79歳の堺正章、多才な「巨匠」が貫く「胃袋から心をつかむ」流儀
はじめに
「いただきました!星3つです!」――このフレーズを耳にすれば、多くの人が堺正章(79歳)の笑顔を思い浮かべるでしょう。TBS系で約22年にわたり司会を務めた料理バラエティー番組『チューボーですよ!』での名セリフは、日本のテレビ史に刻まれました。ドラマで料理人を演じ、実際にホテルオークラで3ヶ月間修業した経験を持つ堺さんは、「食」にまつわる仕事を数多くこなしてきました。最近も「人の心をつかむにはまず胃袋から」を実感する出会いがあったと語ります。役者でコメディアンだった堺駿二さんの次男として生まれ、芸歴74年を誇る「巨匠」の多才な人生を振り返ります。
幼少期の豪邸エピソード
4000坪の鎌倉邸宅
堺正章は1946年6月6日、東京都中野区で堺駿二の次男として生まれました。父・堺駿二は人気コメディアンであり、1950年代中頃には年間約20本の映画に出演する売れっ子俳優でした。その成功により、堺家は神奈川県鎌倉市に敷地4000坪(約13,200平方メートル)の豪邸を構えました。
当時、この広大な邸宅には家族のほか、お手伝いや父の弟子など約12人が暮らし、10匹の犬を飼っていました。幼少期の堺さんは、まさに芸能一家の御曹司として育ったのです。
ローラースケート場が庭に
幼い堺さんがローラースケート場に行きたいと言った際、父が「不良がいるから」と禁じました。すると間もなく、なんと邸宅の庭にローラースケート場が作られたのです。このエピソードは、堺家の裕福ぶりと父の寛大さを物語っています。
この恵まれた環境で育った堺さんですが、芸能界での成功は決して家柄だけによるものではありませんでした。5歳の時に父に連れられて撮影所に行ったことをきっかけに子役としてデビューし、早くから芸能界の厳しさと楽しさを肌で感じていました。
ザ・スパイダース時代
16歳でバンド加入
1962年、鎌倉学園在学中で16歳だった堺さんは、田辺昭知率いる音楽バンド「ザ・スパイダース」に加入しました。その後加入した井上順とともにボーカルを担当し、グループサウンズ時代の人気バンドとして活躍します。
『夕陽が泣いている』『バン・バン・バン』『あの時君は若かった』などがヒットし、若者たちの圧倒的な支持を得ました。堺さんと井上順が競って笑いに走るようになり、音楽バンドからコメディ要素を含むエンターテインメント集団へと変化していきました。
1970年の解散と新たな道
1970年、ザ・スパイダースは解散します。堺さんは解散後、ソロ歌手として『街の灯り』や『タイガー&ドラゴン』などの代表曲を発表し、歌手活動を続けました。同時に、俳優、司会者、コメディアンとして多方面で活動を展開し、「マチャアキ」の愛称で親しまれるようになります。
料理人役への挑戦
『天皇の料理番』で3ヶ月修業
1980年、堺さんは人生を変える大役に挑みます。TBS系ドラマ『天皇の料理番』で主人公の料理人・秋山篤蔵役を演じたのです。このドラマは宮内省の主厨長を務めた実在の人物、秋山徳蔵の青年期から主厨長になるまでを描いた伝記ドラマでした。
少年時代に食べたカツレツの味が忘れられず西洋料理に憧れて上京した主人公が、料理人見習いから海外留学を経て、皇室の食卓を預かる主厨長になるまでの波乱万丈を描く物語です。
堺さんは役作りのため、なんとホテルオークラ東京の厨房で約3ヶ月間、料理の修業を行いました。この経験が、後の料理番組司会への自信につながります。
共演者との思い出
ドラマには檀ふみ、近藤正臣、財津一郎、鹿賀丈史、山口いづみ、平幹二朗、柳生博、明石家さんま、田中裕子など豪華キャストが出演し、渥美清がナレーションを務めました。全19話にわたる力作は、1980年10月19日から1981年3月22日まで放送され、好評を博しました。
この役を通じて、堺さんは「料理は人の心をつかむ」という信念を深めていきます。
『チューボーですよ!』22年の軌跡
1994年から2016年まで
1994年4月9日、TBS系でスタートした『チューボーですよ!』は、堺さんにとって代表的な番組となりました。毎週土曜日の深夜23時30分から24時00分に放送され、通算22年9ヶ月・通算放送回数1087回という長寿番組となります。
堺さんは番組内で「巨匠」と呼ばれ、「オーナーシェフ」として進行役のアシスタントやゲストとのトークを交えながら料理を作りました。30分間という限られた時間の中で、料理の楽しさと堺さんの人柄が存分に発揮される内容でした。
「星3つです!」の名フレーズ
完成した料理を試食した後の「いただきました!星3つです!」という決めゼリフは、視聴者に愛され、堺さんの代名詞となりました。このフレーズは単なる評価ではなく、料理への敬意とゲストへの温かいもてなしを表現していました。
2013年には『新チューボーですよ!』としてリニューアルされましたが、堺さんの明るい司会と料理と笑いの融合は変わらず、土曜の夜を彩り続けました。
2016年の最終回
2016年12月24日、番組は最終回を迎えました。ゲストには初代アシスタントで当時『NEWS23』のキャスターを務めていた雨宮塔子と、堺さんの自宅に遊びに行くほどプライベートでも親交のある俳優・唐沢寿明が出演しました。
最終回でも「星3つ!」のフレーズで締めくくり、堺さんは「ステキな番組だった」と振り返りました。22年間で培われた料理番組のノウハウと人脈は、その後の堺さんの活動にも大きな影響を与えています。
79歳の現在も現役
NHK『SONGS』に初登場
2026年、79歳となった堺さんはNHK総合の音楽番組『SONGS』に初登場しました。これは番組歴代最高齢の出演となり、芸歴74年の軌跡を辿る特集が組まれました。
番組ではザ・スパイダースのヒット曲『バン・バン・バン』『夕陽が泣いている』『あの時君は若かった』をメドレーアレンジで披露し、ソロ歌手としての代表曲『街の灯り』や『タイガー&ドラゴン』も歌いました。79歳とは思えない歌声とパフォーマンスに、視聴者からは驚きと称賛の声が上がりました。
多彩な出演番組
2026年1月16日には日本テレビ『世界一受けたい授業』に校長先生として出演し、2025年1月12日には『ニノさんとあそぼ』にスペシャルゲストとして登場しています。2025年12月31日にはNHK『第76回NHK紅白歌合戦』に出演し、12月30日にはTBS『第67回 輝く!日本レコード大賞』に出演するなど、精力的に活動を続けています。
さらに、2026年5月23日には『ながおか 米百俵フェス 〜花火と食と音楽と〜 2026』への出演が決定しており、今後もスケジュールは満載です。
ダンディズムと親しみやすさ
2025年のインタビューでは、芸能界屈指のおしゃれ男として知られる堺さんが「たまに『GU』を着たりする」と語り、高級ブランドに偏らない柔軟なファッション感覚を披露しました。78歳(当時)のダンディズムと親しみやすさの両立が、幅広い年齢層からの支持につながっています。
「胃袋から心をつかむ」哲学
料理を通じた人間関係
堺さんは最近のインタビューで、「人の心をつかむにはまず胃袋から」という持論を改めて実感する出会いがあったと語っています。『天皇の料理番』での役作り、『チューボーですよ!』での22年間の経験を通じて培われたこの哲学は、芸能活動全般に通じるものです。
料理は単なる食事ではなく、人と人をつなぐコミュニケーションツールであり、信頼関係を築く手段だと堺さんは考えています。ゲストとのトークでも、料理を作る過程を共有することで、自然と打ち解けた雰囲気が生まれました。
多才さの源泉
歌手、俳優、司会者、コメディアンと多方面で活躍してきた堺さんの多才さは、どこから来るのでしょうか。それは芸能一家に生まれ、5歳から芸能界に身を置いてきた経験と、常に新しいことに挑戦し続ける姿勢にあります。
『天皇の料理番』のために3ヶ月間厨房で修業したエピソードは、役に対する真摯な姿勢を示しています。ただ演じるのではなく、その世界を深く理解しようとする探究心が、堺さんの演技やトークに深みを与えています。
まとめ
堺正章は79歳の現在も、歌手、俳優、司会者として第一線で活躍し続ける国民的エンターテイナーです。「いただきました!星3つです!」のフレーズで知られる『チューボーですよ!』は約22年にわたり放送され、料理を通じた人間関係の構築という堺さんの哲学が体現されました。
役者でコメディアンだった父・堺駿二の次男として鎌倉の4000坪の豪邸で育ち、16歳でザ・スパイダースに加入。1970年の解散後はソロ歌手、俳優、コメディアンとして多方面で才能を発揮してきました。1980年のドラマ『天皇の料理番』では、ホテルオークラで3ヶ月間修業するという役作りに取り組み、料理人役を熱演しました。
2026年も『SONGS』への初出演や各種イベント出演など、精力的に活動を続けています。芸歴74年を誇る「巨匠」は、「人の心をつかむにはまず胃袋から」という哲学を貫き、多才な才能で視聴者を楽しませ続けています。
年齢を感じさせないパフォーマンスと親しみやすい人柄は、今後も多くのファンを魅了し続けるでしょう。堺正章という稀代のエンターテイナーの活躍に、これからも注目が集まります。
参考資料:
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