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by nicoxz

ペロブスカイト太陽電池の輸出支援を経産省が公募へ、海外展開加速

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はじめに

経済産業省は、次世代太陽電池として注目される「ペロブスカイト太陽電池」の輸出促進に向け、2026年度に海外での設置実証事業の公募を開始する方針を示しました。東南アジアや米国、欧州での設置にかかる費用を補助し、日本発の技術の海外展開を後押しします。

ペロブスカイト太陽電池は薄くて曲がるフィルム型が特徴で、従来のシリコン太陽電池パネルでは設置困難だったビルの壁面や曲面屋根にも対応できます。日本企業が技術開発をリードしてきた分野ですが、中国勢の追い上げも激しく、輸出支援は国際競争力確保の重要な一手です。

ペロブスカイト太陽電池とは何か

従来の太陽電池との違い

ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を持つ材料を用いた次世代型の太陽電池です。従来のシリコン太陽電池が硬く重い板状のパネルであるのに対し、ペロブスカイト型はフィルム状に加工でき、薄くて軽く、曲げることが可能です。

この特性により、従来のパネルでは設置できなかった場所への展開が可能になります。高層ビルの壁面、工場の曲面屋根、車両のボディなど、設置場所の制約が大幅に緩和されます。製造工程もシンプルで、印刷技術を応用した低コスト・大量生産が期待されています。

日本が持つ技術的優位性

ペロブスカイト太陽電池は、2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授が開発の端緒を開いた日本発の技術です。日本企業はフィルム型の製造技術、封止技術(耐久性を高める技術)、ロール・ツー・ロール(R2R)製膜技術で世界をリードしています。

さらに、主な原料である「ヨウ素」において日本は世界2位の生産国で、世界シェアの約29%を占めます。推定埋蔵量では世界の78%に達するとされ、原料調達面でも大きな強みを持っています。シリコン太陽電池の原料が中国に集中している現状と比較すると、エネルギー安全保障の観点からも重要な技術です。

経産省の輸出支援策の詳細

海外実証事業の公募内容

2026年度に開始される海外設置実証の公募では、ペロブスカイト太陽電池の製造企業に対し、海外での設置実証にかかる費用を補助します。具体的な設置先として想定されているのは以下の地域です。

東南アジアでは、日本企業が多く進出するインドネシアやタイの工業団地の屋根への設置が念頭に置かれています。欧米では、米国やドイツの住宅・ビルの屋根が対象です。日本企業の海外拠点を足がかりに実績を積み、現地市場への参入につなげる戦略です。

国内支援との両輪戦略

経産省は海外展開だけでなく、国内での支援も並行して進めています。2025年にはリコー、パナソニックHD、京都大発スタートアップなどに対して約246億円の補助を決定し、技術開発と量産体制の構築を加速しています。

また、ペロブスカイト太陽電池の電力買い取り価格を優遇する制度や、公共調達での需要喚起策も導入されています。2040年度に20GW(原発約20基分に相当)の導入を目標に掲げ、国内市場の創出と海外展開の両輪で産業育成を進めています。

日本企業の開発・量産化の現状

積水化学工業の先行

日本企業の中で最も商用化に近いのが積水化学工業です。2025年1月に新会社「積水ソーラーフィルム株式会社」を設立し、量産化に本格的に乗り出しました。2027年4月の100MW製造ライン稼働を目指し、約900億円の設備投資を予定しています。2030年にはGW級の製造ライン構築を目標としています。

すでに大阪・関西万博ではバスシェルターの屋根に約250m分を設置する計画があり、東京都千代田区の超高層ビル壁面には1MW分の設置が計画されています。実証から商用化への移行が着実に進んでいます。

リコー、パナソニック、東芝の動向

リコーは屋内光でも発電できる小型ペロブスカイト太陽電池の開発で強みを持ち、IoTセンサーの電源用途での実用化を進めています。パナソニックHDはガラス基板型のペロブスカイト太陽電池の開発に取り組んでおり、建材一体型への展開を目指しています。東芝エネルギーシステムズも大面積フィルム型の開発で成果を上げており、事業化に向けた取り組みを続けています。

中国勢の追い上げと国際競争

シリコン太陽電池の教訓

日本の太陽電池産業には苦い記憶があります。2000年頃には世界シェアの約50%を占めていたシリコン太陽電池ですが、2005年以降は中国勢に押され、現在の日本のシェアは1%未満にまで落ち込みました。ペロブスカイトで同じ轍を踏まないことが、日本にとって最大の課題です。

中国の量産化攻勢

中国では2015年頃からペロブスカイト太陽電池のスタートアップが複数設立され、国家戦略として量産化を急速に推進しています。複数の研究機関が33%前後の変換効率を相次いで報告するなど、技術面でも猛追しています。特許取得競争も激化しており、量産での先行を狙う姿勢が鮮明です。

日本の勝ち筋

日本が国際競争で優位に立つための「勝ち筋」は、フィルム型や都市インフラ対応の高機能技術にあります。中国が「量」で攻めるのに対し、日本はビル壁面や曲面屋根など設置場所の多様性に対応できる「質」で差別化を図る戦略です。ヨウ素の資源優位性と合わせ、サプライチェーン全体での強みを構築することが重要になります。

注意点・展望

ペロブスカイト太陽電池の最大の課題は耐久性です。現在のシリコン太陽電池の寿命が25〜30年であるのに対し、ペロブスカイト型は湿気や紫外線による劣化が早く、耐久20年の実現が量産化の前提条件とされています。積水化学工業は耐久20年を目指した技術開発を進めていますが、実環境での長期実証はこれからです。

海外展開においては、各国の建築基準法や安全規格への対応も必要になります。経産省の海外実証事業は、こうした規格認証の取得やローカライゼーションの知見を蓄積する場としても重要な役割を果たすことが期待されています。

今後の焦点は、2027年の積水化学の量産ライン稼働と、海外実証事業の成果です。日本発の技術が世界標準を獲得できるかどうか、ここ数年が正念場になります。

まとめ

経産省が2026年度に公募するペロブスカイト太陽電池の海外実証事業は、日本発の次世代太陽電池技術を世界に展開するための重要な施策です。シリコン太陽電池でシェアを失った教訓を活かし、技術的優位性とヨウ素資源の強みを武器に国際競争に挑みます。

積水化学を筆頭に日本企業の量産化が具体化しつつあるなか、海外市場での実績づくりが急務です。再生可能エネルギーの普及と日本の産業競争力強化の両面から、ペロブスカイト太陽電池の動向に注目が集まっています。

参考資料:

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