高市首相が衆院解散へ、台湾発言で日中緊張の中の賭け
はじめに
高市早苗首相が2026年1月23日召集の通常国会冒頭で衆議院を解散する方針を固めました。就任からわずか3ヶ月、日本初の女性首相による大胆な決断に、国内外のメディアが注目しています。
特に米欧のメディアは、台湾有事をめぐる発言で中国との緊張が高まる中での解散決断を「権力を固めるための賭け」と分析しています。支持率75%という歴史的な高水準を維持する高市政権にとって、この解散は政策実現への基盤強化となるのか、それとも予期せぬリスクをはらむのか。本記事では、米欧メディアの論評を中心に、今回の解散決断の背景と意味を解説します。
米欧メディアが注目する「権力固めの賭け」
高支持率を背景にした戦略的判断
米欧のメディアは、高市首相の解散決断を「戦略的な賭け」として好意的に報じています。Bloomberg、CNBCなど主要経済メディアは、75%という歴史的な高支持率を背景にした判断であると分析しています。
日経の調査によると、高市内閣の支持率は3ヶ月連続で70%を超えており、これは2000年代初頭の小泉純一郎政権以来の水準です。この「ハネムーン期間」を最大限に活用し、衆議院での議席増を狙う戦略は、自民党の伝統的な選挙戦術に沿ったものといえます。
英国の政治誌「The Spectator」は高市首相を「日本のサッチャー」と呼び、その大胆な選挙戦略を評価しています。保守的な政策路線と強いリーダーシップが、国民の支持を集めている要因として挙げられています。
台湾発言がもたらした日中緊張
米欧メディアが特に注目しているのは、解散決断の背景にある日中関係の緊張です。2025年11月、高市首相は国会答弁で「台湾有事は日本の安全保障上の脅威であり、軍事的対応も選択肢になりうる」と発言しました。
この発言に対し、中国は強硬な姿勢で反発しています。具体的には、軍民両用技術を含む「デュアルユース」製品の対日輸出規制を発表し、レアアースの輸出も制限していると報じられています。
Al Jazeeraは「高市首相の台湾発言は中国との関係悪化を招いたが、国民からは好意的に受け止められている」と報じています。強硬な対中姿勢が支持率を押し上げる一因となっているとの分析です。
衆院解散の政治的意味
与党連立の脆弱な基盤
現在の自民党・日本維新の会による連立政権は、衆議院465議席のうち約230議席を確保しており、過半数をわずかに超える状況です。2024年秋の衆院選で自民党が議席を減らした結果、公明党との連立を解消し、維新との新たな連立に移行した経緯があります。
この脆弱な議会基盤が、高市首相にとって政策実現の障害となっています。122.3兆円に上る過去最大の2026年度予算案の成立や、防衛力強化のための追加的な財政支出には、より安定した議席数が必要です。
Japan Timesは「高市首相は個人的な人気を活用し、与党の議席増を狙っている」と分析しています。選挙に勝利すれば、政策推進のための政治的資本を大幅に増やすことができます。
前任者の失敗からの教訓
ただし、リスクも存在します。前任の石破茂首相は2024年秋、就任直後の高支持率を活用しようと衆院選に踏み切りましたが、結果は与党の過半数割れという惨敗でした。
この教訓から、野党側は警戒を強めています。立憲民主党と公明党は、選挙に向けて連携を模索する動きを見せています。高市政権の保守的な政策への対抗軸を明確にし、票の掘り起こしを図る構えです。
市場と経済への影響
金融市場の反応
解散報道を受け、金融市場は敏感に反応しました。Bloombergによると、日本株は上昇する一方、債券は下落、円は対ドルで158円台まで下落し、介入警戒水準に近づいています。
市場は、選挙後の政策継続性と財政拡大路線への期待を織り込んでいるとみられます。一方で、円安の進行は輸入物価上昇を通じてインフレ圧力を高める懸念もあります。
予算審議への影響
野党は今回の解散を「予算審議を遅らせる利己的な行動」と批判しています。通常国会冒頭での解散となれば、4月からの新年度開始までに予算が成立しない可能性があります。
CNBCは「2月8日の投開票であれば予算への影響は最小限に抑えられる」と分析しています。選挙日程の設定が、今後の焦点となりそうです。
今後の展望と注意点
選挙の行方を左右する要因
2月に想定される衆院選の結果は、いくつかの要因に左右されます。まず、高市首相の個人的人気がどこまで自民党全体の得票に結びつくかが注目されます。
また、維新との連立がどこまで安定するかも重要です。維新が掲げる「副首都構想」や衆院定数削減といった政策課題について、選挙後の合意形成が課題となります。
さらに、日中関係の行方も選挙結果に影響を与える可能性があります。選挙期間中に中国がさらなる対抗措置を取れば、逆に高市政権への支持が高まる可能性もあります。
対中関係の今後
South China Morning Postは、選挙での勝利が日中関係の打開につながる可能性を指摘しています。明確な国民の信任を得ることで、高市首相が対話路線に転じやすくなるとの見方です。
高市首相自身も「対話には常にオープンだ」と発言しており、選挙後の外交姿勢が注目されます。
まとめ
高市早苗首相の衆院解散決断は、75%の高支持率と台湾有事をめぐる日中緊張という二つの要素が絡み合った、まさに「権力固めの賭け」といえます。
米欧メディアは概ね好意的に報じており、選挙での勝利が政策実現と外交姿勢の正当化につながると分析しています。一方で、前任者の失敗や予算審議への影響といったリスクも存在します。
2月の衆院選は、日本の政治の方向性だけでなく、日中関係や地域の安全保障環境にも影響を与える重要な選挙となりそうです。
参考資料:
- Japan’s Takaichi Set to Call Early Election to Shore Up Mandate - Bloomberg
- Japan plans to dissolve parliament with possible snap election in February - CNBC
- Japan’s new PM Takaichi eyes parliament dissolution for snap polls - Al Jazeera
- Takaichi to roll the dice on risky snap election - Japan Times
- Japan’s Thatcher is making a huge election gamble - The Spectator
- Japan’s Takaichi tipped for snap election gamble - South China Morning Post
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