高市首相が通常国会冒頭解散を検討、予算審議に懸念の声
はじめに
高市早苗首相が、1月23日に召集予定の通常国会の冒頭で衆議院を解散する案が浮上しています。首相は自民党幹部に対し「選択肢のひとつ」と伝えており、早ければ2月8日投開票の総選挙となる可能性があります。
2025年10月に発足した高市内閣は、日本初の女性首相として注目を集め、支持率70%台という高水準を維持しています。この好機を逃さず、与党の議席増を狙う思惑があるとみられています。
しかし、通常国会冒頭での解散は、2026年度予算案の成立が遅れるなど国民生活への影響が懸念されます。本記事では、冒頭解散の背景と論点、そして今後の政局について解説します。
高市内閣の現状と解散の背景
自民・維新連立政権の成立
高市早苗首相は2025年10月21日、衆参両院の本会議で第104代首相に指名されました。女性の首相就任は日本史上初めてのことです。
高市政権は、自民党と日本維新の会による連立政権として発足しました。四半世紀続いた自民・公明両党の連携は、企業・団体献金の規制強化を巡る意見対立から終止符を打ち、新たな枠組みへと移行しています。
ただし、維新は閣外協力の立場をとっており、閣僚を出していません。衆院での議席は自民党が196、維新が35の合計231で、過半数の233にわずかに届かない状況です。このため、予算を伴う政策の実現には野党との協力が不可欠となっています。
高水準の支持率
高市内閣の支持率は発足以来、高水準を維持しています。2026年1月第1週の調査では77.7%を記録し、発足以来の最高水準を更新しました。主要メディアの12月調査でも64%から76%の範囲で推移しており、6割から7割台という高い支持を得ています。
支持の理由として最も多いのは「人柄が信頼できる」「首相の指導力に期待する」といった回答で、高市氏個人への評価が高いことがうかがえます。特に20代から40代の若い世代からの支持が厚く、岸田・石破両内閣時代に離れていた層を取り戻しています。
一方で、自民党の政党支持率は2割から3割台にとどまっており、内閣支持率との間に約47ポイントもの乖離があります。この状況は、高市首相個人への期待が必ずしも自民党支持に結びついていないことを示しています。
冒頭解散の狙いと日程
早期解散のメリット
高市首相が冒頭解散を検討する最大の理由は、高い支持率を活かした議席増にあります。衆院選で過半数を確保できれば、政権運営の安定性が大きく向上します。
また、2026年度予算案の審議が始まれば、野党からの追及により支持率が低下する可能性があります。予算委員会での厳しい質疑を回避し、高支持率のまま選挙に臨むという戦略的判断があるとみられます。
さらに、野党の選挙準備が整わないうちに選挙を仕掛けることで、与党に有利な状況を作り出す狙いもあります。
想定される衆院選の日程
衆院選の日程としては「1月27日公示、2月8日投開票」または「2月3日公示、2月15日投開票」の案が出ています。いずれの場合も「真冬の決戦」となり、投票率への影響も懸念されています。
通常、衆院解散から総選挙までは40日以内と憲法で定められており、その後30日以内に特別国会が召集されます。冒頭解散となれば、施政方針演説も行われないまま選挙に突入することになります。
冒頭解散に対する異論と懸念
予算案成立の遅れ
冒頭解散の最大の問題点は、2026年度予算案の成立が遅れることです。通常、当初予算案は3月末までに成立しますが、1月末に解散した場合、選挙と特別国会の召集を経て審議を再開することになり、4月以降にずれ込むことは避けられません。
予算案の成立が遅れれば、新年度からの行政サービスや公共事業の執行に影響が出る可能性があります。物価高対策を最優先課題と掲げてきた高市政権にとって、政策の停滞は矛盾となります。
「大義なき解散」との批判
国会冒頭での解散には、与野党双方から異論が出ています。所信表明演説も代表質問も行われないまま解散に踏み切ることへの批判があり、「大義なき解散」との声が上がっています。
過去の衆院解散を見ても、通常国会冒頭で予算審議を中断しての解散は極めて異例です。1990年の海部内閣では施政方針演説なしでの解散が行われましたが、「こんどの解散を前にして、国会では首相の施政方針演説も代表質問もなかった」と批判されました。
連立パートナーとの関係
日本維新の会は連立入りの「絶対条件」として衆院議員の定数削減を掲げていましたが、野党の反発で審議に入れていません。冒頭解散となれば、この問題は棚上げされたまま選挙に突入することになります。
維新は閣外協力という「半身の構え」をとっており、選挙後の連立関係がどうなるかも不透明です。政権内の火種として、今後の政局に影響を与える可能性があります。
解散権の法的根拠と過去の事例
衆院解散の法的位置付け
衆議院の解散は、内閣の助言と承認により天皇が行う国事行為として憲法に定められています。解散権の行使は内閣の裁量に属し、最高裁も「極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為」として、司法判断の対象外としています。
現行憲法下で任期満了による衆院選が行われたのは、1976年の三木内閣時のみです。それ以外はすべて解散による総選挙であり、首相の解散権行使は政治的に認められた慣行となっています。
過去の冒頭解散に近い事例
歴史的には、1952年の「抜き打ち解散」や1953年の「バカヤロー解散」など、様々な経緯での解散が行われてきました。通常国会冒頭での解散は珍しく、予算案審議を中断してまで解散に踏み切る事例は限られています。
1月から3月にかけての解散は、予算案の編成・審議時期と重なるため、政治的には控えるべきとされてきました。高市首相がこの時期に解散を決断するのであれば、相応の「大義」を示すことが求められます。
今後の展望と注意点
最終判断の時期
報道によると、高市首相は外交日程などを踏まえた上で最終判断を下すとされています。通常国会召集日の1月23日が近づくにつれ、政権内での調整が本格化するでしょう。
解散を見送る場合は、夏以降の解散という選択肢も残されています。参議院選挙との同日選や、予算成立後の解散など、複数のシナリオが想定されています。
国民生活への影響
冒頭解散が行われた場合、予算案の審議遅れにより新年度からの政策執行に影響が出る可能性があります。特に物価高対策や社会保障関連の予算について、国民生活への影響を注視する必要があります。
選挙結果次第では、連立の枠組みが変わる可能性もあります。与党が過半数を確保できれば政権は安定しますが、そうでない場合は再び連立交渉が必要となり、政治的な不透明感が続くことになります。
まとめ
高市早苗首相による通常国会冒頭解散の検討は、高支持率を背景とした政権基盤強化の狙いがあります。支持率70%台という好機を逃さず、衆院での過半数確保を目指す戦略です。
しかし、2026年度予算案の成立遅れや、所信表明演説なしでの「大義なき解散」との批判など、克服すべき課題も多くあります。連立パートナーである維新との関係や、野党の反発も政権運営の火種となる可能性があります。
解散に踏み切る場合、高市首相には何を争点として国民の信を問うのか、明確な説明が求められます。通常国会召集まで残りわずかとなる中、首相の最終判断に注目が集まっています。
参考資料:
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