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by nicoxz

円買い為替介入への警戒高まる、一時的な止血剤の効果とは

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はじめに

外国為替市場で円買い為替介入への警戒感が急速に高まっています。2026年1月26日、円相場は一時153円台半ばまで上昇し、先週末から5円以上の円高・ドル安が進行しました。

市場では日本政府・日銀が為替介入の準備段階である「レートチェック」を実施したとの観測が広がっており、さらに米国当局も同様の動きを見せた可能性があるとして、日米協調介入への思惑が浮上しています。

過去の為替介入は相場の一時的な「止血剤」として機能してきましたが、長期的な効果は限定的でした。本記事では、為替介入の仕組みと過去の実績、今回の介入警戒がもたらす影響について解説します。

為替介入の仕組みと目的

介入の基本メカニズム

為替介入とは、為替相場が急激に変動した際に、通貨当局が保有する通貨を市場で売買することで変動を抑える仕組みです。日本では財務大臣の権限のもと、日本銀行が実際の介入オペレーションを実施します。

円安を是正する場合は「ドル売り・円買い介入」を行います。政府・日銀が保有する外貨準備のドルを売却し、円を購入することで、市場における円の需要を高め、円高方向への圧力をかけます。

単独介入と協調介入の違い

為替介入には「単独介入」と「協調介入」があります。単独介入は日本だけで行うもので、効果は限定的になりがちです。一方、協調介入は複数の国が同時に介入するもので、より大きな効果が期待できます。

過去の協調介入の代表例としては、1985年のプラザ合意によるドル高是正、1995年の「七夕介入」、2011年の東日本大震災後のG7協調介入などがあります。2011年の介入では、円相場を1ドル=76円25銭から81円台まで押し戻すことに成功しました。

2022年以降の介入実績を振り返る

2022年:24年ぶりの円買い介入

2022年9月、急速な円安が進行し1ドル=145円台まで下落したことを受け、政府・日銀は24年ぶりとなるドル売り・円買い介入に踏み切りました。9月から10月にかけて断続的に行われ、介入総額は約9.1兆円に達しました。

この介入は一時的に円安の進行を食い止めましたが、その後も円安基調は続き、10月には151円台まで円安が進行しました。

2024年:過去最大規模の介入

2024年4月には日米金利差を背景に円安が一段と進み、1ドル=160円台と34年ぶりの円安水準に達しました。政府・日銀は4月から5月にかけて約9.7兆円という過去最大規模の介入を実施しました。

特筆すべきは、4月29日の祝日や深夜のニューヨーク市場など、市場参加者が少ないタイミングを狙った「覆面介入」が行われたことです。同年7月にもさらに約5.5兆円規模の介入が実施され、2024年の介入総額は累計15兆円超に達しました。

介入のパターンと戦略

2022年と2024年の介入から見えてくるパターンがあります。介入は単発ではなく、同日あるいは数日以内に複数回繰り返される「波状攻撃」として実施されています。

これには重要な意図があります。リバウンドを抑えるとともに、「どこまで下がれば安全か分からない」という心理を市場に醸成し、介入がない時でも円売りに慎重にさせる「見えない介入効果」を狙っているのです。

為替介入の効果と限界

「止血剤」としての役割

過去の為替介入は、急激な円安の進行を一時的に食い止める「止血剤」として機能してきました。介入後のドル円の下落幅は4.4%から8.8%程度で、相場の一方的な進行を抑制する効果は確認されています。

この効果は、通貨の需給バランスを変化させる実際の売買に加え、「政府・日銀が介入を行った」という事実がもたらす心理的効果も大きいと考えられています。市場参加者に「これ以上の円安は許容されない」というメッセージを伝える効果があります。

長期的効果の限界

しかし、為替介入の効果は一時的なものにとどまる傾向があります。過去の円買い介入の事例を見ると、介入後1〜2カ月で高値を更新しているケースが多く、長期的なトレンドを変えることは難しいのが実情です。

為替相場は日米の金利差、経済成長率、貿易収支、投資家のリスク選好など、多くの要因によって決まります。これらの根本的な要因が変わらない限り、介入による効果は持続しにくいのです。

ファンダメンタルズの変化が鍵

ただし、ファンダメンタルズに大きな変化が生じている場合は、介入効果がより長続きする可能性があります。2024年後半には米FRBの利下げ観測が強まり、日米金利差の縮小期待が円安を食い止める追い風となりました。

介入そのものの効果に加え、こうした経済環境の変化が重なることで、為替トレンドの転換点を形成しやすくなります。

2026年1月の市場動向

急速に高まる介入警戒

2026年1月23日、円相場は劇的な動きを見せました。日銀の植田総裁による金融政策決定会合後の会見中、円相場は一時159円台まで円安に振れましたが、その後急激に反転し155円台まで急騰しました。

市場では日本政府と日銀が「レートチェック」を実施したとの観測が広がりました。レートチェックとは、金融機関に為替レートの状況を確認する行為で、介入の準備段階とされています。

日米協調介入への思惑

今回特に注目されているのは、米国当局もレートチェックを実施した可能性があるとの見方です。これが事実であれば、日米協調での為替介入が視野に入っていることを示唆します。

26日の市場では円が一時153円台半ばまで上昇し、協調介入への警戒感から円買い・ドル売りの動きが加速しました。「どこで介入が入るか分からない」という不透明感が、投機的な円売りポジションの手仕舞いを促しています。

財務省の警戒レベル

片山さつき財務相は「為替の過度で無秩序な動きに対しては断固として措置を取る」と発言し、介入の可否には「フリーハンドがある」と述べています。市場関係者の間では、現時点の警戒度は5段階中の第4段階に相当すると判断されています。

協調介入は実現するか

米国の姿勢

2026年1月14日の日米財務省会談後、ベッセント財務長官は日本の為替介入に一定の理解を示したとされます。ただし、円安是正には日本銀行の金融政策正常化の継続がより重要だとの認識も示されました。

歴史的に見て、米国が協調介入に参加するのは「危機対応」のケースが中心です。1998年のアジア危機時や2011年の東日本大震災時のような、世界経済への悪影響が懸念される局面でなければ、米国の参加は容易ではありません。

介入余力は十分

日本側の介入余力については、米国債の売却など実務上の制約を考慮しても、1,870億ドル程度の円買い介入が可能と見られています。これは2022年と2024年の介入1回当たり平均の約8倍に相当し、介入原資としては十分な水準です。

ただし、米財務省のイエレン前長官が2024年に「為替介入がまれであることを願う」とけん制したように、頻繁な介入は国際的な批判を招くリスクもあります。

今後の展望と注意点

金融政策との連携が重要

為替介入はあくまで「時間稼ぎ」の手段です。持続的な円安是正には、日銀による金融政策の正常化が不可欠です。日銀は2025年12月に利上げを実施し、政策金利は0.75%程度まで上昇しましたが、米国との金利差はなお大きい状況です。

今後の利上げペースと、米FRBの金融政策動向が、為替相場の方向性を決める重要な要因となります。

市場参加者への影響

為替介入への警戒が高まると、投機的なポジションを持つことのリスクが増大します。「いつ介入が入るか分からない」という不透明感は、値幅を大きくし、ボラティリティを高める要因となります。

輸出入企業や海外投資を行う個人投資家は、為替変動リスクへの備えを強化する必要があります。

まとめ

円買い為替介入は、急激な円安進行を抑える「止血剤」として機能しますが、その効果は一時的です。長期的な為替トレンドを変えるには、金利差の縮小など経済のファンダメンタルズの変化が必要になります。

2026年1月現在、日米協調介入への思惑が市場で広がり、円高・ドル安方向への圧力が強まっています。ただし、米国が協調介入に実際に参加するかどうかは不透明であり、「レートチェック」止まりとなる可能性もあります。

為替相場は今後も不安定な動きが続く可能性があります。急激な相場変動に巻き込まれないよう、最新の情報を注視しつつ、リスク管理を徹底することが重要です。

参考資料:

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