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by nicoxz

日銀、景気・物価に強気で利上げ路線継続へ 成長率を上方修正

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はじめに

日本銀行は2026年1月23日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%程度に据え置く一方、経済・物価見通しを上方修正しました。政府の経済対策効果に加え、企業の賃上げ継続が消費を支え、物価も上昇する「好循環」を見込んでいます。

日銀は景気と物価の安定に強気の姿勢を示しており、2026年以降も利上げを継続する方針です。市場では4月の追加利上げ観測が高まっていますが、与野党が消費税減税を掲げて戦う衆院選がかく乱要因として意識されています。

本記事では、1月会合の決定内容と展望レポートの修正点、今後の金融政策の見通しを解説します。

1月金融政策決定会合の決定内容

政策金利は据え置き

日銀は1月23日の会合で、政策金利を0.75%程度に維持することを賛成多数で決定しました。2025年12月の利上げから1カ月余りで、当面は国内の経済・物価への影響を見極める方針です。

ただし、高田創審議委員は「物価目標はおおむね達成されている」として反対票を投じました。物価の上振れリスクが高いとして1.0%程度への利上げを提案しましたが、否決されました。

展望レポートの上方修正

同時に公表された「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、2025年度と2026年度の実質成長率見通しが上方修正されました。

成長率見通し:

  • 2025年度:上方修正(12月の基準改定の影響)
  • 2026年度:1.0%に上方修正(経済対策効果を反映)

物価見通し: 消費者物価(除く生鮮食品)の見通しも上方修正されました。円安による輸入物価の上振れに加え、コメを中心とした食料品価格の上昇が反映されています。

経済対策の効果を織り込む

上方修正の主因は、政府の21.3兆円規模の総合経済対策です。物価高対策や賃上げ支援策が、2026年度の成長率を押し上げると日銀は見込んでいます。

また、米国経済の堅調さや、トランプ政権の関税政策に対する不確実性の後退も、見通しの上方修正を支える要因として挙げられています。

賃上げと消費の好循環への期待

2025年春闘の成果

2025年春闘では、構造的な人手不足を背景に5%を超える高い賃上げ率が実現しました。ただし、物価上昇率がそれを上回ったため、実質賃金はマイナス圏での推移が続き、個人消費の回復は緩慢でした。

2026年の好循環シナリオ

日銀が期待するのは、2026年に「賃上げ→実質賃金プラス→消費拡大→企業収益向上→さらなる賃上げ」という好循環が回り始めることです。

専門家の予測では、2026年は以下の展開が見込まれています。

  • インフレ率が鈍化し、2%台前半に落ち着く
  • 2025年並みの名目賃金上昇が継続
  • 実質賃金が安定してプラスに転じる
  • 停滞していた個人消費が徐々に回復

この好循環が実現すれば、日銀は「中立金利」とされる1%程度に向けて、さらに1〜2回の利上げを行う可能性があります。

植田総裁の手応え

植田和男総裁は2025年12月の講演で、賃金と物価の持続的な上昇に手応えを示しました。「インフレ率、成長率とも下振れリスクが低下した」とし、「見通し期間の後半には基調的な物価上昇率が2%目標と整合的な水準で推移する見通しが実現する確度は高まった」との自信を示しています。

今後の利上げスケジュール

市場の予想

市場では、次の利上げ時期として「2026年前半」との予想が多数を占めています。特に4月と7月の会合が注目されています。

野村證券の分析によると、7月の会合での25ベーシスポイント(0.25%)の利上げは、市場にほぼ完全に織り込まれています。

利上げの判断材料

日銀が利上げを判断する際に重視するのは以下のポイントです。

  • 春闘の結果:2026年の賃上げ率がどの程度になるか
  • 実質賃金の動向:プラス転換が定着するか
  • 個人消費の回復:賃上げ効果が消費に波及するか
  • インフレ率:2%目標に向けた安定的な推移

特に、3月末に判明する春闘の第1回回答結果は、4月会合での判断に大きな影響を与えるとみられています。

30年ぶりの金利水準

2025年12月の利上げで政策金利は0.75%となり、1995年以来30年ぶりの高水準に達しました。さらに利上げが続けば、日本経済は本格的な「金利のある世界」に移行することになります。

衆院選がかく乱要因に

消費税減税と財政規律

2月8日投開票の衆院選では、与野党が消費税減税を競い合っています。食料品の消費税ゼロを掲げる政党が多く、財政赤字拡大への懸念が高まっています。

大規模な減税は財政規律の緩みを連想させ、長期金利の上昇や円安を招く可能性があります。実際、約27年ぶりの水準に上昇した長期金利は、市場の不安を反映しているとの見方もあります。

金融政策への影響

選挙結果次第では、政府と日銀の政策協調のあり方にも影響が出る可能性があります。減税による景気刺激と、日銀の利上げ路線が矛盾する場面も想定されます。

植田総裁は記者会見で選挙への直接的な言及を避けましたが、「経済・物価情勢を慎重に見極めながら判断する」との姿勢を示しています。

残る課題とリスク

中小企業への波及

賃上げの恩恵が中小企業まで十分に浸透するかは、依然として課題です。大企業と中小企業の賃金格差が拡大すれば、消費の回復は限定的になる可能性があります。

元日銀理事の門間一夫氏は「日本経済は構造的に強くない。経済が弱くても物価が上がれば利上げしないといけないという厄介な事態だ」と指摘しています。

円安と輸入物価

円安が続けば、輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力が高まります。植田総裁も1月の会見で「円安による輸入物価の上昇が国内価格に転嫁される度合いが大きくなっている可能性に注意したい」と警戒感をにじませました。

利上げには円安抑制効果が期待される一方、景気への悪影響も懸念されます。日銀は「効果と副作用のバランス」を慎重に見極める必要があります。

海外経済のリスク

米国の金融政策や、トランプ政権の関税政策も不確実性の要因です。米国経済が減速すれば、日本の輸出や企業収益に影響し、好循環シナリオが崩れるリスクがあります。

まとめ

日銀は1月の金融政策決定会合で、景気と物価の見通しに強気の姿勢を示しました。政府の経済対策効果と賃上げ継続を背景に、成長率見通しを上方修正し、利上げ路線の継続を明確にしています。

市場では4月の追加利上げ観測が高まっていますが、衆院選での消費税減税議論がかく乱要因として意識されています。また、賃上げが中小企業まで浸透するか、円安による物価上振れリスクなど、課題も残っています。

2026年は、「賃上げと消費の好循環」が本格化するか否かの正念場となりそうです。春闘の結果と日銀の判断に注目が集まります。

参考資料:

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