大阪知事・市長が辞職へ、都構想で3度目の住民投票目指す
はじめに
大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会代表)と大阪市の横山英幸市長(同副代表)が、任期途中で辞職する意向を固めたことが1月13日に明らかになりました。大阪市を廃止して複数の特別区に再編する「大阪都構想」を公約に掲げ、民意を問うために出直し選挙に立候補する方向です。
高市早苗首相が通常国会冒頭で衆院を解散した場合、府知事・市長選と衆院選の同日投開票を想定しています。都構想は2015年と2020年の住民投票で2度否決されており、実現すれば3度目の挑戦となります。
本記事では、大阪ダブル出直し選挙の背景と、都構想をめぐるこれまでの経緯、今後の展望について解説します。
辞職決断の背景
衆院選との同日選挙を狙う
吉村知事と横山市長は、高市首相が1月23日召集の通常国会冒頭で衆院を解散した場合に合わせて、府知事・市長選を実施する考えです。衆院選との同日選挙となれば、投票率の上昇が見込まれ、維新への追い風となる可能性があります。
維新関係者によると、吉村氏は「辞めて副首都構想と都構想、合わせて民意を問いたい」と伝えたとされています。衆院選出馬の可能性については否定しており、知事として都構想の実現に専念する姿勢を示しています。
副首都構想との連動
吉村氏は、高市政権が掲げる「副首都」構想を大阪で実現する上で、大阪市を特別区に再編する都構想が「必要最低の条件」だと主張しています。首都機能の一部を地方に移すという政府の方針と連動させることで、都構想の意義を訴える狙いがあります。
維新は国政でも副首都機能の地方移転を訴えており、大阪がその受け皿となるためには都構想による行政改革が不可欠だという論理を展開しています。
大阪都構想とは
二重行政の解消を目指す
大阪都構想とは、大阪府と大阪市の「二重行政」を解消するために、大阪市を廃止して複数の特別区に分け、大阪市の広い範囲の権限と予算を大阪府に一元化する構想です。
2010年に橋下徹氏が立ち上げた地域政党「大阪維新の会」は、この構想を党是ともいうべき最重要政策として掲げ、推進してきました。大阪府と大阪市が別々に同様の施設や事業を行う「二重行政」の無駄を省き、大阪の成長戦略を一元的に推進できる体制を構築することが目的です。
特別区への再編
具体的には、大阪市を廃止し、東京23区のような複数の特別区に再編します。特別区は基礎的な住民サービス(福祉、保健、教育など)を担い、広域行政(都市計画、インフラ整備など)は大阪府が一元的に担う形となります。
ただし、実現した場合でも「大阪都」という名称への変更には法改正が必要であり、名称は「大阪府」のままとなる見込みです。
2度の否決の歴史
2015年5月の住民投票
大阪都構想に対する最初の住民投票は、2015年5月17日に実施されました。政令指定都市である大阪市を廃止し5つの特別区を設置する構想の是非を問うものでしたが、反対票が賛成票を上回り否決されました。賛成・反対の票差はわずか1万741票、得票率では0.8ポイント差という僅差でした。
この結果を受け、都構想を推進してきた橋下徹大阪市長は、同年12月の任期満了をもって政界からの引退を表明しました。
2020年11月の住民投票
2015年11月の大阪府知事・市長ダブル選挙で、大阪維新の会の松井一郎氏と吉村洋文氏が当選したことを受け、都構想は再び議論されることとなりました。
2020年11月1日に実施された2回目の住民投票では、賛成67万5,829票(49.37%)、反対69万2,996票(50.63%)という結果で再度否決されました。賛成・反対の票差は1万7,167票、得票率は1.2ポイント差と、前回以上の僅差でした。
否決後の対応
2020年の否決を受け、当時の松井一郎大阪市長は任期満了後の政界引退を表明。吉村知事も「僕が再挑戦することはない」と明言していました。都構想の制度設計に費やされた費用は、人件費や選挙関連費用を含め計100億円超に上ったとされています。
3度目の挑戦への布石
吉村氏の方針転換
「再挑戦しない」と述べていた吉村氏ですが、最近は大阪を副首都とする前提として、都構想実現の可能性に言及するようになりました。自身の下で3度目に挑む前提として、出直し選を念頭に「民主的プロセスの必要性」を繰り返し訴えてきました。
吉村氏は「さまざまな可能性、選択肢を熟考していきたい」と述べつつ、出直し選挙で改めて民意を問うことで、3度目の住民投票への正当性を確保しようとしています。
選挙の見通し
出直し選挙が実施された場合、吉村知事と横山市長がそれぞれ再出馬し、都構想推進を公約に掲げる見通しです。両者が再選されれば、住民投票実施に向けた手続きを進めることになります。
ただし、2度の否決という結果を覆すには、相当数の市民の賛同を得る必要があります。特に高齢層では反対意見が強く、住民サービスの低下への懸念を払拭できるかが課題となります。
維新の狙いと課題
衆院選との相乗効果
維新にとって、衆院選との同日選挙は大きなメリットがあります。知事・市長選の投票率が上がることで、維新の組織票を最大限に活かせる可能性があります。また、衆院選でも大阪での議席確保につながる効果が期待できます。
維新は首都機能の一部を地方に移す「副首都」構想を国政でも掲げており、大阪での都構想実現はその前提条件として位置づけています。
市民の反応
一方、2度も否決された構想に対して、市民の間には「また同じことの繰り返しか」という反発も予想されます。これまでの住民投票で費やされた100億円超のコストに加え、再び選挙や住民投票を行うことへの批判も出る可能性があります。
維新としては、副首都構想との連動や、高市政権との協調を前面に押し出すことで、新たな意義付けを行う必要があります。
今後の展望
住民投票の実施条件
仮に出直し選挙で吉村知事と横山市長が再選されても、すぐに住民投票が実施されるわけではありません。特別区設置協定書の作成や府市両議会での承認など、法的な手続きを経る必要があります。
また、住民投票で賛成多数となっても、特別区への移行には相当の準備期間が必要となり、実現までには数年を要すると見られています。
政局への影響
大阪ダブル選挙は、全国の政治情勢にも影響を与える可能性があります。維新が大阪で勢いを維持すれば、衆院選や参院選でも一定の存在感を示すことができます。逆に、都構想への批判が高まれば、維新の全国展開にも影響が及ぶかもしれません。
高市政権との関係も注目されます。維新は高市首相の「副首都」構想に呼応する形で動いており、政権と協力関係を維持できるかどうかが、都構想の行方を左右することになりそうです。
まとめ
大阪府の吉村知事と大阪市の横山市長が辞職し、出直し選挙で大阪都構想の実現を目指す意向を固めました。2015年と2020年に2度否決された構想に対し、副首都構想との連動を掲げて3度目の挑戦を試みます。
衆院選との同日選挙が想定されており、維新にとっては党勢拡大の好機となる可能性があります。一方、市民の間には「同じことの繰り返し」への反発も予想され、選挙戦の行方は予断を許しません。大阪の政治地図がどう変わるのか、注目が集まっています。
参考資料:
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