S&P500連動投信が残高10兆円突破、新NISAが変えた日本人の資産形成

by nicoxz

はじめに

2026年1月7日、米国S&P500指数に連動する投資信託の運用残高が、公募投信として国内で初めて10兆円の大台に乗せました。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の残高が10兆169億円に達したのです。

この歴史的な節目の背景には、2024年に始まった新NISA(少額投資非課税制度)の存在があります。物価高が定着し将来への不安が募る中、低コストのインデックスファンドに資金が流入し、「貯蓄から投資」の波が日本社会に広がっています。

本記事では、S&P500連動投信がなぜこれほど人気を集めているのか、その仕組みと投資する際の注意点について解説します。

残高10兆円達成の意味

公募投信として国内初の快挙

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)が達成した残高10兆円は、日本の投資信託史上において画期的な数字です。三菱UFJアセットマネジメントが運用するこのファンドは、S&P500指数への連動を目指す超低コストのインデックスファンドとして、個人投資家から圧倒的な支持を集めてきました。

10兆円という規模は、日本の上場企業と比較しても非常に大きな金額です。多くの個人投資家が少額ずつ積み立てた結果が、この巨額の残高として結実しています。

新NISAが起爆剤に

残高急拡大の最大の要因は、2024年1月にスタートした新NISA制度です。非課税枠が大幅に拡大され、つみたて投資枠と成長投資枠の両方でS&P500連動ファンドを購入できるようになりました。

新NISAでは、運用益にかかる約20%の税金が非課税となります。長期投資においてこの恩恵は非常に大きく、例えば10年後に100万円の利益が出た場合、通常なら約20万円の税金がかかりますが、NISA口座なら全額が手元に残ります。

S&P500が人気を集める理由

米国経済の成長力

S&P500は、米国の代表的な上場企業約500社で構成される株価指数です。アップル、マイクロソフト、アマゾン、グーグル(アルファベット)、エヌビディアなど、世界をリードするテクノロジー企業が多数含まれています。

米国のGDPは世界全体の約4分の1を占めており、世界経済に与える影響力は圧倒的です。米国経済の成長に丸ごと投資できるS&P500は、世界経済の先行指標としても重視されています。

長期的な実績

S&P500の魅力は、その長期的な上昇実績にあります。短期的には下落する局面もありますが、10年、20年という長期で見ると、一貫して右肩上がりの成長を続けてきました。

「投資の神様」として知られるウォーレン・バフェット氏も、自身の妻への資産運用アドバイスとして「90%を低コストのS&P500インデックスに投資し、10%を米国短期国債に投資するように」と推奨しています。バフェット氏は2017年、10年間の運用成績でヘッジファンドよりもS&P500インデックスファンドの方が優れていたことを株主への手紙で報告しました。

圧倒的な低コスト

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の信託報酬は年率0.09372%と、業界最安クラスの水準です。投資信託のコストは長期運用では大きな差を生むため、この低コストは個人投資家にとって大きな魅力となっています。

投資信託業界では信託報酬の引き下げ競争が激化しており、結果として投資家にとってより有利な環境が整ってきています。

インデックス投資のメリット

手間がかからない

投資信託の大きな魅力は、専門家が運用を代行してくれる点です。投資家自身が個別銘柄を選んだり、売買タイミングを判断したりする必要がありません。

積立設定をしておけば、毎月自動的に買付が行われ、配当金も自動的に再投資されます。日々の株価をチェックする必要もなく、「ほったらかし」で運用できるのが投資信託の魅力です。

分散投資が自動的に実現

S&P500に連動するファンドを1本購入するだけで、米国を代表する約500社に分散投資できます。個別株投資では難しい分散効果が、少額から実現できるのです。

最低100円から購入できるため、投資初心者でも始めやすい点も人気の理由です。

長期投資でリスクが低減

長期運用を行うことで、短期的な価格変動のリスクを抑えた投資が可能になります。過去のデータでは、10年以上の長期投資では損失リスクが大幅に低下する傾向が確認されています。

また、運用期間が長くなるほど複利効果を活かした運用が可能となり、資産を雪だるま式に増やすことが期待できます。

知っておくべき注意点

「S&P500だけでいい」のリスク

S&P500への集中投資には、いくつかの注意点があります。

為替リスク: S&P500は米ドル建ての指数です。円安局面では円換算の評価額が上昇しますが、円高局面では逆に評価額が目減りします。

米国一国集中リスク: 米国経済が低迷した場合、資産全体が影響を受けます。全世界株式に分散投資するファンド(オール・カントリーなど)と組み合わせることで、リスク分散を図る選択肢もあります。

過去の実績は将来を保証しない: S&P500の過去の好成績が、将来も続くとは限りません。投資には常にリスクが伴います。

他の選択肢との比較

2025年の運用成績を振り返ると、金(ゴールド)ファンドやAI関連株式ファンド、国内株式ファンド、新興国株式ファンドなどが、S&P500やオール・カントリーを上回るパフォーマンスを記録した局面もありました。

S&P500は優れた選択肢の一つですが、唯一の正解ではありません。自身のリスク許容度や投資目的に応じて、適切なポートフォリオを検討することが重要です。

今後の展望

「貯蓄から投資」の加速

残高10兆円突破は、日本人の資産形成に対する意識が大きく変化していることの象徴です。長らく「貯蓄大国」と呼ばれてきた日本ですが、低金利環境と物価上昇を背景に、投資への関心が高まっています。

新NISA制度の普及により、投資を始める心理的ハードルは大きく下がりました。「長期・積立・分散」という投資の王道が、一般の人々にも浸透しつつあります。

さらなる残高拡大の可能性

新NISAの非課税枠は年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)と拡大されており、今後も資金流入が続く可能性があります。10兆円は通過点であり、さらなる残高拡大も十分に考えられます。

ただし、投資信託の残高が大きくなれば市場への影響力も増すため、急激な資金の流出入が市場を不安定化させるリスクも意識する必要があります。

まとめ

S&P500連動投信の残高10兆円突破は、日本の個人投資家にとって歴史的な節目となりました。新NISA制度の普及を追い風に、低コストのインデックスファンドへの資金流入が加速しています。

S&P500は米国経済の成長に連動する優れた投資対象であり、長期・積立・分散投資の中核として人気を集めています。一方で、為替リスクや米国一国集中のリスクがあることも理解しておく必要があります。

「貯蓄から投資へ」の流れは今後も続くと予想されます。重要なのは、自身の投資目的とリスク許容度を理解し、無理のない範囲で長期的な視点で資産形成に取り組むことです。

参考資料:

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