通常国会冒頭解散案に与野党が反発、高市政権の火種に
はじめに
高市早苗首相が2026年1月23日召集予定の通常国会冒頭で衆議院を解散する案が浮上し、政界に波紋を広げています。木原稔官房長官は13日、通常国会を23日に召集する方針を衆参両院に伝える見通しです。
冒頭解散となれば衆院選の日程は最速で「27日公示・2月8日投開票」が候補となり、真冬の選挙戦が展開されることになります。しかしこの解散案に対しては、与野党双方から予算審議の遅延や解散の大義に欠けるといった異論が相次いでいます。
本記事では、高市首相の冒頭解散検討の背景と、政権運営への影響について解説します。
冒頭解散案の概要
浮上する解散シナリオ
高市首相は自民党幹部に対し、冒頭解散は「選択肢のひとつ」と伝えています。検討されている衆院選の日程は「1月27日公示・2月8日投開票」または「2月3日公示・2月15日投開票」の2案です。
いずれの場合も、通常国会が始まってすぐに解散となり、2026年度予算案の審議は選挙後に先送りされることになります。
冒頭解散の歴史的背景
国会召集日に論戦を経ないまま首相が衆院を解散する「冒頭解散」は、現行憲法下で過去4例あります。1966年の「黒い霧解散」や1986年の「寝たふり解散」などが知られており、選挙結果はいずれも自民党が善戦もしくは勝利しています。
歴史的に見れば、冒頭解散は与党に有利に働く傾向があり、高市首相がこの選択肢を検討する理由の一つと考えられます。
高市首相が早期解散を検討する理由
高水準の内閣支持率
高市首相が早期解散を検討する最大の理由は、内閣支持率の高さです。2026年1月第1週の世論調査によると、高市内閣の支持率は77.7%に達し、前週比0.5ポイント上昇しました。
2025年10月の政権発足以来、支持率は70%台を維持し続けています。読売新聞の調査では発足時71%から12月には73%、日経新聞の調査でも75%と高水準です。これは小泉純一郎政権や第2次安倍晋三政権の初期に匹敵する数字です。
特に20代から40代の若い世代での支持が高く、岸田・石破両内閣で離れた層を取り戻しているとの分析があります。
野党の追及を回避する狙い
通常国会で予算委員会が始まれば、野党による厳しい追及が予想されます。衆院予算委員長は立憲民主党の枝野幸男氏であり、野党が優位に論戦を展開できる環境が整っています。
TBSスペシャルコメンテーターの星浩氏は「新しいスキャンダルが出てきたりしているので、それが政権の求心力の低下につながって、解散のタイミングがなくなるのではないかという心配が急速に強まってきた」と分析しています。
脆弱な党内基盤
高市首相は党内基盤が必ずしも盤石ではありません。選挙で議席を伸ばせば求心力を高められるとの算段があり、高支持率のうちに国民の審判を仰ぎたいという思惑がうかがえます。
与野党から噴出する異論
予算審議の遅延への懸念
冒頭解散の最大の問題点は、2026年度予算案の成立が大幅に遅れることです。通常、当初予算は3月末までに成立させる必要がありますが、冒頭解散となれば成立は4月以降にずれ込む可能性が高くなります。
予算が年度内に成立しない場合、暫定予算を編成する必要があります。過去には1953年のバカヤロー解散で本予算成立が7月31日までずれ込んだ例があり、国民生活への影響が懸念されます。
解散の大義をめぐる疑問
与野党からは「解散の大義に欠ける」との批判が上がっています。高市首相は今年1月5日の年頭記者会見で「国民に高市内閣の物価高対策、経済対策の効果を実感いただくことが大切。目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」と述べ、早期解散には慎重な姿勢を示していました。
わずか数日で解散に前向きな姿勢を見せたことに、「追及逃れ解散」との批判も出ています。
国民民主党の反発
連立相手として取り込みを狙う国民民主党も難色を示しています。玉木雄一郎代表は、冒頭解散となれば26年度予算への「賛成は確約できない」と牽制しました。
与野党の協力なしでは少数与党の高市政権は政策実現が困難であり、解散をめぐる判断は連立の行方にも影響を及ぼしかねません。
市場と経済への影響
円安の進行
冒頭解散報道を受けて、為替市場では円が対ドルで158円台に下落し、約1年ぶりの安値を記録しました。政治的不透明感が市場心理を冷やしたとみられます。
予算成立遅延のリスク
予算成立が遅れれば、新年度からの政策執行に支障が出る可能性があります。地方交付税交付金や社会保障関係費など、国民生活に直結する支出が暫定予算の範囲内に制限されることになります。
直近の2015年度の暫定予算では、11日間で一般会計歳出総額が5兆7,593億円でしたが、長期化すれば行政サービスへの影響は避けられません。
今後の展望と注意点
4つの解散シナリオ
高市首相の解散判断には、大きく4つの選択肢があるとされています。「春(冒頭解散)」「夏(参院選とのダブル選挙)」「秋」「見送り」です。それぞれにメリット・デメリットがあり、首相は政治情勢を見極めながら判断を下すことになります。
支持率の本質
元自民党職員の久米晃氏は「高市首相の高い内閣支持率は、実態は『支持率』でなく『期待値』です。暮らしが良くなったと国民が実感する状況にならなければ、解散は難しいと思います」と分析しています。
注目すべきは、高市内閣の支持率約76%に対し、自民党の政党支持率は約29%にとどまり、約47ポイントもの乖離がある点です。この乖離は、有権者が高市首相個人を評価しつつも、自民党全体への信頼は回復していないことを示唆しています。
政権運営の火種
解散判断をめぐる与野党の不協和音は、中長期的に政権運営の火種となりかねません。仮に解散を断念した場合でも、一度浮上した早期解散論は党内外の疑念を招き、首相のリーダーシップに傷がつく可能性があります。
まとめ
高市早苗首相が検討する通常国会冒頭での衆院解散案は、高い内閣支持率を背景にした政治的判断ですが、与野党双方から強い異論が出ています。
予算審議の遅延、解散の大義の欠如、連立パートナーとの関係悪化など、リスクは少なくありません。一方で、野党の追及を避けながら高支持率のうちに選挙を戦いたいという思惑も理解できます。
木原官房長官が13日に通常国会召集を伝達する予定であり、高市首相の最終判断に注目が集まります。解散に踏み切るか否かは、今後の政権運営を大きく左右する分岐点となるでしょう。
参考資料:
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