ベネズエラ暫定大統領が姿勢を一転、米国との協力を表明した背景

by nicoxz

はじめに

2026年1月3日、トランプ米政権はベネズエラに対して軍事作戦を実行し、ニコラス・マドゥロ大統領を拘束するという歴史的な事態が発生しました。これを受けてベネズエラ最高裁判所は、副大統領だったデルシー・ロドリゲス氏を暫定大統領に指名しました。

当初、ロドリゲス暫定大統領は「マドゥロこそが唯一の大統領」と主張し、米国に対抗する姿勢を見せていました。しかし、トランプ大統領が「協力しなければ再攻撃もありうる」と警告したことを受け、わずか1日で姿勢を一転させました。

本記事では、この急転直下の展開の背景と、今後のベネズエラ情勢について解説します。

米軍によるマドゥロ大統領拘束の経緯

「断固たる決意作戦」の全容

2026年1月3日未明、米軍は「Operation Absolute Resolve(断固たる決意作戦)」と名付けられた軍事作戦を実施しました。F-22やF-35などのステルス戦闘機、B-1爆撃機を含む150機以上の航空機が投入され、ベネズエラの防空施設や通信インフラへの精密爆撃が行われました。

作戦の中心となったのは、米陸軍特殊部隊デルタフォースです。CIAの秘密工作班が2025年8月から現地に潜入して収集した情報をもとに、カラカスにあるマドゥロ大統領の自宅に突入しました。就寝中だったマドゥロ氏と妻のシリア・フローレス氏は、鋼鉄製の安全な部屋に逃げ込もうとしましたが失敗し、拘束されました。

米国側の主張する正当性

トランプ政権は、マドゥロ氏が麻薬取引に関与していたことを作戦の根拠として挙げています。米国では以前からマドゥロ氏に対して麻薬密売の容疑で起訴状が出されており、今回の作戦で身柄を確保した後、ニューヨーク連邦裁判所に移送しました。

1月6日の初公判で、マドゥロ氏は「私はベネズエラの大統領であり、戦争捕虜と考えている」と述べ、無罪を主張しました。次回審理は3月17日に予定されています。

ロドリゲス暫定大統領の姿勢転換

就任当初の強硬姿勢

マドゥロ氏の拘束を受け、ベネズエラ最高裁判所は憲法第233条に基づき、副大統領だったデルシー・ロドリゲス氏を暫定大統領に指名しました。ただし、最高裁は大統領職が「完全な空席」とは言及せず、マドゥロ氏復帰の余地を残す判断を下しています。

1月4日、ロドリゲス氏はテレビ演説で米国を「過激派」と呼び、「マドゥロこそがベネズエラの唯一の大統領である」と宣言しました。「ベネズエラはいかなる国の植民地にもならない」という強い言葉で、米国への対抗姿勢を鮮明にしました。

トランプ大統領の警告と姿勢の急変

しかし、この強硬姿勢は長く続きませんでした。同日、トランプ大統領がマドゥロ政権のメンバーが協力しない場合は「2回目の軍事攻撃を実施する可能性がある」と警告したのです。

これを受け、ロドリゲス暫定大統領は1月5日、SNSで「米国とベネズエラの間で、均衡がとれた敬意ある関係を構築することを優先事項と考える」と表明しました。さらに「共通の発展に向けた協力のアジェンダに取り組むよう、米政府に呼びかける」と述べ、協力姿勢への転換を明らかにしました。

米国との水面下の交渉

トランプ大統領は「私自身はロドリゲスと話していないが、他の人々が話している」と述べています。特にマルコ・ルビオ国務長官がスペイン語で流暢にロドリゲス氏と会話を重ね、「強い関係」を構築していることを明かしました。

トランプ大統領は、ロドリゲス氏に対して石油会社への「完全なアクセス」を要求する意向も示しており、エネルギー資源をめぐる交渉が今後の焦点となる見通しです。

国際社会の反応と批判

国連安全保障理事会の緊急会合

1月5日に開催された国連安保理緊急会合では、グテーレス国連事務総長が「軍事作戦において国際法の規則が尊重されなかった」と懸念を表明しました。

中国の孫磊国連次席大使は「米国は安保理の常任理事国でありながら、国際社会の深刻な懸念を無視し、ベネズエラの主権を恣意的に踏みにじった」と厳しく批判しました。ロシアのネベンジャ国連大使もマドゥロ氏と妻の即時解放を要求しています。

国際法違反の論点

今回の軍事作戦については、複数の国際法上の問題点が指摘されています。

第一に、国連憲章が禁じる「武力行使」に該当する可能性があります。フランスは「軍事作戦は国際紛争の平和的解決や武力行使の禁止の原則に反する」と批判しました。

第二に、他国の主権侵害の問題があります。コロンビアの国連大使は「米国の行動はベネズエラの主権、政治的独立、領土保全の明白な侵害」と述べています。

第三に、米国議会の承認を経ていない点も問題視されています。米国憲法上、宣戦布告には議会の承認が必要ですが、今回の作戦は大統領権限で実行されました。

中南米諸国の懸念

チリのボリッチ大統領は「ベネズエラにおける米国の軍事行動に懸念と非難を表明する」と述べ、平和的解決を求めました。ウルグアイ外務省も「他国の領土への軍事介入を拒否し、国際法と国連憲章の尊重の重要性を再確認する」との声明を発表しています。

一方、キューバ政府は攻撃で32人の軍人・諜報関係者が死亡したと発表しており、中南米地域全体への波及効果が懸念されています。

デルシー・ロドリゲスとは何者か

チャベス主義の継承者

デルシー・ロドリゲス氏は1969年5月18日、カラカス生まれの政治家です。父親のホルヘ・アントニオ・ロドリゲス氏は、社会主義同盟の共同創設者でマルクス主義のゲリラ戦士でした。

ロドリゲス氏は「チャビスタ」(チャベス主義者)として知られています。故ウゴ・チャベス大統領が創設した左派政治運動の忠実な継承者であり、2018年から副大統領を務めてきました。

政治的手腕と現実主義

今回の姿勢転換は、ロドリゲス氏の政治的な現実主義を示しています。米軍の圧倒的な軍事力を前にして、対抗姿勢を貫くことは現実的ではないと判断したものと考えられます。

NBCニュースは「ロドリゲスがいかにしてトランプに歩み寄り、権力の座に上り詰めたか」という分析記事を掲載しており、彼女の政治的柔軟性に注目が集まっています。

今後の注目点と展望

ベネズエラ政権の安定性

ロドリゲス暫定大統領は米国との協力姿勢を示していますが、国内の政治基盤は不安定です。マドゥロ氏を支持する勢力との関係、軍の忠誠度、国民の反応など、多くの不確定要素が存在します。

ルビオ国務長官は「米国はベネズエラを日常的に統治するわけではない」と述べていますが、既存の「石油検疫」は継続する方針を示しています。

エネルギー資源をめぐる駆け引き

トランプ大統領が石油会社への「完全なアクセス」を要求していることから、ベネズエラの豊富な石油資源をめぐる交渉が今後の焦点となります。ベネズエラは世界最大の石油埋蔵量を誇る国であり、その資源をめぐる駆け引きが本格化する見通しです。

国際秩序への影響

今回の軍事作戦は、国際法に基づく秩序に大きな疑問を投げかけています。日本政府関係者は「米国との距離感を考えつつ、これまで言ってきたこととずれないよう慎重に対応した」と苦しい立場をにじませています。

ロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾に対する軍事的威圧に反対してきた立場から、米国の行動をどう評価するかは、各国にとって難しい問題となっています。

まとめ

ベネズエラのロドリゲス暫定大統領が当初の強硬姿勢から米国との協力へと方針転換した背景には、トランプ大統領による「再攻撃」の警告がありました。圧倒的な軍事力の差を前に、現実的な判断を下したと言えます。

しかし、この事態は単なるベネズエラの政変にとどまりません。国際法に基づく秩序、主権国家への武力行使の是非、中南米地域の安定など、多くの問題を提起しています。

今後はロドリゲス政権の安定性、石油資源をめぐる米国との交渉、そして国際社会の対応が注目されます。この歴史的な事態がどのような結末を迎えるのか、引き続き注視が必要です。

参考資料:

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