東京23区の単身向け家賃が20カ月連続で最高値を更新
はじめに
東京23区の単身者向け賃貸マンションの家賃が、とどまるところを知らない上昇を続けています。不動産情報サービスのアットホームが発表した2026年1月の調査によると、専有面積30平方メートル以下の単身者向け物件の平均募集家賃は10万7658円に達しました。これは前月比0.8%増、前年同月比では11.1%もの上昇です。
集計を開始した2015年1月以降の最高値を、実に20カ月連続で更新するという異例の事態となっています。2025年5月に初めて10万円の大台を突破して以降、上昇の勢いは衰える気配がありません。本記事では、この家賃高騰の実態と背景、そして今後の見通しについて多角的に解説します。
東京23区の家賃上昇はどこまで進んでいるのか
単身者向け物件の家賃推移
東京23区における単身者向け賃貸マンションの家賃上昇は、2024年半ばから加速度的に進行してきました。2025年5月に平均募集家賃が10万634円を記録し、初めて10万円を超えたことが大きな話題となりました。その後も上昇は止まらず、2025年7月には10万3265円に到達し、前月比1.6%という2015年の集計開始以来で最大の月間上昇率を記録しています。
2026年1月時点の10万7658円は、わずか8カ月前の10万円突破時と比較しても約7%の上昇です。年間の上昇率で見ると11.1%にのぼり、物価上昇率を大きく上回るペースで家賃が上がり続けていることがわかります。
全面積帯で最高値を更新
注目すべきは、家賃上昇が単身者向け物件にとどまらない点です。アットホームの同調査では、東京23区は7カ月連続で全面積帯において最高値を更新しています。カップル向き(30〜50平方メートル)やファミリー向き(50〜70平方メートル)の物件でも、軒並み過去最高の募集家賃が続いています。
LIFULL HOME’Sのデータによれば、2025年3月時点でファミリー向け物件の平均募集賃料は約23万円で前年比8.9%増、単身者向けは約11.6万円で前年比15.1%増となっており、特に単身者向けの上昇率が顕著です。首都圏だけでなく、札幌市、名古屋市、福岡市など全国の主要都市でも家賃上昇が広がっており、全13エリアでファミリー向き物件が5カ月連続して前年同月を上回るなど、全国的なトレンドとなっています。
区ごとの家賃格差
東京23区内でも、区によって家賃水準には大きな差があります。港区のワンルーム・1K物件は14〜17万円台と最も高額で、千代田区や渋谷区もこれに続く高水準です。一方で、葛飾区は5.5〜6.5万円台と最も安く、足立区も同程度の水準にあります。最も高い港区と最も安い葛飾区では、同じ単身者向け物件でも2倍以上の開きがあるのが実情です。
なぜ家賃は上がり続けるのか
建設コスト高騰による供給不足
家賃上昇の最大の要因は、新規賃貸物件の供給不足です。建設業界では原材料費と人件費が継続的に上昇しており、新築賃貸マンションの建設コストが大幅に増加しています。加えて東京23区内では用地取得費も高騰しており、総事業費の増大が新規供給を抑制しています。
実際に首都圏全体の新築マンション供給戸数は、2025年に前年比4.5%減の2万1962戸と、1973年の調査開始以来で過去最少を更新しました。需要が増えているにもかかわらず供給が追いつかない、典型的な需給ギャップが家賃上昇を押し上げています。
分譲マンション価格の高騰が賃貸需要を押し上げ
分譲マンション市場の異常な価格高騰も、賃貸市場に大きな影響を与えています。2025年の東京23区の新築分譲マンション平均価格は、前年比21.8%増の1億3613万円に達しました。都心6区に限れば平均1億9503万円と、2億円の大台が目前です。3年連続で平均1億円を超える状況が続いており、1億円超の「億ション」は5669戸と急増しています。
こうした価格水準では、一般的な所得の単身者が分譲マンションを購入することは極めて困難です。結果として「買えないから借りる」という層が増加し、賃貸需要がさらに押し上げられるという構造が生まれています。
若年層の都心回帰と単身世帯の増加
人口動態の変化も家賃上昇を後押ししています。東京都への若年層(15〜29歳)の転入超過数は年間10万3201人に達し、年齢別データが公表された2010年以降で最多を記録しました。コロナ禍で一時的に見られた郊外への移住トレンドは収束し、通勤・通学の利便性を重視した都心回帰が鮮明になっています。
東京都の総人口は2025年7月時点で1426万1422人に達し、過去最高を更新し続けています。特に区部の単独世帯(一人暮らし)の割合は増加傾向にあり、2035年には50.2%に達するとの予測もあります。単身世帯の増加は、ワンルームや1Kといった小規模物件への需要を直接的に高めており、供給が限られる中で家賃の上昇圧力となっています。
更新時の値上げが常態化
都心部の賃貸市場では、「更新時に賃料が上がるのは当たり前」という認識が広まりつつあります。同条件で引っ越しをしても同程度かそれ以上の家賃になるため、入居者は値上げを受け入れざるを得ないケースが増えています。既存物件でもリフォーム費用や共用部の光熱費上昇分を家賃に転嫁する動きが広がっており、市場全体の家賃水準を押し上げる要因となっています。
注意点・展望
2026年の東京賃貸市場について、多くの専門家は上昇トレンドの継続を予測しています。特に繁忙期(1〜3月)の都心部では、千代田区・港区・渋谷区の都心3区に加え、目黒区や品川区などの人気エリアで「取り合い」がさらに激化すると見られています。
一方で、注意すべきリスク要因もあります。米国の関税政策による企業業績への影響が賃上げの抑制につながれば、賃貸需要そのものが伸び悩む可能性があります。また、日本銀行の金利政策次第では、不動産投資の採算性が変化し、家賃市場に影響を及ぼすことも考えられます。
郊外エリアでは二極化が進むとの見方も強まっています。駅近で築浅の人気物件は都心同様に家賃が上昇する一方、築年数が古く駅から遠い物件は競争力を失い、空室期間が長期化するリスクがあります。物件選びにおいては、立地や設備の質がこれまで以上に重要な判断基準となるでしょう。
まとめ
東京23区の単身者向け賃貸マンションの家賃は、2026年1月時点で10万7658円と20カ月連続の最高値を更新しました。建設コストの高騰による供給不足、分譲マンション価格の異常な上昇による賃貸需要へのシフト、若年層の都心回帰と単身世帯の増加が主な要因です。
今後も都心部を中心に家賃上昇が続く可能性が高い一方、経済情勢や金利動向次第では変化も起こり得ます。都内での住まい探しにおいては、エリアの将来性や物件の資産価値を見極めた判断がますます求められる時代になっています。
参考資料:
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