トランプ氏が英軍を称賛に一転、NATO発言で猛反発を受けて
はじめに
トランプ米大統領が1月24日、SNSで英国軍を称賛しました。これは1月22日のインタビューでアフガニスタン戦争について「NATO同盟国の部隊は前線から離れた場所にいた」と発言し、英国をはじめとする欧州各国から猛烈な批判を浴びたことを受けた対応です。
トランプ氏は謝罪こそしていませんが、英軍を「最も偉大な戦士」と称え、発言を事実上撤回した形となりました。この一連の出来事は、トランプ政権とNATO同盟国との関係に影を落とす可能性があります。
本記事では、発言の経緯と各国の反応、そして米欧関係への影響について詳しく解説します。
発言の経緯
FOXニュースでの問題発言
トランプ大統領は1月22日に放送された米FOXビジネスのインタビューで、NATOについて言及しました。
「我々は彼ら(NATO同盟諸国)を必要としたことがない。何かを求めたこともない」とトランプ氏は述べ、「彼らはアフガニスタンに部隊を派遣したと言うだろう。確かに派遣したが、彼らの部隊は少し後方、最前線から少し離れたところにとどまっていた」と主張しました。
英国からの猛反発
この発言は、アフガニスタン戦争で457人の兵士を失った英国で激しい反発を招きました。
スターマー英首相はビデオメッセージで「まず、アフガンで命を落とした英国兵457人に敬意を表する」と述べた上で、「トランプ大統領の発言は侮辱的で、率直に言って、最低だと思う」と強く批判しました。自身がそのような発言をしたならば「必ず謝罪する」とも付け加えました。
英国の退役軍人担当相であるアリスター・カーンズ氏も、自身がアフガニスタンに5回従軍した経験を踏まえ、トランプ氏の主張を「全くばかげている」と一蹴しました。
英王室や欧州各国からも批判
ハリー王子が反論
アフガニスタンに2度従軍した経験を持つハリー王子も、声明を発表して批判に加わりました。「同盟国は呼びかけに応え、共通の安全保障を追求するために米国主導の任務に参加した」と述べ、トランプ氏の発言に反論しました。
英紙サンによると、チャールズ国王もホワイトハウスにトランプ氏の発言への懸念を伝えたとされています。
オーストラリアなど他の同盟国も反発
オーストラリアのアルバニージー首相は1月25日、トランプ氏の発言について「全く容認できない」と述べました。オーストラリアはアフガニスタンで41人の兵士を失っています。
イタリアのメローニ首相、ポーランドのトゥスク首相、フランスのマクロン大統領など、欧州の指導者たちも相次いでトランプ氏の発言に厳しい反応を示しました。
トランプ氏の一転した称賛
SNSで英軍を称える
批判が高まる中、トランプ大統領は1月24日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿しました。
「英国の偉大で非常に勇敢な兵士たちは、常に米国と共にある!アフガニスタンでは457人が亡くなり、多くが深刻な負傷を負った。彼らは最も偉大な戦士の一部だった」
さらに「それは決して壊れることのない強い絆だ。英国軍は、計り知れない心と魂を持ち、(米国を除けば)誰にも引けを取らない。我々は永遠にあなたたちを愛し続ける」と記しました。
謝罪はせず
トランプ氏は英軍を称賛したものの、正式な謝罪は行いませんでした。「米国を除けば誰にも引けを取らない」という表現にも、米軍の優位性を強調する意図が感じられます。
英首相との電話会談
スターマー首相の事務所によると、週末にトランプ氏と電話会談が行われ、首相は「アフガニスタンで肩を並べて戦い、帰還できなかった勇敢で英雄的な英米の兵士たち」の話題を取り上げたとされています。「彼らの犠牲を決して忘れてはならない」と強調しました。
アフガニスタン戦争の実態
NATO史上唯一の集団防衛発動
2001年9月11日の米同時多発テロを受けて、NATOは史上初めて条約第5条(集団防衛条項)を発動しました。これは「一国への攻撃は全加盟国への攻撃とみなす」という相互防衛の規定であり、これまでに発動されたのはこの一度だけです。
米国主導の連合軍は、アルカイダとタリバンの打倒を目指してアフガニスタンに展開しました。
同盟国の犠牲
アフガニスタン戦争での各国の戦死者数は以下の通りです。
- 米国:約2,461人
- 英国:457人
- カナダ:159人
- フランス:90人
- ドイツ:62人
- イタリア:53人
- ポーランド:44人
- デンマーク:43人(NATO加盟国の中で人口比で最も高い犠牲率の一つ)
- オーストラリア:41人
合計で3,621人以上のNATO・同盟国兵士が犠牲となりました。
米欧関係への影響
トランプ政権とNATOの緊張
トランプ氏は以前からNATOに対して批判的な姿勢を示してきました。加盟国の国防費負担が不公平であるとの主張を繰り返し、NATOへの関与を見直す可能性も示唆してきました。
今回の発言は、そうした文脈の中で同盟国の犠牲を軽視するものと受け止められ、欧州諸国との信頼関係に影響を与える可能性があります。
発言撤回の意味
トランプ氏が事実上発言を撤回したことは、同盟国との関係維持が必要との判断があったと考えられます。しかし、正式な謝罪がなかったことで、欧州側にわだかまりが残る可能性もあります。
まとめ
トランプ大統領のアフガニスタン戦争に関する発言は、457人の兵士を失った英国をはじめ、NATO同盟国から激しい批判を受けました。王室や首相レベルからの反発を受け、トランプ氏は一転して英軍を称賛しましたが、正式な謝罪には至っていません。
NATOが史上唯一の集団防衛発動で米国を支援した歴史的事実を踏まえると、今回の出来事は米欧関係に微妙な影響を与える可能性があります。トランプ政権下でのNATO同盟国との関係維持が引き続き注目されます。
参考資料:
- トランプ氏「NATO部隊はアフガンで最前線避けた」、英国から総スカン - AFPBB News
- トランプ氏、英軍称賛で歩み寄りの姿勢 - AFPBB News
- Trump praises British troops after drawing outrage - CNN
- Trump, in retreat, praises U.K. troops after royal family voices hurt - Washington Post
- Trump Hails UK Troops’ Sacrifice After Backlash - Bloomberg
- 豪首相、NATO部隊めぐるトランプ氏発言「全く容認できない」 - AFPBB News
関連記事
トランプ氏のNATO「後方発言」に英国が猛反発、謝罪求める
トランプ大統領がアフガン戦争でNATO軍は「後方にいた」と発言し、英スターマー首相が「侮辱的で言語道断」と猛反発。457人の犠牲者を出した英国で怒りが広がっています。
トランプ氏の私信暴露が示す外交の新たなリスク
トランプ大統領がマクロン仏大統領やNATO事務総長との私的なやり取りをSNSで公開。グリーンランド問題を巡る外交の裏側と、首脳間の信頼関係への影響を解説します。
トランプ氏、グリーンランド巡り米欧解決策模索へ
トランプ米大統領がグリーンランド取得問題で「満足できる解決策を見つける」と発言。一方でNATOの有事対応に疑問を呈し、同盟関係に緊張が走っています。
ウクライナ停戦後の安全保障、72時間で米軍介入の枠組み合意
ウクライナと欧米がロシアの停戦違反時に72時間以内に米軍が介入する3段階の反撃体制で合意。有志連合の展開計画や今後の和平交渉の行方を詳しく解説します。
中国が英国産ウイスキー関税半減、脱「氷河期」へ
中国が英国産ウイスキーの関税を10%から5%に引き下げ、ビザ免除にも合意。スターマー首相の8年ぶり訪中で動き出した中英関係の改善と、その背景にある米中対立の構図を解説します。
最新ニュース
ビットコイン7万ドル台急落、テック株売りが暗号資産に波及
ビットコインが約1年3カ月ぶりの安値となる7万2000ドル台に急落しました。米ハイテク株の売りが暗号資産市場に波及した背景と、MicroStrategyの含み損問題について解説します。
日銀の量的引き締め出遅れと円安の関係を解説
日銀のマネタリーベース縮小が米欧に比べ緩やかな理由と、それが円安に与える影響について解説します。FRB新議長候補ウォーシュ氏の金融政策姿勢にも注目が集まっています。
書店600店の在庫を一元化|返品率30ポイント削減の新システム
紀伊国屋書店、TSUTAYA、日販が出資するブックセラーズ&カンパニーが、56社603店の在庫を横断管理するデータベースを始動。返品率6割減を実現した事例と、出版業界の構造改革を解説します。
中国海警局の尖閣周辺活動が過去最多に、日中の緊張続く
2025年、中国海警局の船舶が尖閣諸島周辺の接続水域に357日出没し過去最多を更新。日本の対応策と偶発的衝突防止の課題を解説します。
中国の土地売却収入がピーク比半減、地方財政に深刻な打撃
中国の地方政府の土地売却収入が2025年も前年比14.7%減少し4年連続の減少を記録。ピークの2021年から52%減となり、不動産不況が地方財政を圧迫し続けています。