円、10分で2円急騰 日銀総裁会見後に介入観測浮上
はじめに
2026年1月23日の外国為替市場で、円相場が対ドルで乱高下しました。日銀の植田和男総裁の記者会見後、1ドル=159円台前半まで下落していた円相場が、わずか10分間で約2円急騰する場面がありました。
この急激な変動を受け、市場では政府・日銀が円安抑止に向けて「レートチェック」を実施したのではないかとの臆測が浮上しました。片山さつき財務相は介入について「お答えできない」と述べ、緊張感が漂う展開となりました。
1月23日の為替市場の動き
日銀会合後の円売り
日銀は1月22〜23日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%で据え置くことを決定しました。その後の植田総裁の記者会見では、追加利上げに積極的な姿勢が示されなかったと市場は受け止めました。
植田総裁は会見で、0.75%の利上げ後も金融環境は緩和した状態であること、基調的な物価上昇率はまだ2%に距離があることなどを説明しました。具体的な利上げ時期への言及はありませんでした。
この「ハト派的」と捉えられた発言を受け、日米金利差が想定より縮小しないとの思惑から円売りが加速。会見終了後の午後4時半頃には、1ドル=159円20銭台まで円安が進みました。
10分間で約2円の急騰
ところが、その直後に状況が一変します。159円台前半で推移していた円相場が、約10分間で157円30銭台まで急騰しました。約1.8〜2円という急激な変動は、市場参加者に衝撃を与えました。
午後5時時点では、前日比40銭円高ドル安の1ドル=158円37〜40銭で落ち着きました。
「レートチェック」実施の観測
レートチェックとは
市場では、この急変動の背景に政府・日銀による「レートチェック」があったのではないかとの見方が広がりました。
レートチェックとは、日銀が主要な金融機関に対し、現在の為替レートを照会する行為です。実際の為替介入の前段階として行われることが多く、当局が相場の動きを注視しているシグナルとなります。
為替介入のプロセスは通常、以下の段階を踏んでエスカレートします。
- 口先介入:政府高官による牽制発言
- レートチェック:日銀による相場照会
- 実弾介入:実際の市場介入
財務相の対応
片山さつき財務相は記者団に対し、介入について「お答えできない。緊張感を持って見守っている」と述べました。三村財務官も為替介入かどうかの質問に「答えるつもりはない」と発言しています。
当局が介入の有無を明らかにしないのは通常の対応ですが、この姿勢自体が市場への牽制となっています。
ニューヨーク市場での展開
155円台への急落
1月23日夜のニューヨーク市場でも、円高の動きが続きました。ドル円は一時155円台まで急落し、1日としては約6か月ぶりの大幅な円高となりました。
市場関係者によると、ニューヨーク連銀が主要銀行に対し、参考となる為替レートの提示を求めるレートチェックを実施したとの情報が伝わりました。米国側でも介入に備えた動きがあるのではないかとの憶測が広がり、円買い・ドル売りが加速しました。
日米連携の可能性
日本と米国の両方でレートチェックが実施された可能性があることは、日米当局が連携して円安に対処しようとしているシグナルと受け止められました。2024年に161.95円の高値をつけた際にも介入が行われており、159円〜160円台は介入警戒ゾーンとして認識されています。
介入をめぐる背景
「断固たる措置」への段階
為替介入(正式名称:外国為替平衡操作)は、急激な相場変動を抑えるために財務大臣の権限で実施され、日銀が実務を担います。
片山財務相の「緊張感を持って見守っている」という表現は、口先介入の段階が進んでいることを示唆しています。専門家によると、現時点の警戒度は5段階中の第4段階に相当するとみられています。
米国の姿勢
2026年1月14日の日米財務相会談後の概要によると、ベッセント米財務長官は日本の為替介入に一定の理解を示しつつも、円安是正には日銀の金融政策正常化の継続がより重要だとの見方を示したとされています。
米国としては、日本が自国通貨を一方的に安くしていると見なされることへの懸念がある一方、急激な市場変動を防ぐための介入には理解を示す姿勢です。
注意点・今後の展望
介入警戒ゾーン
159円〜160円台は、2024年の高値圏に近い水準であり、介入警戒ゾーンとして認識されています。この水準に近づくたびに、市場参加者は当局の動きに神経を尖らせることになります。
日銀の金融政策との関連
根本的な円安要因は、日米の金利差にあります。日銀が利上げを継続し、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに転じれば、金利差は縮小し、円高方向への圧力が生じます。
ただし、日銀の利上げペースは慎重であり、すぐに大幅な金利差縮小が実現するわけではありません。当面は、介入警戒と金融政策への思惑が交錯する展開が続きそうです。
2月の総選挙への影響
2月8日に衆議院選挙の投開票が予定されており、為替相場の動向が選挙戦に影響を与える可能性もあります。急激な円安は物価高を助長し、有権者の不満につながる恐れがあるため、政府としては円安抑止に敏感にならざるを得ない状況です。
まとめ
日銀の植田総裁会見後に円相場が10分間で約2円急騰した動きは、市場に大きなインパクトを与えました。政府・日銀によるレートチェック実施の観測が浮上し、為替介入への警戒感が高まっています。
159円台という水準は介入警戒ゾーンであり、今後も当局の動向に注目が集まります。根本的な円安是正には日銀の利上げ継続が重要ですが、急激な変動に対しては介入で対応する姿勢が示されています。
為替市場のボラティリティが高まる中、投資家は慎重な対応が求められます。
参考資料:
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