米ベネズエラ攻撃で中南米に激震、「次の標的」への懸念広がる

by nicoxz

はじめに

2026年1月3日、トランプ米政権がベネズエラに軍事攻撃を実施し、マドゥロ大統領を拘束・連行するという衝撃的な事態が発生しました。この攻撃を受け、「次の標的になりかねない」と身構える国々が続出しています。

国連安全保障理事会は1月5日に緊急会合を開催し、中南米やカリブ海諸国から米国への批判が相次ぎました。さらにトランプ大統領がグリーンランド獲得への意欲を示したことで、デンマークなど欧州にも動揺が広がっています。本記事では、ベネズエラ攻撃の経緯と国際社会の反応、今後の懸念について解説します。

ベネズエラ攻撃の経緯

「オペレーション・アブソリュート・リゾルブ」

2026年1月3日午前1時50分頃(ベネズエラ時間)、米軍はベネズエラの軍事施設、通信インフラ、空軍基地、港湾施設に対してステルス機による精密爆撃を実施しました。首都カラカスでは少なくとも7回の爆発が確認されています。

この作戦「オペレーション・アブソリュート・リゾルブ」には、西半球20カ所の基地から150機以上の航空機が参加しました。トランプ大統領はクリスマス前に作戦を承認し、特殊部隊はマドゥロ大統領の邸宅のモデルを使用して訓練を重ねていたと報じられています。

マドゥロ大統領の拘束

特殊部隊デルタフォースは、ベネズエラ最大の軍事施設フエルテ・ティウナにあるマドゥロ大統領の邸宅を急襲し、妻のシリア・フローレスとともに拘束しました。両氏は米軍機でニューヨークに移送され、麻薬テロ、コカイン密輸共謀、武器所持など4つの罪で起訴されました。

攻撃による死者は、ベネズエラ側発表で治安要員24人、キューバ政府発表でキューバ軍・情報機関員32人とされています。

攻撃に至る経緯

米政府は2025年9月以降、麻薬流入阻止を名目にカリブ海と東太平洋で「麻薬密輸船」への攻撃を繰り返し、100人以上を殺害してきました。2025年11月には空母「ジェラルド・フォード」をベネズエラ近海に展開し、軍事的圧力を強化していました。

攻撃直前には、CIAが2025年から潜入させていた工作員による準備が完了し、サイバー攻撃でカラカスに停電を発生させたと報じられています。

国連安保理での激しい批判

グテーレス事務総長の懸念表明

1月5日の国連安保理緊急会合で、グテーレス事務総長は「1月3日の軍事行動に関して、国際法の規則が尊重されなかったことを深く懸念する」と述べました。また、「ベネズエラの不安定化が激化し、地域に影響を及ぼし、国家間関係の前例となることを深く懸念する」と警告しました。

中南米諸国の反発

コロンビアのザラバタ国連大使は「常任理事国である国が国際法を無視するのであれば、この理事会は何の役割を持つのだろうか」と問いかけました。

ベネズエラのモンカダ国連大使は「今日、危機に瀕しているのはベネズエラの主権だけではない。国際法の信頼性、この機関の権威も危機に瀕している」と訴えました。

キューバ代表は、米国の「覇権主義的で犯罪的な計画」が地域の安定に深刻で予測不能な結果をもたらしたと述べ、「時代遅れのモンロー主義に根ざした帝国主義的・ファシスト的侵略」と非難しました。

ニカラグア代表は「中南米・カリブ海は平和地帯であり、すべての国が例外なく尊重すべきだ」と強調しました。

6カ国共同声明

1月4日、ブラジル、スペイン、チリ、コロンビア、メキシコ、ウルグアイは共同声明を発表し、「ベネズエラ領土で米国が一方的に実施した軍事行動に深い懸念と強い拒絶を表明する」と述べました。

ブラジルのルーラ大統領は「中南米への介入の最悪の瞬間を想起させる」とし、「平和地帯としての地位を脅かす」と批判しました。

「次の標的」への懸念

グリーンランドへの圧力

トランプ大統領はベネズエラ攻撃の翌日、「グリーンランドは絶対に必要だ」と発言し、デンマーク自治領の獲得に改めて意欲を示しました。グリーンランドはレアアース(希土類元素)などの天然資源が豊富で、北極圏における米国の弾道ミサイル防衛にとって重要な拠点となっています。

デンマークのフレデリクセン首相は「米国には、デンマーク王国を構成するいずれの地域も併合する権利はない」と反発。「米国がNATO加盟国を攻撃すれば、すべてが止まることになる」と警告しました。

欧州7カ国の支持表明

1月6日、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、英国、デンマークの7カ国首脳は、デンマークとグリーンランドへの支持を表明する共同声明を発表しました。「グリーンランドは島の人々のものだ」と強調し、ドイツは必要な場合NATOによる保護強化の協議を示唆しました。

キューバへの波及懸念

CNNは「次は我々か」と身構えるキューバについて分析記事を掲載しました。米軍のベネズエラ攻撃が周辺国に激震を与えており、反米政権を抱える国々は警戒を強めています。

1989年のパナマ侵攻以来となる中南米での軍事行動は、米国が「裏庭」と見なす西半球で武力行使を躊躇しないことを示しました。

国際法上の論点

主権侵害か、犯罪者拘束か

今回の攻撃は、2つの大きく異なる解釈が可能です。米国は「麻薬犯罪者の逮捕」という法執行の論理を主張していますが、多くの国は「他国への武力行使」であり国連憲章違反だと批判しています。

民主党のティム・ケイン上院議員は「憲法は明確だ。米国は緊急の自己防衛の場合を除き、議会の投票なしに軍事行動や戦争に関与することはない」と述べ、議会承認なしの攻撃を「違法」と批判しました。

ロシアのウクライナ侵攻との比較

専門家からは、今回の攻撃がロシアによるウクライナ侵攻との比較を困難にするとの指摘があります。米国が「国益のための武力行使」を正当化すれば、ロシアが同様の論理を援用する口実を与えかねません。

また、台湾有事においても、中国が「国内問題への介入」を正当化する論拠に使われる可能性が指摘されています。

注意点・今後の展望

地域の不安定化リスク

ベネズエラでは1月5日にロドリゲス副大統領が大統領代行に就任し、政府機能は維持されています。しかし、米国が一時「ベネズエラを運営する」と発言したことで混乱が広がり、ルビオ国務長官が後に撤回する事態となりました。

中南米は「平和地帯」として域内紛争を回避してきましたが、米国の一方的な軍事行動はこの秩序を揺るがす可能性があります。

NATOへの影響

トランプ大統領のグリーンランド発言は、NATO同盟国との関係にも影を落としています。NATO加盟国であるデンマークへの圧力は、同盟の結束を試すものとなりました。欧州7カ国が共同で支持を表明したことは、米国の単独行動主義への警戒の表れです。

今後の動向

マドゥロ大統領はニューヨーク連邦地裁で無罪を主張しており、今後の裁判の行方が注目されます。また、ベネズエラ政府の対応や、中南米諸国の結束がどのように展開するかも焦点となります。

まとめ

トランプ政権による1月3日のベネズエラ攻撃は、1989年のパナマ侵攻以来となる中南米での軍事行動でした。国連安保理では中南米諸国を中心に激しい批判が相次ぎ、「次の標的」への懸念が広がっています。

グリーンランド獲得への意欲表明は欧州にも動揺を与え、7カ国首脳がデンマーク支持を表明しました。国際法より国益を優先する姿勢は、世界秩序に新たな不安定要因をもたらしています。中南米の「平和地帯」としての地位と、国際法に基づく秩序の維持が問われる事態となっています。

参考資料:

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