トヨタ労組が一時金7.3カ月要求、関税逆風で減額
はじめに
トヨタ自動車労働組合は2026年1月28日、今年の春季労使交渉(春闘)における一時金の要求水準を基準内賃金の7.3カ月分とする執行部案を発表しました。前年の7.6カ月分から0.3カ月分引き下げた格好です。
日本最大の自動車メーカーであるトヨタの春闘は、毎年の労使交渉の指標となります。今回の要求水準引き下げは、トランプ政権の関税政策が自動車業界全体に与える影響の大きさを示しています。本記事では、トヨタ労組の要求内容と背景、自動車業界全体の春闘動向について解説します。
トヨタ労組の要求内容と背景
一時金7.3カ月の意味
トヨタ労組が示した一時金7.3カ月分という要求は、過去最高だった前年の7.6カ月分を下回るものの、依然として高い水準にあります。鬼頭圭介執行委員長は「会社の経営状況は厳しく、先行きも不透明だが、要求すべきものは要求しなければいけないという思いで案をつくった」と述べています。
要求額は2月13日の評議会で正式に決定され、2月18日に会社側へ申し入れる予定です。賃上げ要求額については、職種や階級に応じて最高で月額2万1580円を求めていますが、前年との詳細な比較は非公表としています。
トランプ関税がもたらした業績への圧力
一時金要求を引き下げた最大の要因は、米国のトランプ政権が発動した自動車関税です。日米関税交渉の結果、日本車に対する相互関税と自動車関税は15%で決着しましたが、その影響は甚大です。
日本の自動車大手7社の2025年4~9月中間決算では、トランプ関税の負担額は合計1兆4000億円に上りました。日産、マツダ、三菱自動車は赤字に転落し、主要メーカー全体では2026年3月期の1年間で合計190億ドル(約2兆7000億円)を超える利益が削られる可能性があります。
トヨタ自体は黒字を維持しているものの、北米市場での収益性低下は避けられず、労使交渉でも経営環境の厳しさが反映された形です。
自動車業界全体の春闘動向
自動車総連は強気の姿勢を維持
トヨタ労組が一時金を減額した一方で、自動車総連(全日本自動車産業労働組合総連合会)は2026年春闘におけるベースアップ要求の目安を「月1万2000円以上」と設定しました。2025年の「1万2000円」から「以上」を付け加えることで、要求水準の引き上げを打ち出しています。
自動車総連の金子晃浩会長は「額で言えば昨年を下回る理由はない」と強調し、業績悪化にもかかわらず賃上げ姿勢を崩していません。その理由として、過去3年間の物価上昇による生活コストの増大や、深刻な人手不足への対応を挙げています。
2026年春闘の賃上げ率予測
第一生命経済研究所の分析によると、2026年春闘の賃上げ率は厚生労働省ベースで5.20%、連合ベースで4.95%と予測されています。2025年の5.52%からはやや低下するものの、3年連続で5%前後の高水準を維持する見通しです。
賃上げ率がやや鈍化する要因としてトランプ関税による企業業績の下振れが挙げられますが、非製造業では業績が底堅く、企業全体の賃上げ余力は十分に存在するとの見方が主流です。経団連の経労委報告原案でも「賃上げのさらなる定着」が強調されており、経営側も賃上げに前向きな姿勢を見せています。
注意点・展望
一時金減額と賃上げは別問題
注意すべきは、一時金(ボーナス)の減額とベースアップ(基本給の引き上げ)は性格が異なるという点です。一時金は業績連動の色彩が強く、短期的な経営環境を反映します。一方、ベースアップは恒久的な賃金水準の底上げであり、中長期的な人材確保や生活水準の維持を目的としています。
トヨタ労組も一時金は減額しつつ、ベースアップについては高い要求を維持しているとみられ、「守るべきところは守り、譲るべきところは譲る」という現実的な姿勢が見て取れます。
今後の注目ポイント
2月18日のトヨタ労使交渉の申し入れ後、3月中旬の集中回答日に向けて交渉が本格化します。トヨタの回答は他の自動車メーカーやサプライチェーン全体の交渉にも波及するため、日本の賃金動向を占ううえで極めて重要です。また、米国の関税政策の今後の展開次第では、さらなる修正もあり得るでしょう。
まとめ
トヨタ労組の一時金7.3カ月要求は、トランプ関税による業績悪化を踏まえた現実的な判断です。前年の過去最高水準からは引き下げたものの、依然として高い水準を維持しています。
自動車業界全体では、関税の逆風にもかかわらず、物価上昇への対応と人材確保を理由に賃上げの勢いは維持される見通しです。3月の集中回答日に向けた交渉の行方が、2026年の日本経済全体の賃金トレンドを左右する重要な局面となります。
参考資料:
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