アルファベットが時価総額4兆ドル到達、AI競争で存在感

by nicoxz

はじめに

2026年1月12日、米グーグルの持ち株会社アルファベット(Alphabet)の時価総額が一時4兆ドル(約630兆円)に到達しました。これにより同社は、エヌビディア、マイクロソフト、アップルに続く「4兆ドルクラブ」の4社目のメンバーとなりました。

この歴史的マイルストーン達成の背景には、アップルがグーグルの生成AI「Gemini」を採用するという大型提携の発表がありました。AI競争で出遅れていたアップルが、SiriのAI機能強化にGeminiを活用することで、グーグルへの投資回収期待が一気に高まったのです。

この記事では、アルファベットの4兆ドル到達の意義、アップルとの提携内容、そしてAI覇権争いにおける各社の立ち位置について解説します。

4兆ドルクラブの歴史と意義

時価総額の歴史的マイルストーン

企業の時価総額が4兆ドルに到達することは、極めて稀な出来事です。その歴史を振り返ってみましょう。

最初に4兆ドルの壁を突破したのはエヌビディアでした。2025年7月9日、AI半導体への需要拡大を背景に、同社は史上初めて時価総額4兆ドルに到達しました。2023年6月に1兆ドルを超えてからわずか2年余りで、さらに3兆ドルを上乗せした計算になります。

その約3週間後、マイクロソフトが2社目として4兆ドルクラブ入りを果たしました。同社もOpenAIへの投資を通じてAI分野での存在感を強めており、クラウドサービスAzureへのAI機能統合が評価されました。

アップルは、2018年に史上初の1兆ドル企業となり、2020年には2兆ドル、2022年には3兆ドルと、時価総額の「初到達」記録を次々と塗り替えてきました。しかし4兆ドルへの到達では、エヌビディアとマイクロソフトに先を越されることになりました。

アルファベット、4社目の快挙

そして2026年1月12日、アルファベットが4社目として4兆ドルに到達しました。株価は331.86ドルで取引を終え、時価総額は4兆ドルをわずかに上回りました。

注目すべきは、アルファベットがアップルを追い抜いて時価総額で世界2位になったことです。これは2019年以来のことで、アップルの時価総額は約3.84兆ドルとなっています。アルファベットの株価は2025年に65%上昇しており、これは2009年の金融危機後以来の急騰でした。

アップル・グーグル AI提携の衝撃

提携の内容

4兆ドル到達の直接的なきっかけとなったのは、アップルとグーグルの大型AI提携の発表です。

両社の共同声明によると、「アップルとグーグルは複数年にわたる協力関係を締結し、次世代のApple Foundation ModelsはGoogleのGeminiモデルとクラウド技術をベースにすることになります。これらのモデルは、2026年中に登場予定のよりパーソナライズされたSiriを含む、将来のApple Intelligence機能を支える」とのことです。

アップルは声明で「慎重な評価の結果、GoogleのテクノロジーがApple Foundation Modelsに最も適した基盤を提供すると判断しました。これによりユーザーに革新的な新体験を届けられることを楽しみにしています」と述べています。

年間約10億ドルの契約

ブルームバーグの報道によると、アップルはこのAI提携でアルファベットに年間約10億ドルを支払う見込みです。これはグーグルがiPhoneのデフォルト検索エンジンとなるために支払っている年間数百億ドル規模の契約とは逆方向の支払いとなりますが、グーグルにとっては新たな収益源となります。

アップルがGeminiを選んだ理由

アップルが自社開発ではなくグーグルのGeminiを採用した背景には、AI開発における深刻な遅れがあります。

Siriは2011年にiPhone 4Sと共に発表された革新的な音声アシスタントでしたが、その後の進化は停滞しました。GoogleアシスタントやAmazon Alexa、そして2022年末に登場したChatGPTに大きく引き離され、ユーザーからの不満の声が高まっていました。

アップルはプライバシー保護を重視し、ユーザーデータをデバイス内で処理する「オンデバイス処理」を追求してきました。しかしこのアプローチは、大量のデータを活用してAIモデルを訓練するグーグルやAmazonに対して不利に働きました。

当初iPhone 16と同時に発表される予定だったSiriの大幅アップグレードは延期を重ね、2026年まで持ち越されていました。もはや自社単独でのキャッチアップは困難と判断し、グーグルとの提携に踏み切ったとみられます。

グーグルGeminiの技術力

Geminiとは

Geminiは、グーグルが開発した最新の生成AIモデルです。従来のテキスト中心のAIから脱却し、画像、音声、動画、コードなどあらゆる情報を同時に理解・生成できる「ネイティブマルチモーダルAI」として設計されています。

最新のGemini 3シリーズは、推論能力において業界最先端を誇ります。複雑な問題の重なり合う層を分解し、深みとニュアンスを把握する能力に優れています。

圧倒的な普及実績

グーグルのAIは既に広範に利用されています。AI Overviews(AI検索機能)は毎月20億人のユーザーを抱え、Geminiアプリは月間6億5000万人以上のユーザーに利用されています。クラウド顧客の70%以上がグーグルのAIを使用し、1300万人の開発者がグーグルの生成モデルで開発を行っています。

インフラ面での優位性

Geminiの開発には、グーグル独自設計のAIアクセラレータ「TPU v5p」と次世代チップが活用されています。これにより前例のない規模での高速な学習と推論が可能になりました。アップルが独自にこうしたインフラを構築するには膨大な投資と時間が必要であり、グーグルとの提携は合理的な選択といえます。

AI競争における各社の立ち位置

エヌビディア:AI半導体の覇者

時価総額で世界トップに君臨するエヌビディアは、AI向けGPU市場で圧倒的シェアを誇ります。現在の時価総額は約4.5兆ドルに達し、AIブームの最大の受益者となっています。

同社のGPUは、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデルの学習に不可欠であり、グーグル、マイクロソフト、メタなど大手テック企業からの需要が絶えません。

マイクロソフト:OpenAI連合の中核

マイクロソフトはOpenAIへの大規模投資を通じて、GPT-4などの最先端AIモデルをいち早く自社製品に統合してきました。Microsoft 365へのCopilot機能搭載、Azure AIサービスの拡充など、エンタープライズ市場でのAI展開が順調に進んでいます。

メタ:オープンソース戦略

メタ(旧フェイスブック)はLlamaシリーズをオープンソースで公開し、独自のポジションを確立しています。まだ4兆ドルには到達していませんが、AI研究分野での存在感は大きく、次の4兆ドルクラブ入り候補とされています。

アップル:巻き返しなるか

今回のグーグルとの提携で、アップルはAI競争での遅れを取り戻す足がかりを得ました。よりパーソナライズされたSiriは2026年3月か4月のiOS 26.4で登場予定とされ、画面認識やアプリごとの詳細な制御など新機能が追加される見込みです。

ただし、アップルがグーグルに依存することで、同社の強みであった「ハードウェアとソフトウェアの垂直統合」という独自性が薄れるリスクもあります。

今後の展望と投資家への示唆

AI投資のさらなる加速

今回のアルファベットの4兆ドル到達は、市場がAI関連投資に対して引き続き強気であることを示しています。各社のAIへの投資競争は今後も続く見通しで、半導体、クラウドインフラ、ソフトウェアなど関連分野への波及効果も期待されます。

注目すべきリスク要因

一方で、以下のリスク要因にも注意が必要です。

まず規制リスクがあります。グーグルは検索市場での独占に関する訴訟を抱えており、今回のアップルとの提携が規制当局の注目を集める可能性があります。

また、技術競争の激化も挙げられます。OpenAI、Anthropicなどのスタートアップや、中国企業の台頭により、AI競争は一層激しくなっています。現在の優位性が将来も続く保証はありません。

日本企業への影響

日本企業にとっても、この動きは無関係ではありません。AI技術の活用は製造業からサービス業まであらゆる分野で進んでおり、グローバルなAI競争の行方は日本企業の競争力にも影響を与えます。

まとめ

アルファベットの時価総額4兆ドル到達は、AI時代における同社の存在感を改めて印象づけました。アップルとのAI提携は、グーグルの技術力の高さを証明すると同時に、AI競争で出遅れた企業が挽回することの難しさも示しています。

「4兆ドルクラブ」は現在、エヌビディア、マイクロソフト、アップル、アルファベットの4社で構成されています。いずれもAI関連で強みを持つ企業であり、AI技術が企業価値を大きく左右する時代が本格的に到来したといえるでしょう。

参考資料:

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