日経平均914円高、TACOトレードが再燃した背景と投資戦略
はじめに
2026年1月22日、東京株式市場で日経平均株価が前日比914円高と大幅に反発しました。6営業日ぶりの上昇となり、取引時間中には上げ幅が1,100円を超える場面もありました。
この急騰の背景にあるのが、投資家の間で定着しつつある「TACOトレード」という考え方です。トランプ米大統領が欧州への追加関税を撤回したことで、市場に安心感が広がりました。
この記事では、TACOトレードの意味と仕組み、今回の株価急騰の経緯、そして今後の投資戦略について解説します。
TACOトレードとは何か
Trump Always Chickens Out
「TACO」は「Trump Always Chickens Out(トランプはいつも尻込みする)」の頭文字を取った造語です。米国のトランプ大統領の政策スタンスを皮肉った言葉として、ウォール街を中心に広まりました。
トランプ大統領は、当初は強硬な姿勢を打ち出すものの、株価下落や経済への悪影響が見えてくると、方針を撤回したり延期したりする傾向があります。この行動パターンを指して「TACO」と呼ばれています。
投資戦略としてのTACOトレード
この傾向を利用した投資戦略が「TACOトレード」です。考え方はシンプルです。トランプ大統領の強硬発言で株価が下落しても、いずれは撤回されて株価が戻る可能性が高いため、「トランプ発言による下落は買い場」として捉えるというものです。
この戦略は、2025年4月にトランプ大統領が世界各国に対して大幅な関税を導入し、その後すぐに撤回した出来事を受けて登場しました。以降、過激な脅しを気にせずリスク資産を買い続ける投資家たちの合言葉となっています。
今回の株価急騰の経緯
グリーンランドを巡る関税騒動
事の発端は、トランプ大統領によるグリーンランド領有への意欲表明でした。デンマーク自治領であるグリーンランドの取得に反対する欧州8カ国(デンマーク、英国、フランス、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、オランダ)に対し、1月17日に2月1日から10%の追加関税を課すと発表しました。
この発表を受けて、米欧間の貿易摩擦激化への懸念から、日経平均株価は5営業日続落しました。市場には警戒感が広がっていました。
一転しての関税撤回
しかし1月21日、状況は一変しました。トランプ大統領は、ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)での演説において、欧州への追加関税を撤回すると表明しました。
さらに、NATOとの間で「グリーンランドを含む北極圏全体に関する将来の合意に向けた枠組み」を構築したことも明らかにしました。グリーンランドへの武力行使も否定し、強硬姿勢を大幅に後退させました。
市場の反応
この発表を受けて、1月21日のニューヨーク株式市場ではダウ平均が700ドル以上上昇しました。この流れが翌22日の東京市場にも波及し、日経平均株価は914円高の5万3,688円で取引を終えました。
午前中には986円高の5万3,760円まで上昇する場面もあり、「TACOトレード」の再燃を印象づける展開となりました。
TACOトレードの功罪
市場の安定化に寄与
TACOトレードが市場に定着したことで、トランプ大統領の過激な発言があっても、以前のような大幅な市場暴落は起きにくくなっています。投資家が「いずれ撤回される」と予測して行動するため、パニック売りが抑制される効果があります。
新たなリスクの懸念
一方で、専門家からは懸念の声も上がっています。市場の下落が限定的であれば、トランプ大統領は次々と積極的な政策を打ち出す可能性があります。
それが結果的に米国経済の後退や、国際社会における米国の信頼低下につながる恐れがあるとの指摘もあります。市場からの「ブレーキ」が効きにくくなることで、政策の暴走を招くリスクがあるというわけです。
Bloomberg報道の警告
Bloombergは最近、この「TACOトレード」戦略に陰りが見えてきていると報じています。投資家がリスクを認識し始めており、常に成功する戦略ではないという認識が広がりつつあります。
トランプ関税政策の特徴
交渉カードとしての関税
トランプ大統領の関税政策を理解する上で重要なのは、関税そのものが目的ではなく、交渉の材料として使われているという点です。
極めて高い関税率を提示するのは、それを交渉材料として各国と個別に交渉し、自国に有利な結果を得ようとする狙いがあると分析されています。
予測困難な政策運営
トランプ大統領の政策は短期的に目まぐるしく変わるため、政府や企業にとっては将来の不確実性が高まります。これは投資行動に負の影響を及ぼす可能性があります。
関税を交渉手段として捉えている限り、いったん落ち着いたかに見える時こそ、想像もできない措置が取られる可能性もあります。今後も予測困難な政策運営が続くと見られています。
今後の投資戦略と注意点
TACOトレードへの過信は禁物
TACOトレードは有効な場面もありますが、常に成功するとは限りません。すべての強硬発言が撤回されるわけではなく、実際に政策が実行されるケースもあります。
特に、トランプ大統領が強い政治的動機を持つ案件では、市場の反応に関わらず政策を推し進める可能性があります。
分散投資の重要性
不確実性の高い市場環境では、特定の戦略に依存しすぎないことが重要です。地域や資産クラスを分散させ、一つのリスク要因に過度に影響されないポートフォリオ構築が求められます。
情報収集と冷静な判断
トランプ大統領の発言に一喜一憂するのではなく、実際の政策の行方を冷静に見極めることが大切です。SNSでの発言と実際の政策実行には時差があることが多く、その間の情報収集が投資判断の鍵となります。
まとめ
日経平均株価の914円高は、トランプ大統領の欧州関税撤回を受けた「TACOトレード」の再燃を象徴する出来事でした。「Trump Always Chickens Out」という見方が市場に定着しつつあり、強硬発言による下落は買い場として認識されています。
ただし、この戦略にはリスクもあります。市場のブレーキが効きにくくなることで、かえって政策の暴走を招く可能性や、いつかは撤回されない強硬策が実行される可能性も排除できません。
投資家としては、TACOトレードの有効性を理解しつつも、過信せず冷静な判断を心がけることが重要です。不確実性の高い環境では、分散投資と情報収集が一層大切になります。
参考資料:
関連記事
日経平均続落の背景と今後の展望を解説
2026年1月19日、日経平均株価が続落。トランプ関税への警戒感と海外投資家の利益確定売りが重なった背景を解説し、衆議院解散観測後の相場見通しを分析します。
トランプ関税の「TACO」パターンとは何か?市場が学んだ交渉術
トランプ大統領のグリーンランド関税撤回で再注目された「TACO」(Trump Always Chickens Out)現象。関税脅威と撤回を繰り返す交渉戦術の実態と、投資家の対応策を解説します。
NYダウ588ドル高、トランプ関税撤回で「TACOトレード」再び
2026年1月21日、NYダウがトランプ大統領の欧州関税撤回で588ドル高の急反発。「Trump Always Chickens Out」に賭ける投資戦略「TACOトレード」の実態と注意点を解説。
メキシコがキューバへの原油供給を停止した背景
トランプ米政権の関税圧力を受け、メキシコがキューバへの原油供給を停止。キューバのエネルギー危機が深刻化する中、国際関係の変化と人道的懸念を解説します。
日経平均が史上最高値更新、衆院選と米金融政策が鍵を握る
日経平均株価が5万4720円の史上最高値を更新。衆院選での与党優勢観測や半導体株ラリー再燃が追い風となりました。米FRB新議長人事の影響と今後の見通しを解説します。
最新ニュース
ビットコイン7万ドル台急落、テック株売りが暗号資産に波及
ビットコインが約1年3カ月ぶりの安値となる7万2000ドル台に急落しました。米ハイテク株の売りが暗号資産市場に波及した背景と、MicroStrategyの含み損問題について解説します。
日銀の量的引き締め出遅れと円安の関係を解説
日銀のマネタリーベース縮小が米欧に比べ緩やかな理由と、それが円安に与える影響について解説します。FRB新議長候補ウォーシュ氏の金融政策姿勢にも注目が集まっています。
書店600店の在庫を一元化|返品率30ポイント削減の新システム
紀伊国屋書店、TSUTAYA、日販が出資するブックセラーズ&カンパニーが、56社603店の在庫を横断管理するデータベースを始動。返品率6割減を実現した事例と、出版業界の構造改革を解説します。
中国海警局の尖閣周辺活動が過去最多に、日中の緊張続く
2025年、中国海警局の船舶が尖閣諸島周辺の接続水域に357日出没し過去最多を更新。日本の対応策と偶発的衝突防止の課題を解説します。
中国の土地売却収入がピーク比半減、地方財政に深刻な打撃
中国の地方政府の土地売却収入が2025年も前年比14.7%減少し4年連続の減少を記録。ピークの2021年から52%減となり、不動産不況が地方財政を圧迫し続けています。