を歩んでいます。有権者は政党間の複雑な関係を理解した上で、投票先を選ぶ必要があります。
選挙後にどのような連立枠組みが形成されるか、そしてねじれ国会の中でどう政策を実現していくか。2月8日の投票結果だけでなく、その後の政界再編の動きにも注目が集まります。
参考資料:
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