大阪ダブル選で都構想3度目の挑戦へ、各党から批判噴出
はじめに
2026年1月13日、大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会代表)と大阪市の横山英幸市長(同副代表)が、任期途中で辞職し、出直し選挙に臨む意向を固めました。23日召集予定の通常国会冒頭で衆院が解散されれば、衆院選と同日投開票で知事・市長のダブル選挙を行い、大阪都構想の是非を問う構えです。
しかし、この動きに対して各党から「大義がない」「党利党略」との批判が相次いでおり、維新内部からも異論が出ています。2度否決された大阪都構想への3度目の挑戦は実現するのでしょうか。
大阪都構想とは何か
制度の概要
大阪都構想は、大阪市を廃止して複数の特別区に再編し、府と市の二重行政を解消しようとする構想です。東京都と23区の関係に近い形を目指すもので、日本維新の会が看板政策として掲げてきました。
特別区に再編されれば、広域行政を大阪府に一元化し、特別区は住民に身近なサービスに集中するという役割分担が実現するとされています。
これまでの経緯
大阪都構想は2010年に初めて提唱され、これまで2度の住民投票が行われました。
2015年5月の住民投票 初めての住民投票は僅差で否決されました。当時の橋下徹大阪市長は、この結果を受けて政界引退を表明しました。
2020年11月の住民投票 2度目の住民投票も反対692,996票、賛成675,829票と約1万7,000票差で否決されました。この時、吉村知事は「僕が再挑戦することはない」と明言していました。
なぜ今、3度目の挑戦なのか
吉村代表の発言の変遷
吉村氏は2020年の住民投票否決後、繰り返し「自分が3度目に挑戦することはない」と述べてきました。2022年1月には「3回目の住民投票にチャレンジすることはない」と発言し、同年12月にも「僕がやるべきことではない」と再挑戦を否定していました。
しかし、2024年11月の大阪維新の会代表選挙で、吉村氏は大阪都構想への再挑戦を掲げて圧勝し、再選を果たしました。その後、維新として都構想の制度案を半年から1年かけてゼロベースで検討すると表明し、方針を転換しています。
副首都構想との連携
2025年9月30日、維新は「副首都構想」法案の骨子をまとめました。副首都の指定要件の一つとして「特別区を設置した道府県」が新たに盛り込まれ、都構想と副首都構想がセットで位置付けられています。
吉村氏は「大阪を副首都とする前提として、都構想の実現が必要」との立場を示しており、3度目の挑戦への布石を打ってきた形です。
衆院選との同日投開票の狙い
吉村氏は「3度目に挑戦するのであれば、民主的なプロセスが必要だ」と説明しています。衆院選と同日に投開票を行うことで、選挙費用を抑え、投票率を高める効果も期待できます。
また、高市政権発足後の維新は与党として連立を組んでおり、政権与党の勢いを背景に選挙戦を有利に進めたい思惑もうかがえます。
各党の反応と批判
「大義なし」との批判
この動きに対し、各党から厳しい批判が相次いでいます。
自民党の鹿田松男大阪府議は「何のためにするのか。大義が全くない」と批判しています。自民党は独自候補を擁立しない方針とも報じられており、「相手にしない」姿勢を示しています。
立憲民主党や国民民主党の幹部からも「衆院選に利用している」との批判が出ています。大阪維新の会と距離を置く野党勢力は、「民意を愚弄している」との声を上げています。
公明党の消極姿勢
2度目の住民投票で賛成の立場で臨んだ公明党は、3度目については消極的な姿勢を示しています。「3回目は非常に難しいと思う」とし、「2回目の時にこれが最後ということで、私たちも臨んだ」と述べています。
公明党は高市政権発足に伴い連立を離脱しており、立憲民主党との連携を模索している状況です。維新が掲げる都構想への協力は期待できません。
維新内部の異論
注目すべきは、維新内部からも異論が出ていることです。日本経済新聞は「独り相撲に」と報じ、「もはやメチャクチャ」と身内からも大ブーイングが起きているとの報道もあります。
維新は与党として連立政権を担っている立場であり、党利党略と受け取られかねない動きに対する懸念の声があります。
大阪市民・府民の反応
街の声
メディアの街頭インタビューでは、賛否両論が出ています。「2回もダメだったのに、なぜまた」との困惑の声がある一方、「何度チャレンジしてもいいのでは」という意見も見られます。
維新の創設者である橋下徹氏は「政治は1回駄目になったことで、終わりというわけではない。何度もチャレンジするのが政治」と述べ、再挑戦を肯定的に評価しています。
選挙費用への懸念
出直し選挙には多額の費用がかかることへの疑問の声も上がっています。衆院選との同日投開票であれば費用を抑えられるものの、知事・市長が自ら辞職して行う選挙の必要性に疑問を呈する意見もあります。
注意点・今後の展望
住民投票実施までのハードル
仮にダブル選挙で吉村知事と横山市長が再選されたとしても、すぐに住民投票が実施されるわけではありません。
都構想の新たな制度案を策定し、府議会・市議会での議決を経る必要があります。維新が両議会で過半数を持っているとはいえ、具体的な制度設計をめぐって議論が紛糾する可能性もあります。
衆院選への影響
大阪ダブル選挙と衆院選が同日投開票となれば、大阪府内の選挙情勢に大きな影響を与えます。維新が知事・市長選で勝利すれば、衆院選でも勢いに乗る可能性がある一方、「大義なき選挙」との批判が強まれば逆風となる可能性もあります。
また、連立パートナーである自民党との関係にも影響が出かねません。鈴木幹事長は維新との選挙協力について「基本的にはしない」と述べており、大阪での両党の関係は微妙です。
任期の問題
吉村氏は現在2期目で、知事選に勝利しても、公選法の規定により任期は現在と同じ2027年4月までとなります。残り1年余りの任期で都構想を実現に導くのは時間的に厳しいとの見方もあります。
まとめ
大阪府の吉村知事と大阪市の横山市長が、大阪都構想の是非を問う出直しダブル選挙に踏み切る意向を固めました。2015年と2020年に2度否決された都構想への3度目の挑戦となります。
しかし、各党からは「大義がない」「党利党略」との批判が相次いでおり、維新内部からも異論が出ています。2020年の否決時に「再挑戦はない」と明言していた吉村氏の方針転換に対する疑問の声も強く、「独り相撲」との指摘もあります。
衆院選との同日投開票が実現すれば、大阪の政治情勢に大きな影響を与えることは間違いありません。維新が掲げる「3度目の正直」は実現するのか、今後の展開が注目されます。
参考資料:
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