日銀、1月会合は金利据え置きへ―成長率見通し上方修正の背景
はじめに
日本銀行は2026年1月22日から23日にかけて開催する金融政策決定会合で、政策金利を現在の0.75%に据え置く見通しです。2025年12月に約11カ月ぶりとなる利上げを実施したばかりであり、その影響を見極める必要があるためです。一方で、政府の経済対策の効果などを反映し、2025~26年度の経済成長率見通しは上方修正される見込みです。
日銀が約30年ぶりの水準まで政策金利を引き上げた後、どのようなペースで金融正常化を進めるのか。今回の会合は、日銀の今後の利上げシナリオを占う上で重要な節目となります。
2025年12月利上げの背景と意味
30年ぶりの0.75%への引き上げ
日本銀行は2025年12月18~19日の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コール翌日物金利の誘導目標)を0.5%から0.75%へ0.25%引き上げることを全会一致で決定しました。この水準は1995年以来、約30年ぶりの高さとなります。
利上げの根拠として、日銀は声明文で「米国経済や各国の金融政策の影響を巡る不確実性は引き続き残っているものの、低下している」ことや、「来年(2026年)は、今年(2025年)に続き、しっかりとした賃上げが実施される可能性が高い」ことを指摘しました。
利上げ後も緩和的環境は維持
重要なのは、利上げ後も実質金利は大幅なマイナスが続き、「緩和的な金融環境は維持される」という日銀の認識です。植田和男総裁は「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」との方針を改めて示しました。
市場では、2026年9月会合までに0.25%の追加利上げが実施され、政策金利が中立金利の下限とされる1.0%に到達するとのシナリオが既に織り込まれています。
1月会合で据え置きとなる理由
利上げ効果の見極め期間
2025年12月の利上げから1カ月余りしか経過していないため、1月会合では金利を据え置き、経済・物価への影響を見極める時間が必要です。日銀は急激な利上げによる経済への悪影響を避け、慎重なペースで金融正常化を進める方針を維持しています。
不確実性への配慮
米国経済の先行き不透明感や、トランプ新政権の関税政策などの不確実性も、日銀が慎重姿勢を維持する要因です。植田総裁は2026年1月5日の発言で「インフレ率、成長率とも下振れリスクが低下した」としつつも、外部環境の変化には引き続き注意を払う姿勢を示しています。
賃金・物価の好循環を確認
日銀は「賃金と物価の上昇が維持される」メカニズムが定着しつつあるとの手応えを得ています。2026年の春闘でも前年に続き「しっかりとした賃上げ」が実施される見込みであり、この動向を確認する意味でも、1月会合では現状維持が適切と判断されています。
成長率見通しの上方修正
21.3兆円規模の経済対策効果
1月会合では3カ月に1度更新する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめます。22、23日の会合では、米経済と米関税政策の不確実性が後退したことに加え、21.3兆円規模の政府経済対策の効果を織り込み、2026年度の実質GDP成長率見通しを上方修正する見通しです。
2025年度についても、引き上げられる可能性があると報じられています。2025年10月の前回展望リポートの数値からどの程度上方修正されるかが注目されます。
物価見通しの動向
コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)については、2026年度前半に一時的に2%を下回る可能性が指摘されています。しかし日銀は、これを一時的な現象と捉え、中長期的には賃金と物価の好循環が維持されると見ています。
経済対策による家計支援策が物価上昇率を一時的に押し下げる効果も考慮されるでしょう。
今後の利上げシナリオ
次回利上げは2026年前半か後半か
市場では次回利上げについて見解が分かれています。一部のエコノミストは「2026年前半」を予想していますが、米国経済の減速懸念や円高進行の可能性を考慮し、「2026年後半(9月頃)」とする慎重な見方もあります。
日銀自身は具体的な利上げ時期を明示せず、「経済・物価の見通しが実現していくとすれば」という条件付きで利上げ継続方針を示すにとどめています。
中立金利1.0%への道筋
市場が織り込む中立金利の下限1.0%に到達するには、現在の0.75%からあと0.25%の利上げが必要です。日銀がこの水準を目指すとすれば、2026年中にもう1回の利上げが実施される計算になります。
ただし、中立金利の水準自体が明確に定まっているわけではなく、日銀は経済情勢を見ながら柔軟に判断していく姿勢です。
高市政権との関係
日銀と高市早苗政権の間には、金融政策を巡る緊張関係が続いています。政府は経済への悪影響を懸念して利上げに慎重な姿勢を求める一方、日銀は物価目標の実現と息の長い成長のために利上げ継続が必要との立場です。
この政治と中央銀行の微妙な関係が、今後の利上げペースにどう影響するかも注目されます。
注意点・展望
海外要因のリスク
米国のトランプ新政権が打ち出す経済政策や関税政策の影響は依然として不透明です。米国経済が予想以上に減速した場合、円高が進行し、日本の輸出企業の収益や物価上昇率に影響を与える可能性があります。
日銀は国内要因だけでなく、こうした海外要因も慎重に見極めながら、利上げのタイミングを判断する必要があります。
賃上げの持続性
2026年春闘で前年並みの賃上げが実現するかどうかは、日銀の政策判断において極めて重要です。企業収益が堅調で労働需給が引き締まった状態が続けば、賃上げは持続可能ですが、景気減速の兆しが見えれば、賃上げペースが鈍化するリスクもあります。
長期金利の動向
日銀の利上げに伴い、長期金利(10年物国債利回り)も節目の2%台に上昇しています。住宅ローン金利など家計への影響が徐々に顕在化する可能性があり、利上げペースを急ぎすぎると消費や住宅投資を冷やすリスクがあります。
まとめ
日本銀行は2026年1月会合で政策金利を0.75%に据え置き、2025年12月の利上げ効果を見極める方針です。一方で、政府の経済対策効果などを反映し、経済成長率見通しは上方修正される見込みです。
植田総裁は利上げ継続の方針を明確にしていますが、そのペースは慎重なものとなるでしょう。次回利上げは2026年前半から後半にかけて実施される可能性が高く、中立金利とされる1.0%への到達が当面の目標となります。
賃金と物価の好循環が定着しつつある中、日銀がいかにバランスを取りながら金融正常化を進めるか。1月会合で示される展望レポートの内容と、植田総裁の記者会見での発言が、今後の政策運営を読み解く重要な手がかりとなります。
参考資料:
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