大分駅前に県内初「2億ション」誕生へ、地方高額化の波
はじめに
大分県で初となる2億円超のマンション、いわゆる「2億ション」が誕生しようとしています。大和ハウス工業と日鉄興和不動産が手掛ける「プレミストタワー大分」は、JR大分駅北口から徒歩2分という好立地に建設中の地上27階建てタワーマンションです。高さ約98メートルは大分県内で最も高い建物となります。
2026年2月7日にモデルルームがオープンし、2月下旬から販売を開始する予定です。かつて「4,000万円を超えるマンションは売れない」と言われていた大分県で、なぜ2億円の住戸が登場するのでしょうか。本記事では、プレミストタワー大分の全容と、その背景にある地方都市のマンション高額化トレンドを詳しく解説します。
プレミストタワー大分の全容
物件概要と立地の魅力
プレミストタワー大分は、JR大分駅前の「末広町一丁目地区第一種市街地再開発事業」の一環として建設されています。日豊本線・久大本線・豊肥本線の3路線が乗り入れる大分駅の北口から徒歩2分という抜群のアクセスが最大の特徴です。
建物は地上27階・地下1階建てで、1〜2階が店舗、4〜27階が住居フロアとなります。総戸数は217戸で、間取りは1LDK〜4LDK、専有面積は約50平方メートル〜約117平方メートルと幅広いラインナップです。最高価格の約2億円の住戸は26階に位置する約117平方メートルの部屋で、別府湾や大分市中心街の都市景観を一望できます。
一方で、最も手頃な住戸は約50平方メートルで4,500万円からと、単身者やDINKs世帯にも手が届く価格帯も用意されています。
先進の制振構造と充実の共用施設
プレミストタワー大分は、大分県で初めて制振構造を採用しています。建物内部に配置された高減衰ゴムなどで構成される制振部材が、地震や強風による揺れのエネルギーを熱に変換して吸収します。これにより、柱や梁などの主要構造部分だけでなく、内外装の損傷も最小限に抑える設計です。
共用施設としては、入居者専用のラウンジやパーティルームが設けられます。また、各階にごみ収集場を設置するなど、日常生活の利便性にも配慮した設計となっています。217戸というスケールメリットを活かし、管理体制も充実させる計画です。
大分駅前再開発の全体像
末広町一丁目地区再開発事業
プレミストタワー大分が建設されているのは、「末広町一丁目地区第一種市街地再開発事業」の敷地内です。かつてこのエリアには小規模な雑居ビルが立ち並んでいましたが、土地の高度利用と都市機能の更新を目指して再開発が進められています。
再開発地はA街区(駅側)とB街区(産業通り側)に分かれています。A街区にプレミストタワー大分と商業施設が入り、B街区には大和ハウスグループのコスモスイニシアが手掛ける分譲マンションと商業施設が計画されています。2021年3月に再開発組合が設立され、2023年6月に既存建物の解体工事が始まり、2024年4月に着工しました。竣工は2027年度を予定しています。
参加事業者の顔ぶれ
再開発事業の参加組合員は、大和ハウス工業、日鉄興和不動産、コスモスイニシア、ピースリビングの4社です。大和ハウス工業は「プレミスト」ブランドで全国各地のタワーマンションを展開しており、千葉県の「プレミストタワー船橋」では最高価格7.2億円の住戸も販売するなど、高額帯のマンション開発にも実績があります。
なぜ地方で「億ション」が増えているのか
建設コストの構造的上昇
地方都市で高額マンションが増加している最大の要因は、建設コストの構造的な上昇です。2021年から2024年にかけて、鉄鋼材・木材・コンクリートなどあらゆる建設資材の価格が高騰しました。板ガラスが83%、アルミ地金が82%、ビニル絶縁電線が80%と、わずか4年間で約2倍に値上がりした資材も少なくありません。
資材費は建設全体のコストの5〜6割を占めるため、その影響は甚大です。労務費の上昇も重なり、建設コスト全体が2割以上上昇したとの試算もあります。こうしたコスト増は当然、販売価格に反映されます。
「ローカル億ション」というトレンド
近年、札幌・仙台・広島・岡山といった地方中核都市でも1億円を超える新築マンションの供給が加速しており、「ローカル億ション」という言葉が生まれています。大分もこの流れの中にあります。
大分市のマンション価格は、9年前と比較して41.3%上昇しています。特にJR大分駅から徒歩10分以内の新築分譲マンションに限ると、平均坪単価は約10年間で163.8%も上昇しました。駅前エリアでの価格上昇は全国的なトレンドですが、大分でも顕著に表れています。
背景にはDINKs層やリモートワーカーなど、都市部に縛られないライフスタイルを選ぶ新たな購買層の存在もあります。地方の利便性の高い立地に、都市部と同等のクオリティを求める需要が高額化を後押ししています。
注意点・展望
購買層の限界と販売リスク
地方都市の高額マンションには、購買層の限界というリスクが伴います。都心部に比べて集客範囲が狭いため、地元で購入できる層が絶対的に不足する可能性があります。全国的にもタワーマンションの売れ行きが鈍化し始めているとの指摘もあり、今後の販売動向は注視が必要です。
一方で、プレミストタワー大分は駅徒歩2分という立地の希少性に加え、50平方メートル・4,500万円からという手頃な住戸も含む幅広い価格帯を設定しています。県内初の制振構造タワーマンションという付加価値もあり、差別化を図っています。
2026年の不動産市場の見通し
不動産経済研究所によると、2026年のマンション発売戸数は前年比4.7%増の2万3,000戸が見込まれています。建設費や人件費が高止まりしているため、価格が下落に転じる可能性は当面低いとみられます。「卒・タワマン所有主義」という言葉も登場し、高騰したタワマンを売却して利益確定する動きも出始めていますが、新規供給の高価格化は続く見通しです。
まとめ
大分県初の「2億ション」となるプレミストタワー大分は、地方都市における不動産市場の構造変化を象徴する物件です。建設コストの上昇、駅前再開発による立地価値の向上、新たな購買層の出現が重なり、かつては考えられなかった価格帯のマンションが地方にも登場しています。
マンション購入を検討している方は、2月下旬の販売開始に向けて、モデルルームでの情報収集をおすすめします。また、不動産投資の観点からも、大分駅前再開発エリアの今後の発展性には注目の価値があります。地方の不動産市場がどこまで高額化するのか、プレミストタワー大分の販売動向は一つの試金石となるでしょう。
参考資料:
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