高市政権100日で衆院解散へ 自維連立の行方と選挙戦略
はじめに
高市早苗首相が2026年1月23日、通常国会の召集日に衆議院を解散しました。2025年10月の就任からわずか3カ月、政権発足100日を前にした異例の決断です。
自民党と日本維新の会による連立政権は、衆院でぎりぎり過半数、参院では少数与党という不安定な状況にあります。高市首相は70%前後という高い内閣支持率を追い風に、選挙で勝利して政権基盤を強化する狙いがあるとみられています。
本記事では、高市首相が解散に踏み切った背景、自維連立政権の現状、そして選挙後の政権の枠組みについて詳しく解説します。
高市首相が解散を決断した3つの理由
高い内閣支持率という追い風
高市内閣の支持率は、発足から一貫して高水準を維持してきました。日本経済新聞社の世論調査では、2025年10月の発足直後が74%、11月が75%、12月も75%と、3カ月連続で70%台を記録しています。
特に若年層からの支持が顕著で、FNNの12月調査では10〜20代男性で89.4%、10〜20代女性で95.5%という驚異的な数字を記録しました。この高い支持率は、小泉政権や安倍政権の発足時と似た傾向を示しています。
ただし、2026年1月の調査では支持率が初めて下落に転じました。共同通信の調査では63.1%(前回比4.4ポイント減)、毎日新聞では57%(同10ポイント減)となっています。それでも歴代内閣と比較すれば依然として高い水準であり、首相はこの「勢い」があるうちに選挙に打って出る判断をしたとみられます。
不安定な議会運営からの脱却
現在の自維連立政権は、衆院で自民党196議席、維新35議席の計231議席しか持っていません。過半数の233議席にわずか2議席足りない状況です。無所属議員の協力でかろうじて過半数を維持していますが、法案審議のたびに野党との交渉を強いられる不安定な状態が続いていました。
さらに参院では完全な少数与党となっており、「ねじれ国会」の状態です。予算案や重要法案の成立には野党の協力が不可欠であり、政権運営に大きな制約がありました。選挙で議席を増やし、安定した政権基盤を築くことが喫緊の課題だったのです。
政権選択選挙の洗礼を受ける必要性
高市首相は記者会見で、解散の理由について「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか、主権者たる国民の皆様に決めていただく」と説明しました。高市内閣は2025年10月の衆院選の結果を受けて発足しましたが、首相自身は総裁選で選ばれた後、国民の直接的な審判を受けていませんでした。
首相は「政権選択選挙の洗礼を受けていないことを気に掛けてきた」と述べ、本格的な政策・予算編成の大改革を進める前に「堂々と審判を仰ぐことが民主主義国家のリーダーの責務」だと強調しています。
自維連立政権の現状と課題
連立合意の内容と成果
2025年10月20日、自民党の高市早苗総裁と維新の吉村洋文代表が党首会談を行い、連立に合意しました。公明党が連立を離脱したことで、自民党は新たなパートナーとして維新を選んだ形です。
維新は「閣外協力」という形式を取り、閣僚は出していません。両党の連絡調整役として、維新の遠藤敬国会対策委員長が内閣総理大臣補佐官に就任しています。
連立合意の主な内容は以下の通りです。
- 消費税: 食料品に限り2年間の免除を視野に法制化を検討
- ガソリン税: 暫定税率を廃止(2025年12月末、ガソリン1Lあたり約25円安くなる見込み)
- 議員定数: 衆議院議員定数の1割削減を目標に議員立法案を提出
- 憲法改正: 緊急事態条項について来年度中に条文案の国会提出を目指す
- 副首都構想: 協議体を設置し、通常国会で法案成立を目指す
両党の政策的な溝
しかし、自民党と維新の間には政策面で大きな溝も存在します。
財政政策について、高市首相は「積極財政」を掲げ、赤字国債の発行も辞さない姿勢を示しています。2026年度予算案は過去最大の122兆円規模となりました。一方、維新は財政健全化を重視し、プライマリーバランスの黒字化を目標に掲げています。
企業・団体献金についても、自民党が「禁止より公開」を主張するのに対し、維新は「完全廃止」を求めており、結論は先送りされています。
こうした政策の違いから、「高市カラー」が薄められるとの見方もあります。維新との連携に加え、麻生太郎副総裁ら党内重鎮の影響力も無視できません。
閣外協力のリスク
「閣外連立」という形式は、両党の関係に微妙な緊張をもたらしています。維新が閣僚ポストを固辞したことについて、高市首相が「ありえへん」と漏らしたとの報道もありました。
閣僚を出さない維新は、政権運営への責任を限定的にしつつ、次の選挙で「野党」としての立場も維持できます。自民党にとっては、連立のメリットを十分に得られない可能性があるのです。
選挙の争点と各党の戦略
選挙日程と特徴
衆院選は1月27日公示、2月8日投開票の日程で行われます。解散から投開票まで16日間という戦後最短の短期決戦です。2月の衆院選実施は36年ぶりで、北国では厳しい気象条件の中での選挙活動となります。
与党の目標議席
与党の勝敗ラインは過半数の233議席ですが、安定した政権運営には以下の議席が必要です。
- 過半数: 233議席(最低ライン)
- 安定多数: 244議席(全常任委員長ポストを確保)
- 絶対安定多数: 261議席(全委員会で過半数を確保)
一部の予測では、自民党単独で250〜280議席を獲得する可能性も示されています。仮に単独過半数に届かなくても、前回の191議席を大きく上回れば政権基盤は安定し、2027年秋の総裁選での再選・続投の可能性が高まります。
野党の対応
野党側は「大義なき解散」と批判しています。予算案の年度内成立を困難にする「自己都合解散」だという指摘や、真冬の選挙で投票率低下を招くとの懸念も出ています。
選挙結果次第では、「自民勝利」「中道勝利」「勢力拮抗」の3つのシナリオが考えられます。与党が過半数を割り込めば、政権の枠組み自体が変わる可能性もあります。
予算案への影響と今後の展望
年度内成立は困難に
2026年度予算案は過去最大の122兆3092億円で、すでに閣議決定されています。しかし、衆院解散により年度内(3月末まで)の成立は「極めて困難」(高市首相)となりました。
4月以降は暫定予算で対応することになりますが、本予算の成立が遅れれば、各種政策の執行にも影響が出る可能性があります。財務省幹部は「どうやっても年度内成立は難しい」と認めています。
選挙後の政権の枠組み
選挙結果によって、政権の枠組みは大きく変わる可能性があります。
自民党が圧勝すれば、高市首相の求心力は高まり、より「高市カラー」を出した政策運営が可能になるでしょう。一方、議席を減らせば党内での立場は弱まり、維新との関係も見直しを迫られるかもしれません。
維新にとっても、この選挙は重要な分岐点です。連立政権に参加した政党は支持を失う傾向があり、維新も同様のリスクを抱えています。選挙結果次第では、連立の継続か離脱かという判断を迫られることになります。
まとめ
高市早苗首相による衆議院解散は、高い内閣支持率と不安定な議会運営という相反する状況の中で下された決断でした。就任100日という短い期間での解散は異例ですが、首相は政権基盤の強化を優先したといえます。
選挙の結果は、自維連立政権の今後を左右するだけでなく、日本の政治の方向性にも大きな影響を与えます。予算案の年度内成立が困難になるというデメリットを承知の上での決断であり、首相にとっては「攻め」と「守り」の両面を持つ選択だったといえるでしょう。
2月8日の投開票に向けて、各党の選挙戦略と有権者の判断が注目されます。
参考資料:
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