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by nicoxz

トランプ氏、グリーンランド関税を撤回。NATOと枠組み合意

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はじめに

トランプ米大統領は2026年1月21日、デンマーク自治領グリーンランドの取得を巡り、欧州8カ国に課すとしていた追加関税を見送ると発表しました。スイス・ダボスで開催中の世界経済フォーラム年次総会の場で、NATOのマルク・ルッテ事務総長と会談した後の決定です。

トランプ氏は「グリーンランドと北極圏全体に関する将来の合意の枠組みを構築した」と述べましたが、その詳細は明らかにしていません。1週間前の関税発表から一転しての撤回は、市場に安堵感をもたらす一方、「取引(ディール)外交」の予測困難さを改めて印象付けました。本記事では、今回の合意の背景と意味を解説します。

グリーンランド関税問題の経緯

トランプ氏の野望

トランプ大統領は、就任直後からデンマーク自治領グリーンランドの取得に強い意欲を示してきました。北極圏に位置するグリーンランドは、戦略的に重要な地理的位置と、レアアースを含む豊富な鉱物資源を有しています。

トランプ氏は「アメリカ以外のいかなる国家や国家グループもグリーンランドの安全を確保できる立場にない」と主張し、領有権の取得を目指す姿勢を明確にしていました。

欧州8カ国への関税発表

2026年1月17日、トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、イギリス、オランダ、フィンランドの8カ国に対し、2月1日から「あらゆる製品」に10%の追加関税を課すと発表しました。

この関税は6月1日から25%に引き上げられ、「グリーンランドの完全取得に関する合意が成立するまで継続する」とされていました。

EUの報復措置の準備

この発表を受け、欧州連合(EU)は930億ユーロ(約17兆円)相当の米国製品に報復関税を課す可能性を協議しました。2025年の関税脅威の際にすでに準備されていた「貿易バズーカ」と呼ばれる対抗措置のリストが再び検討対象となりました。

対象となった8カ国は1月18日に共同声明を発表し、追加関税は「欧米関係を棄損するもの」と批判。北極圏での軍事要員派遣は事前に調整された安全保障強化策であり、いかなる国にも脅威とはならないと反論しました。

NATOとの「枠組み合意」の内容

ダボスでの会談

トランプ大統領は1月21日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)出席のためスイスを訪問中、NATOのマルク・ルッテ事務総長と会談しました。

会談後、トランプ氏は「非常に生産的な会談を行い、グリーンランド、そして北極圏全体に関する将来の合意の枠組みを構築した」と発表。「この理解に基づき、2月1日に発効予定だった関税を課すことはしない」と述べました。

合意の詳細

NATO報道官のアリソン・ハート氏は、会談は「非常に生産的」であり、「北極圏の安全保障が米国を含む全ての同盟国にとって重要であること」を議論したと説明しました。

ハート氏によると、同盟国間での枠組みに関する議論は「特に7つの北極圏同盟国を中心とした集団的努力を通じて北極圏の安全保障を確保すること」に焦点を当てるとしています。

また、デンマーク、グリーンランド、米国の間で交渉が進められ、「ロシアと中国がグリーンランドに経済的または軍事的な足場を築くことがないようにする」ことを目指すとされています。

トランプ氏の説明

CNBCのインタビューでトランプ氏は、この枠組みを「ディールの概念(concept of a deal)」と表現しました。具体的な内容については「少し複雑なので、後ほど説明する」と述べるにとどめています。

CNNに対しては「我々は望んでいたものをすべて得た」「究極の長期的なディール」であり「安全保障、鉱物、その他すべての面で、全員を良い立場に置くもの」と説明しました。

各国の反応

デンマークの歓迎

デンマークのラース・ロッケ・ラスムセン外相は「一日の終わりは始まりよりも良い形で迎えられた」と述べ、歓迎の意を表明しました。

「トランプ大統領がグリーンランドを武力で取得することを除外し、欧州との貿易戦争を一時停止したことを歓迎する」とした上で、「北極圏における米国の安全保障上の懸念にどう対処できるか、デンマーク王国のレッドラインを尊重しながら話し合おう」と対話を呼びかけました。

なお、デンマークは1月19日までに880億クローネ(約137億ドル)以上を「北極圏の防衛と安全保障強化」に充てることを約束し、200人の追加兵士をグリーンランドに派遣しています。

欧州の慎重な反応

一方で、早計な楽観を戒める声もあります。ドイツのラルス・クリングバイル財務相は「対話に関与していることは良いことだ」と述べつつ、慎重な姿勢を示しました。

トランプ氏は軍事力の行使は「排除しない」としていた発言を撤回し、武力による取得を否定しましたが、グリーンランド取得への野望自体を放棄したわけではありません。

注意点・今後の展望

「枠組み合意」の不透明さ

今回発表された「枠組み合意」の具体的な内容は依然として不明確です。トランプ氏は「ゴールデン・ドーム計画に関連した軍事協力」や「グリーンランド、米国、欧州同盟国間の鉱物開発における協力」に言及していますが、詳細な条件は明らかにされていません。

この曖昧さは、今後の交渉で再び緊張が高まる可能性を残しています。

関税の再発動リスク

関税は「見送り」であり「撤回」ではない点に注意が必要です。交渉が行き詰まった場合、トランプ氏が再び関税カードを持ち出す可能性は排除できません。

北極圏の地政学的重要性

今回の一件は、北極圏が新たな地政学的競争の舞台となっていることを浮き彫りにしました。気候変動による海氷の減少で北極海航路の利用可能性が高まり、豊富な資源へのアクセスも容易になりつつあります。

ロシアと中国がこの地域での存在感を高める中、米国やNATOの北極戦略がどう展開するかは、今後の国際秩序を左右する重要な要素となります。

まとめ

トランプ大統領によるグリーンランド関税の見送りは、欧米間の緊張を一時的に緩和しました。NATOとの「枠組み合意」により、北極圏の安全保障に関する協議が進む見通しです。

しかし、合意の詳細は不透明であり、グリーンランド問題が根本的に解決されたわけではありません。トランプ氏の「取引外交」は予測困難であり、今後も関税や圧力が再び持ち出される可能性があります。欧州各国とNATOが、米国との対話を維持しながらどう対応していくか、引き続き注目が必要です。

参考資料:

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