高市首相の孤独な解散判断・党内亀裂の懸念と高支持率
はじめに
2026年1月14日、高市早苗首相は自民党と日本維新の会の幹部に対し、通常国会冒頭での衆院解散の意向を伝えました。しかし、この決断に至るまで、党の最高実力者とされる麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長への事前相談はなかったとされています。
首相の「伝家の宝刀」と呼ばれる解散権。高市首相は70%を超える高い内閣支持率を背景に、孤独な決断を下しました。しかし、この独断専行は、選挙結果によっては党内に亀裂を生む可能性があります。
本記事では、高市首相の解散判断の背景と、今後の政権運営への影響について解説します。
極秘裏に進められた解散準備
最側近との二人三脚
報道によると、高市首相が事前に解散の意向を伝えたのは、最側近の木原稔官房長官のみでした。慎重論を封じるため、極秘裏に二人で解散戦略を練り上げたとされています。
昨年11月頃、首相は側近や党幹部に「もし年明けに解散したいと言ったら、どう思う」と反応を探ったものの、反対意見があったため、「一気呵成の流れをつくりたかった」と政府関係者は分析しています。
党幹部への事後報告
麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長は「事前の相談がまったくなかった」と不満を隠していないと報じられています。首相は正月明けまで「国民に約束した政策の実現が最優先」と繰り返してきただけに、突然の方針転換には党内から困惑の声が上がりました。
ある自民党ベテラン議員は「トランプ大統領みたいになってきた」と、首相の独断専行ぶりにため息をついているとの報道もあります。
情報管理と安倍流の手法
情報共有を最低限に絞る手法は、高市首相が政治の師と仰ぐ安倍晋三元首相に通じるものがあります。安倍政権でも、重要な政策決定は官邸主導で進められ、党との関係で緊張が生じることがありました。
高市首相は「勝てば文句は言えまい」ともくろんでいるとされ、選挙結果ですべてを正当化する覚悟を固めているようです。
背景にある高い内閣支持率
歴代屈指の高支持率
高市内閣の支持率は、発足以来、異例の高水準を維持しています。
2025年10月の発足直後、各社の世論調査で60〜70%台を記録し、産経新聞では75.4%に達しました。石破内閣末期と比較して30ポイント以上の大幅な伸びを見せ、読売新聞は「1978年発足の大平正芳内閣以降で歴代5位」と報じました。
11月以降も支持率は6〜7割台を維持し、12月には産経新聞75.9%、日経新聞75%、読売新聞73%と、発足以来の最高値を更新する調査もありました。2026年1月には、日次世論調査で77.7%という数字も記録しています。
若年層からの圧倒的支持
高市内閣の特徴的な点は、若年層からの支持が極めて高いことです。産経新聞社とFNNの調査(2025年12月)によれば、年代別支持率は18〜29歳が92.4%、30代が83.1%と、若い層ほど高くなっています。
この傾向は、SNSでの発信力や、保守的な政策への若年層の共感が背景にあると分析されています。
小泉・安倍政権との類似性
日本経済新聞の分析によると、高市内閣の支持率推移は、初期に高支持率を誇り長期政権を築いた小泉純一郎政権や第2次安倍晋三政権に似ています。
支持の理由として最も多いのは「人柄が信頼できる」「首相の指導力に期待」などで、高市氏個人の魅力が支持を支えています。一方、自民党の支持率は2〜3割台にとどまり、内閣の人気が党の支持に直結していない状況も見られます。
歴史に見る解散権と党内政治
解散権は「首相の専権事項」か
「解散は首相の専権事項」とよく言われますが、憲法上、解散権は内閣に属します。ただし、首相は国務大臣の任免権を持つため、事実上、解散の閣議決定を引き出すことができます。
しかし歴史的には、党内基盤が弱い首相が解散を望んでも、党内多数派によって封じられた例もあります。1976年の三木武夫首相、1978年の福田赳夫首相はいずれも、党内対立の中で解散の機会を逸し、不本意な形で退任しました。
郵政解散の教訓
2005年の郵政解散では、小泉純一郎首相は閣内の解散反対閣僚を罷免してまで解散を断行しました。結果的に自民党は歴史的大勝を収めましたが、党内には深い亀裂が残り、「造反組」の処遇は長く尾を引きました。
選挙敗北のリスク
解散後の総選挙で敗北すれば、首相は党内で厳しい責任追及を受けます。2009年の麻生太郎首相、2012年の野田佳彦首相はいずれも敗北を喫し、政権交代を招きました。
1979年の総選挙後には、大平正芳首相の責任を問う「40日抗争」が起き、自民党内は分裂状態に陥りました。勝利できなければ、解散を主導した首相の求心力は一気に低下します。
注意点・今後の展望
選挙結果次第の政権運営
高市首相の独断的な解散判断は、選挙結果によって評価が180度変わります。
与党が議席を大幅に伸ばせば、首相の判断は正当化され、求心力はさらに高まります。積極財政や外国人政策など、首相が重視する政策を推進する基盤が固まることになります。
一方、議席を減らしたり、野党の躍進を許したりすれば、「根回しなき解散」の責任を問う声が党内で高まる可能性があります。官邸主導の政権運営に対する反発も表面化しかねません。
維新との連携の行方
連立相手の日本維新の会との関係も注目点です。維新は国会改革や行政改革を重視しており、予算審議の遅れには懸念を示す可能性があります。選挙後の連立協議で、維新がどのような要求を出すかが政権運営を左右します。
野党再編の動向
立憲民主党と公明党が連携を強化する動きも報じられています。選挙結果によっては、野党の枠組みが大きく変わる可能性があり、中長期的な政治地図への影響も注視が必要です。
まとめ
高市早苗首相は、77%を超える高い内閣支持率を背景に、党幹部への根回しなく衆院解散を決断しました。「勝てば文句は言えまい」という覚悟のもと、孤独な判断を下した形です。
しかし、歴史的に見れば、解散権の行使は常にリスクを伴います。勝利すれば首相の権威は高まりますが、敗北すれば責任追及は避けられません。
選挙結果が高市政権の命運を分けることになります。有権者にとっては、首相の政策と姿勢を冷静に評価し、一票を投じることが求められます。
参考資料:
関連記事
高市首相の「孤独な解散判断」、根回しなしで党内に波紋
高市早苗首相が通常国会冒頭での衆院解散を決断。党幹部への事前根回しなく、麻生太郎副総裁にも事後報告という異例の対応に。75%の高支持率を背景にした独断専行のリスクと今後の政権運営を解説します。
高市首相が与党幹部に解散伝達、2月8日投開票へ
高市早苗首相が1月14日、自民党と維新の幹部に通常国会冒頭での衆院解散を伝達。1月27日公示、2月8日投開票の日程が有力に。根回しなしの決定に党内から反発も出ています。
高市首相が衆院解散へ、60年ぶりの丙午に波乱の政局
高市早苗首相が通常国会冒頭での衆院解散を決断。70%超の高支持率を背景に自民党単独過半数の回復を目指すが、予算審議の遅れや「大義なき解散」との批判も。2026年丙午の政治情勢を解説します。
高市首相の冒頭解散検討、自民税調会長が懸念を表明
高市早苗首相が通常国会冒頭での衆院解散を検討する中、自民党の小野寺五典税調会長が予算審議への影響を懸念。冒頭解散の背景と影響を解説します。
通常国会冒頭解散案に与野党が反発、高市政権の火種に
高市首相が検討する通常国会冒頭での衆院解散案に与野党から異論が噴出。予算遅延への懸念や解散の大義をめぐり、政権運営の火種となる可能性を解説します。
最新ニュース
南鳥島でレアアース試掘開始・中国依存脱却への挑戦
探査船「ちきゅう」が南鳥島沖でレアアース泥の試掘を開始。水深6000メートルからの世界初の採掘試験と、日本の経済安全保障における意義を解説します。
1年4カ月で国政選挙3回、頻繁な選挙が招く政策停滞
高市首相が通常国会冒頭での衆院解散を検討。国政選挙が短期間に3回目となり、社会保障改革など長期的視点の政策が後回しになる懸念が高まっています。
第174回芥川賞・直木賞が決定、3氏が受賞の栄誉
第174回芥川賞に鳥山まこと氏「時の家」と畠山丑雄氏「叫び」、直木賞に嶋津輝氏「カフェーの帰り道」が決定。前回の両賞該当なしから一転、充実の受賞作が揃いました。受賞作の魅力と作家の経歴を詳しく解説します。
日本人創業のアルパカがユニコーンに、米国初の快挙
証券取引APIを提供するフィンテック企業アルパカが企業価値10億ドルを突破。日本人だけで創業した新興企業として米国初のユニコーン達成の背景を解説します。
三六協定の締結率5割どまり、残業規制緩和の是非を問う
三六協定を締結している事業所は5割にとどまり、残業規制緩和の議論が活発化しています。働き方改革の効果と今後の労働政策の方向性について、最新データをもとに解説します。