高市首相の「孤独な解散判断」、根回しなしで党内に波紋

by nicoxz

はじめに

高市早苗首相が1月23日召集の通常国会冒頭での衆院解散を決断しました。しかし、その決定プロセスが異例でした。党幹部への事前の根回しは一切なく、政権の後ろ盾である麻生太郎副総裁にさえ事後報告だったのです。

永田町では先週末から「解散風」が吹き始めましたが、首相本人は沈黙を貫きました。自民党内には混乱が広がっていますが、首相は75%を超える高支持率を背景に「勝てばよい」と自信を見せています。

本記事では、この「孤独な解散判断」の背景と、今後の政権運営に与える影響を解説します。

極秘裏に進められた解散準備

最側近・木原官房長官との二人三脚

高市首相が解散の意向を事前に伝えたのは、最側近の木原稔官房長官だけでした。慎重論を封じるため、極秘裏に二人で解散戦略を練り上げたとされています。

実際に選挙を取り仕切る鈴木俊一幹事長、首相と関係が近い萩生田光一幹事長代行、そして政権の後ろ盾である麻生太郎副総裁にも、事前の相談はありませんでした。

1月14日、首相は首相官邸で自民党の鈴木幹事長と日本維新の会の吉村洋文代表に面会し、通常国会早期の衆院解散意向を初めて直接伝えました。詳細は19日の記者会見で説明するとしています。

「聞いていない」幹事長の困惑

解散の動きが報じられ始めた13日朝、木原官房長官は自民党幹部の部屋を訪れ、「解散のことばかり聞かれて、しらばくれるのが大変です」と漏らしたとされています。この時点でも、首相の真意は党内で共有されていませんでした。

鈴木幹事長は14日の会談後、「首相から解散の意向を聞いた」と述べましたが、その表情からは困惑もうかがえたと報じられています。

麻生副総裁への事後報告

自民党内で大きな影響力を持つ麻生太郎副総裁にも、首相の決断は事後報告でした。麻生氏は不満を示しながらも、「最後までやりきれ」と述べたと伝えられています。

麻生氏は1月12日、地元の福岡で「(冒頭解散は)ないでしょうね」とけん制していましたが、その翌日には首相の意向が報じられました。重鎮の予測をも覆す展開でした。

なぜ根回しなしで決断したのか

安倍元首相に学んだ「解散の流儀」

情報共有を最小限に絞る手法は、高市首相が政治の師と仰ぐ故・安倍晋三元首相に通じるものです。

高市首相は自著で、2014年に総務相として安倍氏に解散の有無を尋ねたところ、けむに巻かれたエピソードを披露しています。「比較的親しい政治家にも解散の話は絶対にしないのが総理大臣というものだと学ばせていただいた」と記しており、今回の対応はその教訓を実践したものといえます。

慎重論を封じる狙い

昨年11月頃、首相は側近や党幹部に「もし年明けに解散したいと言ったら、どう思う」と反応を探っていました。前向きな意見があった一方で、「2026年度当初予算の成立や政策実現など、成果を通常国会で積み重ねた後」を推す慎重派もいました。

事前に相談すれば、慎重論が勢いを増し、決断が鈍る恐れがありました。高支持率という「旬」を逃さないためには、独断で押し切る必要があったと考えられます。

「勝てばよい」という自信

首相は党内の混乱を意に介さず、「勝てばよい」と自信を見せているとされています。日経の調査で75%、JNN調査で78.1%という歴史的な高支持率が、その自信の源泉です。

衆院選で自民党が議席を増やせば、解散のプロセスへの批判は薄れるという計算があります。

党内に残る火種

予算審議遅延への懸念

通常国会冒頭での解散案には、与野党から異論が出ています。最大の懸念は、過去最大の122.3兆円に上る2026年度予算案の成立が4月以降に遅れる可能性です。

選挙日程は「1月27日公示―2月8日投開票」または「2月3日公示―2月15日投開票」が想定されていますが、いずれにしても予算審議の開始は大幅に遅れます。

維新との連立関係

日本維新の会との連立関係にも火種があります。維新は「副首都構想」の法制化や衆院定数10%削減を連立の条件としていますが、自民党内にはこれらの政策に消極的な声もあります。

維新幹部は「結局、すべての問題を首相にあげて判断をあおぐしかなくなっている」と、意思決定過程での調整役不在を指摘しています。選挙後、これらの政策課題をめぐって対立が表面化する可能性があります。

チーム力の弱さ

高市政権の課題として、「チーム力の弱さ」と「意思決定過程での調整役不在」が指摘されています。首相自身の課題に取り組む熱意や処理能力には定評がありますが、周りに任せるのではなく、課題を抱え込み一人で判断していく傾向があるとされています。

この「独断専行」のスタイルは、短期的には迅速な決断を可能にしますが、長期的な政権運営では禍根を残す可能性があります。

今後の展望と注意点

選挙結果次第で評価が変わる

今回の解散判断の評価は、選挙結果次第で大きく変わります。自民党が議席を増やし、安定した政権基盤を確立できれば、首相の「孤独な決断」は英断として評価されるでしょう。

一方、2024年秋の石破前首相のように、期待に反して議席を減らす結果となれば、「独断専行」への批判が噴出する可能性があります。

公明党の動向にも注目

2024年10月の総裁選をきっかけに、公明党は1999年以来続いた自民党との連立を解消しました。今回の選挙で、立憲民主党と公明党が連携を模索する動きも報じられています。

野党連合の形成如何によっては、選挙結果に予想外の影響が出る可能性もあります。

選挙後の政権運営

選挙に勝利した場合でも、首相は党内の融和を図る必要があります。根回しなしの解散決断は、自民党内に不満を残しました。麻生副総裁をはじめとする重鎮との関係修復が、選挙後の政権運営の課題となります。

また、維新との連立協議も難航が予想されます。選挙公約として掲げた政策をどこまで実現できるかが、次の焦点となりそうです。

まとめ

高市早苗首相の「孤独な解散判断」は、75%を超える高支持率への絶対的な自信と、安倍元首相から学んだ「解散の流儀」が結実したものです。

党幹部への根回しなし、麻生副総裁にも事後報告という異例の対応は、リスクをはらんでいます。選挙結果によっては、党内に禍根を残す可能性があります。

2月の衆院選で首相の「賭け」が成功するか否かは、今後の日本政治の方向性を大きく左右することになりそうです。

参考資料:

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