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by nicoxz

トランプ第2期政権の国際秩序破壊が加速する理由

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はじめに

2025年1月20日に発足したトランプ第2期政権は、発足から1年を迎える時点で、戦後80年にわたって築かれてきた国際秩序を急速に解体しつつあります。2026年1月3日のベネズエラへの軍事作戦によるマドゥロ大統領の拘束、そして1月7日の66の国際機関からの離脱表明は、米国が「法の支配」から「力の支配」へと舵を切ったことを象徴する出来事です。この変化は、中国やロシアの行動を正当化する口実を与え、世界の安定を根底から揺るがす危険性をはらんでいます。

ベネズエラ軍事作戦が示した「新しい現実」

国際法を無視した主権侵害

2026年1月3日、米軍はデルタフォースを投入し、ベネズエラのマドゥロ大統領夫妻を拘束しました。作戦開始から身柄確保までわずか約143分という電撃的な作戦により、事実上マドゥロ政権は崩壊しました。

トランプ大統領は当初、この作戦を「麻薬対策」と位置付けましたが、後に「ベネズエラが我々の石油を全て奪った。それを取り戻したい」と資源獲得を目的とする発言を行っています。この発言は、作戦の真の目的が石油利権の奪還にあったことを示唆しています。

国際法の権威である米ノートルダム大学法科大学院のメアリー・エレン・オコネル教授は、この軍事作戦を「違法な帝国主義としか言いようがない」と断言しました。国連憲章は自衛または国連安保理の承認がない限り、他国への武力行使を禁じています。今回の作戦はそのいずれの条件も満たしていません。

国際社会の分断を深める結果

アントニオ・グテレス国連事務総長は、この軍事作戦を「危険な前例」と呼び、緊急安保理会合を招集しました。会合では中国やロシアが米国を強く非難し、国際法違反を指摘しました。

中南米諸国の反応は分裂しています。アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は作戦を賞賛した一方、チリ、コロンビア、ウルグアイは懸念や非難を表明し、平和的解決を求めました。この分断は、米国の影響力が以前ほど絶対的ではなくなったことを示しています。

中国・ロシアへの「贈り物」

最も深刻な懸念は、この作戦がロシアによるウクライナ侵略や、中国による将来的な台湾侵攻を正当化する口実を提供してしまったことです。ロシアや中国は「米国も国際法を無視している」という論理を展開できるようになり、一方的な現状変更の動きが増長される恐れがあります。

66の国際機関離脱が意味するもの

WHO・パリ協定からの即時離脱

トランプ大統領は就任初日の2025年1月20日に、世界保健機関(WHO)とパリ気候協定からの離脱を命じる大統領令に署名しました。米国はWHOの最大の資金拠出国であり、この離脱は世界の公衆衛生体制に深刻な打撃を与えています。

WHOへの資金拠出停止により、パンデミック対応能力の低下、発展途上国への医療支援の縮小、感染症監視体制の弱体化が懸念されています。新型コロナウイルスのパンデミックで国際協力の重要性が証明されたにもかかわらず、米国はその枠組みから離脱する道を選びました。

包括的な国際機関離脱

2026年1月7日、トランプ大統領は66の国際機関からの離脱を命じる大統領覚書に署名しました。この中には、気候変動枠組条約(UNFCCC)、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、大西洋協力パートナーシップなど、重要な国際協力の枠組みが含まれています。

内訳は、国連関連機関31組織、その他の国際組織35組織です。米国政府は、これらの組織が「米国の国益、安全保障、経済的繁栄、または主権に反する」として離脱を正当化しています。

対外援助の劇的削減

トランプ政権は2025年度の対外援助を384億ドルから大幅に削減し、2026年度には285億ドル、一部の見積もりでは最低81億ドルにまで縮小する計画です。米国際開発庁(USAID)は実質的に閉鎖され、多くの国連機関への資金提供も削減されました。

この削減は、世界中の紛争地域や貧困地域への人道支援に深刻な影響を及ぼしています。国際援助システムは混乱に陥り、最も支援を必要とする人々が取り残されるリスクが高まっています。

国際秩序の変容と日本への影響

「法の支配」から「力の支配」へ

トランプ政権の行動は、戦後の国際秩序を支えてきた「法の支配」の原則を放棄し、「力の支配」への回帰を意味します。米国自身が国際法を無視することで、他国による国際法違反への説得力が失われています。

欧州では、米国を信頼できる同盟国と考える人々の割合が大幅に減少しています。多くの欧州諸国は再軍備を進めており、米国に依存しない安全保障体制の構築を模索し始めています。

民主主義の後退

V-Demレポートによると、2026年は世界規模で民主主義の質が低下する年となる見通しです。特に西側諸国での民主主義の後退が顕著で、米国、ギリシャ、イタリアが最前線にあるとされています。

民主主義のリーダーであるべき米国が権威主義的な行動をとることで、世界中の独裁政権に正当性を与えてしまう「逆説的な効果」が生じています。

日本の対応と課題

日本にとって、米国は最も重要な同盟国です。しかし、トランプ政権の予測不可能な外交政策は、日本の安全保障戦略に根本的な見直しを迫っています。

中国の台頭と米国の相対的な衰退という構造的変化の中で、日本は米国一辺倒ではない、より多角的な外交・安全保障政策を構築する必要があります。同時に、法の支配に基づく国際秩序の維持に向けて、欧州やアジアの民主主義国との連携を強化することが求められています。

展望と注意点

米中二極化の加速

トランプ政権の単独主義的な政策は、皮肉にも中国の国際的地位を向上させる結果となっています。米国が国際機関から離脱することで生じた空白を、中国が埋めようとしているのです。

近年の首脳会談や貿易協定は、米中両国が新しい二極的枠組みを形成しつつあることを示しています。冷戦時代のようなゼロサムゲームではなく、両国が共存しながら「リスク低減」を図る新しい関係性が模索されています。

貿易と経済の不確実性

トランプ大統領は経済的・技術的強制の新時代の到来を示唆しています。貿易と政治の不確実性が「新常態」となり、グローバル貿易の減速が今後数ヶ月で顕在化すると予想されています。

各国は米国市場への依存度を下げ、サプライチェーンの多様化を進めています。この動きは、戦後の米国主導のグローバル経済秩序の終焉を象徴しています。

多国間協力の困難化

国際機関からの米国の離脱は、気候変動、パンデミック対策、貧困削減など、グローバルな課題への対処を困難にします。これらの問題は一国では解決できず、国際協力が不可欠だからです。

米国の不在は、これらの課題への取り組みを遅らせ、最終的には米国自身にも負の影響を及ぼす可能性があります。

まとめ

トランプ第2期政権による「常識の革命」は、確かに急速に実行されています。しかし、その結果は国際秩序の安定ではなく、混乱と不確実性の増大です。ベネズエラ軍事作戦は国際法の軽視を象徴し、66の国際機関からの離脱は米国の孤立主義への回帰を示しています。

世界は今、「米国のリーダーシップ」後の時代に備える必要があります。日本を含む民主主義国は、法の支配に基づく国際秩序を維持するため、米国抜きでも機能する多国間協力の枠組みを構築しなければなりません。同時に、中国やロシアの一方的な行動を抑止するため、価値を共有する国々との連携を強化することが求められています。

トランプ政権の「第2幕」はまだ始まったばかりです。この1年の経験を踏まえ、各国は賢明な構えで対応していく必要があります。

参考資料

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