楽天銀行が住宅ローン変動金利を引き上げ、家計への影響は
はじめに
楽天銀行は2026年1月15日、2月に適用する変動型住宅ローンの基準金利を1月に比べ0.11%引き上げ、1.907%にすると発表しました。これは2025年12月に日本銀行が政策金利を0.75%に引き上げたことを受けた措置です。
住宅ローン借り入れの約84%が変動型を選択している現状において、この金利引き上げは多くの家計に影響を与える可能性があります。本記事では、今回の金利引き上げの背景、家計への具体的な影響、そして今後の金利動向と対策について詳しく解説します。
日銀利上げと住宅ローン金利の関係
30年ぶりの金利水準へ
日本銀行は2025年12月18〜19日に開催した金融政策決定会合において、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%程度から0.75%程度へ引き上げることを決定しました。日銀の利上げは同年1月以来、約1年ぶりとなります。
0.5%を上回る政策金利水準は1995年以来、約30年ぶりの水準です。日銀は声明文で「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と、追加利上げの継続方針を示しています。
利上げの背景
日銀が利上げに踏み切った背景には複数の要因があります。第一に、2026年の春闘でも堅調な賃上げの動きが続くとみられること。第二に、2025年度補正予算が成立し、景気対策が具体化したこと。そして第三に、為替市場において円安圧力が続いていることが挙げられます。
特に為替については、円安による輸入物価の上昇圧力が進んでいることへの対応として、日銀は利上げを通じて円安を抑制しようとしています。
楽天銀行の金利引き上げの詳細
TIBORに連動する金利体系
楽天銀行は住宅ローン金利の指標として東京銀行間取引金利(TIBOR)を採用しています。TIBORとは、金融機関同士による短期資金のやり取りを反映した金利指標で、全銀協TIBOR運営機関が選定した複数の金融機関からレートの呈示を受けて算出されます。
TIBORの1カ月物金利は2026年1月14日時点で0.86%と、日銀の利上げ発表があった2025年12月19日に比べて0.02%上昇し、17年ぶりの水準をつけました。この指標金利の上昇が、楽天銀行の住宅ローン金利引き上げにつながっています。
ネット銀行特有の金利体系
大手ネット銀行5社の中で、変動金利を短期プライムレート(短プラ)に連動させているのは住信SBIネット銀行のみです。PayPay銀行、ソニー銀行、楽天銀行、auじぶん銀行などは、TIBORなど実質的に短期金利の動向に大きな影響を受ける体系を採用しています。
TIBORに連動している楽天銀行の金利は頻繁に動きやすいという特徴があります。他の金融機関では毎月のように金利が変更されるパターンは少ないため、楽天銀行の借り手は金利変動に敏感になる必要があります。
家計への具体的な影響
返済額の増加シミュレーション
楽天銀行の試算によると、1億円の借入額で35年の元利均等返済の場合、基準金利が0.11%引き上がると毎月の返済額は約5,000円上昇し、返済総額は約230万円増加します。
より一般的な借入金額でも影響は避けられません。借入金額3,000万円〜7,000万円のレンジでは、0.15%の金利上昇により毎月の返済額が2,000円〜4,000円程度増加する計算になります。仮に適用金利が1%上がると、毎月の返済額は約1.4万円、35年間の総返済額は約587万円増加するとの試算もあります。
長期的な負担増の懸念
変動金利型住宅ローンの多くには「5年ルール」と「125%ルール」という激変緩和措置が設けられています。5年ルールとは金利が上昇しても5年間は毎月の返済額が変わらない仕組みで、125%ルールは6年目以降に返済額が見直される際に上がり幅が125%までに制限されるものです。
ただし、これらのルールは毎月の返済額を一定に抑える一方で、支払利息の割合が増えて元金の返済が遅れ、結果として総返済額が増えてしまうリスクがあります。すべての金融機関でこれらのルールが採用されているわけではないため、事前確認が重要です。
他の金融機関の動向
大手銀行も追随
楽天銀行だけでなく、大手銀行も住宅ローン金利の引き上げを予定しています。三菱UFJ銀行は短期プライムレート(短プラ)を2026年2月2日に0.25%高い2.125%に引き上げ、3月1日に新規の変動金利の基準金利を見直す方針です。
三井住友銀行やみずほ銀行など他の大手行も短プラの引き上げを発表しており、春ごろに変動型の基準金利を引き上げる可能性があります。ネット銀行ではPayPay銀行なども春ごろの引き上げを検討しています。
市場全体への波及
多くの金融機関では2026年4月に基準金利の見直しがあり、実際の毎月返済額は7月分から増えることになります。住宅ローン借り入れの84%が変動型を選択している現状を考えると、この波及効果は非常に大きなものとなります。
住宅金融支援機構の調査では、変動金利型住宅ローン利用者の約65%が「借入金利の上昇」に対し不安を感じていることがわかっています。
今後の金利見通し
追加利上げの継続予想
市場では日銀による継続的な利上げ観測から、2026年9月会合までに0.25%の追加利上げが実施され、政策金利が中立金利の下限とされる1.0%に到達するシナリオが織り込まれています。
専門家の予想では、今後も年2回のペースで利上げが続き、政策金利は2026年度に1.25%、2027年度には1.5%くらいになるとみられています。日銀の推計によれば中立金利は1.0%〜2.5%の間にあると考えられており、現在の政策スタンスは依然として金融緩和的です。
長期金利の上昇
日本の国債市場では、日銀の利上げ継続を織り込み金利が上昇しています。10年国債利回りは2025年12月19日の取引時間中に一時2%台をつけ、約19年半ぶりの高水準まで上昇しました。これは固定金利型住宅ローンにも影響を与える動きです。
注意点・家計防衛策
キャッシュフロー表の作成
金利上昇に備えるには、キャッシュフロー表を作成して将来の収支を予測することが有効です。キャッシュフロー表とは、収入と支出と貯蓄額を時系列で年表にしたものです。変動金利で借りている場合、金利が上がった際にどれだけ収支が悪化するかを事前に確認できます。
今後10年以内に教育費の増加など家計の負担が膨らむことが予想されるなら、その期間は金利変動リスクを避けられる固定金利タイプへの切り替えを検討する価値があります。
借り換えの検討と注意点
固定金利への切り替えや繰り上げ返済、借入金額の調整などの対策を早めに講じることで、将来的な不安を軽減できます。ただし、借り換えには諸費用がかかる点に注意が必要です。
借り換え諸費用には金融機関に支払う保証料や事務手数料、司法書士報酬などが含まれ、合計すると30万円〜100万円ほどの出費になります。金利差による節約効果と諸費用を比較し、慎重に判断することが求められます。
まとめ
楽天銀行の住宅ローン金利引き上げは、日銀の金融政策正常化の流れを反映したものであり、今後も他の金融機関への波及が予想されます。変動金利型住宅ローンの借り手にとっては、返済負担増加への備えが急務となっています。
短期的には激変緩和措置によって急激な負担増は避けられますが、長期的には総返済額の増加という形で影響が現れます。キャッシュフロー表の作成や、固定金利への切り替え検討など、早めの対策が家計防衛の鍵となります。
金利動向は経済環境や日銀の政策判断によって変化するため、定期的な情報収集を心がけ、必要に応じて専門家への相談も検討してください。
参考資料:
関連記事
住宅ローン・マンション価格2026年見通し、金利上昇の影響は
日銀利上げで住宅ローン金利上昇が見込まれる2026年。変動金利への影響時期、マンション価格の動向、住宅購入の判断ポイントを専門家の見解とともに解説します。
長期金利が27年ぶり高水準に上昇した背景と影響
日本の長期金利が2.18%台に達し、1999年以来の高水準を記録。財政懸念や日銀の利上げ継続方針が背景にあり、住宅ローンや企業投資への影響が広がっています。
フラット35が初の2%超え、住宅ローン金利上昇の影響と対策
2026年1月、フラット35の金利が2.08%となり現行制度で初めて2%を超えました。日銀の利上げが続く中、住宅購入者の返済負担増加と今後の金利動向について詳しく解説します。
日銀利上げで住宅ローン金利上昇、2026年4月から返済増へ
日銀が政策金利を0.75%に引き上げ。変動金利は2026年4月から上昇、返済額増加は7月頃に。住宅ローンへの影響と今後の金利見通しを解説します。
日銀1月会合は据え置き濃厚、成長率見通し上方修正で利上げ継続に布石
日銀は1月22〜23日の会合で政策金利0.75%を維持する見通し。政府の経済対策を反映し2026年度の成長率見通しを引き上げ、段階的利上げ継続への道筋を示します。
最新ニュース
麻生副総裁「解散は首相の専権、議席増に全力」
訪韓中の麻生氏が衆院解散を巡り発言。「脇役が言う話ではない」と首相を支持しつつ、事前相談なしへの不満も滲む。
日銀1月会合は据え置き濃厚、成長率見通し上方修正で利上げ継続に布石
日銀は1月22〜23日の会合で政策金利0.75%を維持する見通し。政府の経済対策を反映し2026年度の成長率見通しを引き上げ、段階的利上げ継続への道筋を示します。
立憲民主・公明が新党「中道改革連合」結成へ
2026年1月、立憲民主党と公明党が高市政権に対抗する新党を結成。食品消費税ゼロを掲げ衆院選に挑む。国民民主は参加せず独自路線を選択。
新党「中道改革連合」、反高市路線で政権に対抗
立憲・公明が新党結成。積極財政修正、集団的自衛権全面容認反対など、高市政権との対立軸を鮮明に。家計分配重視にリスクも。
建設業界7割が大型工事受注できず、人手不足が経済成長の足かせに
2026年度に大手・中堅建設会社の約7割が大型工事を新規受注できない見通し。深刻な人手不足が受注余力を制約し、民間設備投資と公共投資に影響を及ぼす現状を解説します。