真冬の短期決戦へ・2月衆院選が予算審議に与える影響
はじめに
高市早苗首相が2026年1月23日召集の通常国会冒頭での衆院解散を検討しています。投開票日は2月8日または15日が有力とされ、解散から投開票まで16日間という戦後最短記録を更新する可能性があります。
高市首相は就任以来「経済優先」を掲げてきましたが、国会冒頭での解散は2026年度予算案の審議を大きく遅らせることになります。この矛盾をどう捉えるべきでしょうか。
本記事では、短期決戦となる2月衆院選の背景、予算審議への影響、そして暫定予算編成の可能性について解説します。
戦後最短となる可能性の「真冬の選挙」
2つの日程案
現在検討されている衆院選の日程は2つあります。
1つ目は「1月27日公示、2月8日投開票」案です。この場合、1月23日の解散から投開票までわずか16日間となり、2021年の岸田内閣時に記録した17日間を下回る戦後最短の選挙戦となります。
2つ目は「2月3日公示、2月15日投開票」案です。こちらは若干日程に余裕がありますが、それでも3週間程度の短期決戦であることに変わりありません。
36年ぶりの2月衆院選
2月に衆院選が実施されれば、1990年2月の海部俊樹内閣以来、実に36年ぶりとなります。真冬の選挙は、雪の多い地域での投票所へのアクセスや、街頭演説への参加者減少など、選挙運動に様々な制約をもたらす可能性があります。
短期決戦の狙い
短期決戦には、野党の準備不足を突く狙いがあるとされています。立憲民主党など野党は、候補者擁立や選挙協力の調整に時間を要するため、選挙期間が短いほど準備が整わない状態で選挙戦に突入することになります。
一方、与党側も選挙準備の時間が限られるため、組織力と資金力がものを言う展開となりそうです。
「経済優先」方針との矛盾
高市首相の経済政策
高市早苗首相は「責任ある積極財政」を掲げ、安倍晋三元首相の「アベノミクス」路線を継承しています。AI・半導体、量子技術、バイオ、航空宇宙、サイバーセキュリティーなど戦略分野への積極投資を重視し、必要な投資には赤字国債の発行も辞さない姿勢です。
2025年11月に決定した経済対策では、電気・ガス料金の補助や食料品高騰対策など、国民生活を支える施策を盛り込みました。首相は一貫して「経済を最優先」と強調してきました。
予算審議の遅れという矛盾
しかし、通常国会冒頭での解散は、この「経済優先」方針と明らかに矛盾します。
2026年度予算案は過去最大規模の約122兆3000億円に上ります。通常、予算案は3月末までに成立させる必要がありますが、国会冒頭で解散すれば審議日程が大幅に圧迫されます。選挙後の特別国会を経て予算審議を再開しても、年度内成立は困難な情勢です。
野党からは「国民生活に直結する予算審議を優先すべき」との批判が上がっており、与党内からも慎重論が出ています。
暫定予算編成の可能性
暫定予算とは
年度開始の4月1日までに本予算が成立しない場合、政府は「暫定予算」を編成して行政機能の停滞を防ぎます。
暫定予算は、本予算成立までの空白期間をつなぐための一時的な予算です。期間は10日間から2カ月程度で、新規事業は原則として含まれず、公務員給与や社会保障費など経常的経費と、すでに着手している公共事業の継続案件など、必要最小限の予算に限られます。
過去の暫定予算
近年では2013年度と2015年度に暫定予算が編成されました。いずれも前年末に衆院選が行われ、予算編成作業が遅れたことによるものでした。
2013年度は安倍政権発足直後の4月に約3.7兆円の暫定予算が組まれ、2015年度も同様に暫定予算で対応しました。
暫定予算がもたらす影響
暫定予算の編成は、行政サービスの停滞を最小限に抑える措置ですが、新規事業の開始が遅れるなどの影響は避けられません。
特に地方自治体への交付金や、新年度から始まる予定だった政策の実施が遅れる可能性があります。企業や個人にとっても、補助金申請や助成金の受け取りに影響が出る恐れがあります。
与野党の反応と政治情勢
与党内の不協和音
自民党内からは、予算審議を優先すべきとの声が上がっています。報道によれば、首相は自民党幹部への事前の根回しなく解散意向を固めたとされ、党内には不満もくすぶっています。
連立相手の日本維新の会との調整も課題です。維新は国会改革や行政改革を重視しており、予算審議の遅れには懸念を示す可能性があります。
野党の対応
立憲民主党と公明党が連携を強化する動きが報じられています。野田佳彦立憲代表と斉藤鉄夫公明代表が「より高いレベルで連携」することで一致し、比例代表での「統一名簿」方式も検討されているとのことです。
野党側は、解散の「大義」が不明確として批判を強めていますが、選挙戦に向けた態勢整備を急いでいます。
注意点・今後の展望
投票率への影響
短期間の選挙戦は、有権者が候補者の政策を十分に吟味する時間を奪う可能性があります。また、真冬の選挙は投票所への足が遠のく要因にもなりかねません。
近年の国政選挙の投票率は50%台にとどまっており、投票率のさらなる低下が懸念されます。
経済への影響
選挙による政治空白は、経済政策の実行を遅らせます。高市首相が重視する半導体投資やエネルギー政策なども、予算成立が遅れればそれだけ開始が遅れることになります。
金融市場は、選挙結果と新政権の政策に注目しています。選挙後の政権の枠組みによっては、円相場や株式市場が大きく動く可能性もあります。
選挙後の政権運営
選挙結果によっては、与党が議席を伸ばして政権基盤を強化するシナリオと、野党が躍進して「ねじれ」が深刻化するシナリオの両方があり得ます。
いずれの場合も、選挙後は遅れた予算審議を急ぐ必要があり、国会運営は慌ただしいものになることが予想されます。
まとめ
高市首相が検討する2月衆院選は、解散から投開票まで16日間という戦後最短記録を更新する可能性があります。「経済優先」を掲げてきた首相にとって、予算審議の遅延という矛盾を抱えた判断となります。
2026年度予算案の成立が4月以降にずれ込めば、暫定予算の編成が必要となり、新規事業の開始遅れなど国民生活への影響も懸念されます。
選挙期間が短いほど、有権者が候補者の政策を十分に比較検討する時間は限られます。「真冬の短期決戦」に向けて、有権者一人ひとりが早い段階から候補者の政策を把握し、投票に臨むことが重要です。
参考資料:
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