Research

Research

by nicoxz

高市首相が憲法改正に意欲、自衛隊明記の行方

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

2026年2月8日の投開票を控えた衆院選の後半戦で、高市早苗首相が憲法改正への強い意欲を改めて示しました。2月2日、新潟県上越市での応援演説において「自衛隊の誇りを守り、実力組織として位置づけるためにも憲法改正をやらせてほしい」と訴えたのです。

憲法改正は自民党の長年の悲願であり、とりわけ自衛隊の憲法への明記は安倍晋三元首相以来の重要テーマです。高市首相はこの課題に在任中の実現を目指す姿勢を明確にしています。本記事では、憲法改正をめぐる現在の政治状況と、実現の可能性について解説します。

高市首相の改憲構想と政治戦略

「冒頭解散」に込めた覚悟

高市首相は2026年1月23日、通常国会の開会直後に衆議院を解散しました。いわゆる「冒頭解散」です。首相は解散の理由として、外交・安全保障上の課題や皇室典範の改正、そして憲法改正への取り組みを挙げ、「安定した政治基盤と国民の明確な信任がなければ実現できない」と述べました。

これは単なる政権維持のための解散ではなく、憲法改正という大きな政策課題に対する国民の信任を問う意味合いが込められています。首相は「与党で過半数を下回った場合は即刻退陣する」と明言しており、自らの政治生命をかけた判断です。

自衛隊明記の具体的内容

高市首相が目指す憲法改正の柱は主に4つあります。第一に自衛隊の明記、第二に緊急事態条項の創設、第三に家族条項の追加、第四に参議院選挙区の合区解消です。中でも自衛隊明記と緊急事態条項の「2点突破」を最優先に掲げています。

自衛隊の明記とは、現行の憲法9条に自衛隊の存在を書き加えることを指します。現在の日本国憲法には自衛隊に関する規定がなく、その合憲性をめぐっては長年にわたり議論が続いてきました。自衛隊を憲法に明記することで、法的な位置づけを明確化し、隊員の誇りと士気を高めることが狙いです。

内閣からの改憲原案提出という論点

注目すべきは、高市首相が内閣による憲法改正原案の国会提出を「可能」と明言したことです。従来、憲法改正の発議は国会の役割とされ、内閣が主導することには慎重論がありました。

この発言には野党や一部の憲法学者から「内閣による改憲主導は三権分立の観点から問題がある」との批判が出ています。一方で、高市首相としては改憲議論を加速させたいという意図があり、あらゆる手段を検討する姿勢を示したものと考えられます。

改憲実現に向けた政治的条件

衆参3分の2という高いハードル

憲法改正を実現するには、衆参両院でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成で発議し、その後の国民投票で過半数の承認を得る必要があります。衆議院では310議席が3分の2のラインです。

現在の政治状況では、自民党単独で3分の2を確保することは困難であり、連立パートナーである日本維新の会との協力が不可欠です。

自民・維新連立の改憲協力体制

自民党と維新の会は連立政権を組んでおり、両党は憲法9条改正に向けた協議会の設置で合意しています。さらに、緊急事態条項については条文起草協議会を設置し、2026年度中に条文案を国会に提出する目標を掲げました。

維新の会は2025年9月に独自の政策提言を発表し、戦力の不保持を定めた憲法9条2項の削除と自衛権の明記を盛り込んでいます。これは自民党の自衛隊明記案とはアプローチが異なりますが、憲法改正の方向性では一致しています。両党の間でどのような条文案にまとめるかが今後の焦点となります。

憲法審査会の主導権問題

高市首相は演説で「憲法審査会の会長は残念ながら野党だ」と指摘し、改憲議論が進まない状況への不満を表明しました。国会の憲法審査会は改憲議論の中心的な場ですが、会長職を野党が握っている場合、議論のペースや方向性が野党側の意向に左右されます。

首相は、与党が議席数を増やして会長職を得ることが改憲推進に不可欠だとの認識を示しました。今回の衆院選で与党が大勝すれば、憲法審査会の体制変更も視野に入ります。

世論の動向と課題

自衛隊明記への賛否

世論調査の結果を見ると、自衛隊を憲法に明記することへの賛成は一定の支持を得ています。過去の日本経済新聞の調査では賛成が51%と過半数を超えた実績があります。

一方で、2024年8月の日本世論調査会による全国世論調査では、自衛隊の今後のあり方について「専守防衛を厳守すべき」が68%に上り、「憲法9条を改正して軍と明記すべき」は20%にとどまりました。自衛隊の存在を認めつつも、改憲そのものには慎重な国民が多い実態が浮かび上がります。

高い内閣支持率という追い風

高市内閣の支持率は高水準を維持しており、2025年12月の朝日新聞調査では68%を記録しています。この高い支持率は今回の衆院選における与党の追い風となっています。

ただし、内閣支持率の高さがそのまま改憲賛成に直結するわけではありません。改憲の是非については、政権への信頼とは別の判断基準で考える有権者も多く、国民投票において高い支持率が改憲賛成につながるかは予断を許しません。

注意点・展望

改憲発議までの長い道のり

仮に今回の衆院選で与党が大勝したとしても、改憲発議までには多くのステップが残されています。まず衆参両院の憲法審査会で具体的な条文案を議論し、各党間の合意を形成する必要があります。その後、両院それぞれで3分の2以上の賛成を得て発議し、国民投票の実施に至ります。

自民・維新が連立している現状は改憲推進にとって有利な条件ですが、参議院でも3分の2を確保できるかという問題もあります。また、連立合意の範囲内でどこまで具体的な条文案を詰められるかが実務的な課題です。

政界再編の影響

2026年の衆院選に向けて、立憲民主党と公明党が新党「中道改革連合」を創設するなど、政界は大きく動いています。こうした再編が改憲議論にどのような影響を与えるかは注視が必要です。公明党はこれまで自民党の連立パートナーとして改憲議論に一定の影響力を持ってきましたが、新たな枠組みの中で改憲への立場がどう変化するかは不透明です。

まとめ

高市首相の憲法改正への意欲は明確であり、自衛隊の明記を最優先課題として掲げています。自民・維新連立という政治的条件、高い内閣支持率、そして冒頭解散という決断は、改憲実現に向けた本気度を示しています。

しかし、衆参両院での3分の2という高いハードル、世論の複雑な意識、具体的な条文案の調整など、クリアすべき課題は多く残されています。2月8日の衆院選の結果は、憲法改正の実現可能性を大きく左右する分岐点となるでしょう。有権者一人ひとりが、日本の安全保障と憲法のあり方について考える重要な機会です。

参考資料:

関連記事

最新ニュース