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by nicoxz

ロシアがグリーンランド問題を歓迎する理由とNATOへの影響

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はじめに

2026年1月、トランプ米大統領がデンマーク自治領グリーンランドの取得に改めて強い意欲を示したことで、欧米間に深刻な亀裂が生じています。この事態を最も歓迎しているのがロシアです。クレムリンのペスコフ報道官は「グリーンランドを取得すればトランプ氏は世界史に名を刻む」と発言し、NATO同盟国間の対立を煽る姿勢を見せています。

本記事では、ロシアがなぜこの問題を歓迎しているのか、北極圏の地政学的重要性、そして今後のNATOへの影響について解説します。

ロシアの反応と戦略的思惑

クレムリンの公式見解

ペスコフ大統領報道官は、トランプ氏のグリーンランド取得の動きについて「国際法の観点から見て異例、いや非常に特異な状況だ」と述べています。表向きは中立的な姿勢を示しつつも、その発言には欧米対立を歓迎する意図が透けて見えます。

ペスコフ氏はさらに「グリーンランド問題を解決することでトランプ氏が歴史に名を刻むと考える国際専門家の見解には同意せざるを得ない」と発言しました。これは直接的な支持表明を避けながらも、トランプ氏の行動を暗に後押しする巧妙な外交的コメントです。

メドベージェフ前大統領の挑発的投稿

ロシアのメドベージェフ前大統領はSNSで、トランプ氏のグリーンランド発言を揶揄する投稿を行いました。「MAGA(Make America Great Again)」をもじって「MDSA(Make Denmark Small Again)」「MEPA(Make Europe Poor Again)」と表現し、欧州の弱体化を皮肉っています。

また、プーチン大統領の特使であるキリル・ドミトリエフ氏は「大西洋横断同盟の崩壊」を歓迎する発言を行い、ダボス会議で議論する価値のある話題ができたと述べました。

ロシアの二重戦略

ロシアは巧妙な二重戦略を展開しています。表向きはトランプ氏の破壊的な行動を奨励してNATOの分断を図りつつ、裏では大国による領土の強制的な併合という前例に対する懸念も抱えています。

これはロシア自身がクリミア併合やウクライナ侵攻で国際社会から批判を受けてきた経緯があるためです。米国が同盟国の領土を力で奪う前例ができれば、ロシアの行動を正当化する論拠にもなり得る一方、「ルールに基づく国際秩序」という自らの主張との矛盾も生じます。

グリーンランドの戦略的重要性

北極圏における地政学的価値

グリーンランドは人口約5万6000人の世界最大の島で、面積は日本の約5.7倍に相当します。北極海と北大西洋の間に位置し、ミサイル攻撃の早期警戒システムや船舶監視の拠点として極めて重要な戦略的価値を持っています。

米国は冷戦期からグリーンランドをロシア抑止の前線拠点として位置付けてきました。島西端のピトゥフィク宇宙基地は、ロシア本土と北米大陸を最短距離で結ぶ極軌道上にあり、弾道ミサイルへの早期警戒機能を担っています。

豊富な地下資源

グリーンランドには未開発の豊富な地下資源が眠っています。レアアース(希土類)、ウラン、石油、天然ガスなどが埋蔵されており、気候変動による氷床の融解で採掘が容易になりつつあります。これらの資源は、半導体や電気自動車のバッテリーなど先端技術に不可欠であり、資源争奪戦の観点からも注目を集めています。

北極海航路の要衝

地球温暖化により北極海の氷が減少し、北極海航路の商業利用が現実味を帯びてきました。グリーンランドはこの航路の要衝に位置しており、海運における戦略的重要性も増しています。中国が「極地強国」を目指して北極圏への関与を強めているのも、この文脈で理解できます。

NATOへの深刻な影響

欧州諸国の強い反発

トランプ大統領の発言に対し、欧州諸国は強く反発しています。デンマークのフレデリクセン首相は「もし米国がNATO加盟国への軍事攻撃を選択すれば、NATOを含め第2次大戦後に築かれた安全保障のすべてが停止する」と警告しました。

2026年1月6日には、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、英国、デンマークの首脳が共同声明を発表。北極圏の安定と安全保障がNATOの優先事項であることを明確にし、グリーンランドの地位はデンマークとグリーンランドのみが決定できるものだと米国を牽制しました。

トランプ氏の関税による圧力

トランプ大統領はグリーンランド問題への姿勢を理由に、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、英国、オランダ、フィンランドの8カ国に対して関税を課すと発表しました。2月1日から10%、6月1日からは25%に引き上げる方針です。

この関税措置はNATO同盟国に対する経済的圧力であり、第2次世界大戦後の国際秩序において前例のない行動です。同盟国間の信頼関係を根底から揺るがす事態となっています。

欧州の軍事的対応

事態の深刻さを受け、NATO加盟国はデンマーク主導の「オペレーション・アークティック・エンデュランス」としてグリーンランドに軍を派遣し、北極圏での合同軍事演習を実施しています。これは米国への牽制であると同時に、欧州がグリーンランドの防衛に関与する意思を示すものです。

注意点・今後の展望

ロシア・中国の脅威は誇張されている可能性

トランプ大統領は「米国が行動しなければロシアと中国によってグリーンランドが支配される」と主張しています。しかし、フィナンシャル・タイムズによると、北欧の高位外交官は「ここ数年、グリーンランド近海でロシアや中国の船舶や潜水艦などが積極的に活動しているとの証拠はない」と述べています。

中ロ両国はグリーンランドに対する領有権も主張しておらず、トランプ氏の主張の根拠は薄弱だとされています。グリーンランド取得の真の動機は、地下資源の確保や北極圏での優位性確立にあると見られています。

今後のシナリオ

今後の展開としては、以下のシナリオが考えられます。まず、デンマークとグリーンランドが米国の圧力に屈することは考えにくく、交渉は長期化する可能性があります。また、欧州諸国は米国依存からの脱却を加速させ、独自の防衛力強化に動く可能性があります。

一方、トランプ氏が関税を実際に発動すれば、世界経済への影響も避けられません。NATOの結束が揺らげば、最も利益を得るのはロシアと中国です。

まとめ

トランプ大統領のグリーンランド取得発言は、NATO同盟国間に深刻な亀裂を生じさせています。ロシアはこの状況を歓迎し、西側陣営の分断を煽る戦略を取っています。グリーンランドは北極圏の戦略的要衝であり、豊富な地下資源を持つため、大国間の関心が集中しています。

今後、欧米関係がどのように推移するかは不透明ですが、NATOの結束が問われる重大な局面であることは間違いありません。日本を含むアジア太平洋諸国にとっても、この事態の行方は国際秩序の将来を占う上で重要な意味を持っています。

参考資料:

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