Research

Research

by nicoxz

UAE王族がトランプ氏仮想通貨企業に770億円出資の全容

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

2026年2月1日、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が衝撃的なスクープを報じました。アラブ首長国連邦(UAE)の有力王族が、トランプ米大統領一族の仮想通貨企業に5億ドル(約770億円)を出資していたというものです。

この出資は、トランプ氏が大統領に就任するわずか4日前に契約が結ばれていました。出資比率は49%に達し、外国政府に近い人物が現職大統領のファミリービジネスに巨額投資を行った前例のないケースとして、米国内で大きな議論を呼んでいます。

本記事では、出資の詳細な構造、関係者の背景、AI半導体取引との関連疑惑、そして米政界の反応について解説します。

出資の全体像と契約の詳細

買い手と出資構造

出資を行ったのは、UAE国家安全保障顧問であるタフヌーン・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン氏が支援する投資会社「アリヤム・インベストメント1」です。タフヌーン氏はUAE大統領ムハンマド・ビン・ザーイド氏の実弟であり、同国最大の政府系ファンドを管理する人物です。

出資先はトランプ一族が経営する分散型金融(DeFi)プロトコル「ワールド・リバティ・フィナンシャル(WLF)」です。WLFは2024年に設立され、トランプ一族のほか、スティーブ・ウィトコフ氏の家族らが共同創設者に名を連ねています。

契約のタイミングと資金の流れ

契約書にはトランプ大統領の次男エリック・トランプ氏が署名しました。署名日は2025年1月16日で、ドナルド・トランプ氏の大統領就任(1月20日)のわずか4日前です。

資金の流れも注目に値します。初回支払いの2億5,000万ドルのうち、1億8,700万ドルがトランプ一族の関連企業に流れました。さらに約3,100万ドルが、WLF共同創設者であるウィトコフ家の企業に支払われています。ウィトコフ氏は同時にトランプ政権の中東特使を務めており、利益相反の懸念が指摘されています。

残りの2億5,000万ドルは2025年7月15日までに支払われる契約です。また、この取引の一環として、タフヌーン氏が率いるAI企業G42の幹部2名がWLFの取締役に就任しています。

「スパイ・シェイク」タフヌーン氏とG42の正体

タフヌーン氏の巨大な影響力

タフヌーン氏は「スパイ・シェイク(情報機関の王族)」の異名を持つ人物です。1968年生まれの同氏は、UAEの国家安全保障顧問として情報機関を統括するとともに、1.3兆ドル規模のビジネスポートフォリオを管理しています。

同氏が率いるG42は2018年に設立されたAI・クラウドコンピューティング企業で、政府、医療、金融、石油・ガスなど幅広い分野でAI開発を手がけています。CEOのペン・シャオ氏は、UAE のサイバーセキュリティ企業ダークマター・グループの元トップです。

中国との関係と米国の懸念

G42にはかつて中国との深い関係がありました。同社のデータセンターではファーウェイ製のハードウェアが使用されており、米情報機関は北京への技術移転リスクを警告していました。バイデン政権下では、こうした懸念からUAEへの先端AI半導体の輸出が制限されていました。

しかし2024年、G42は米国の圧力を受けて中国との関係を断ち、マイクロソフトやNVIDIAなど米テクノロジー大手との提携に舵を切りました。マイクロソフトは2024年4月にG42へ15億ドルの出資を発表しています。

AI半導体取引との時系列

ここで注目すべきは以下の時系列です。

  1. 2025年1月16日: タフヌーン氏側がWLFの49%を取得する契約に署名
  2. 2025年1月20日: トランプ氏が大統領に就任
  3. 2025年5月: トランプ政権がUAEに対し、NVIDIAの最先端AI半導体を年間50万個販売することを承認。そのうち約10万個(20%)がG42に直接割り当て

この時系列から、WLFへの巨額出資がAI半導体取引の見返りだったのではないかという疑惑が浮上しています。

ステーブルコインUSD1とバイナンスの取引

MGXによるバイナンスへの20億ドル投資

タフヌーン氏を巡る利益相反疑惑は、WLFへの出資だけにとどまりません。同氏が率いるもう一つの投資会社MGXは、世界最大の仮想通貨取引所バイナンスに20億ドルを投資しました。

この取引の決済に使われたのが、WLFが2025年3月に発行したステーブルコイン「USD1」です。つまり、タフヌーン氏が出資するWLFの金融商品を、同じくタフヌーン氏が率いるMGXが大規模取引に活用したことになります。

USD1の急成長

MGXの取引やバイナンスでの上場を追い風に、USD1の流通量は約28億ドルに達しています。WLFのWLFIトークンも、WSJの報道後に一時15%上昇するなど、市場は複雑な反応を見せています。

注意点・展望

法的・倫理的な問題

この取引は、米国憲法の外国報酬条項(エモルメンツ・クローズ)に抵触する可能性があると、複数の法律専門家が指摘しています。現職大統領のファミリービジネスに外国政府関係者が数百億円規模の出資を行うケースは前例がなく、既存の法的枠組みでの対応が困難な側面があります。

エリザベス・ウォーレン上院議員は「これは明白な腐敗だ」と批判し、AI半導体取引との関連について調査を求めています。上院銀行委員会の少数派もWLFの記録提出を要求しています。

WLF側の反論

WLF広報のデイビッド・ワックスマン氏は「トランプ大統領もウィトコフ氏も、就任以降WLFの運営に一切関与していない」と述べ、AI半導体取引との関連を「100%事実無根」と否定しています。

今後の焦点

今後は米議会での調査の行方が焦点です。仮想通貨規制を巡る法整備が進む中、大統領ファミリーと仮想通貨ビジネスの関係が政治的な争点となる可能性があります。また、2025年7月までに予定される残り2億5,000万ドルの支払いが実行されるかどうかも注目点です。

まとめ

UAE王族タフヌーン氏によるWLFへの5億ドル出資は、仮想通貨、AI半導体政策、外交という複数の領域が交差する異例の事案です。就任直前のタイミング、資金の流れ、AI半導体取引との時系列的な関連性など、多くの論点を含んでいます。

この問題は、デジタル資産が国際政治と結びつく新たなリスクを示しています。仮想通貨市場の投資家にとっても、地政学リスクが投資判断に影響を与える事例として注視が必要です。今後の議会調査や法的判断の動向を引き続き確認していくことが重要です。

参考資料:

関連記事

最新ニュース