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by nicoxz

中国の軍拡加速とデフレ深刻化、経済と安全保障の両立困難に

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はじめに

中国が加速度的に軍備増強を進めています。2025年の国防費は前年比7.2%増の約36兆8,000億円に達し、4年連続で7%を超える伸び率を記録しました。人民解放軍の創設100周年を迎える2027年に向けて、習近平国家主席が掲げる「世界一流の軍隊」建設への歩みは止まりません。

しかし、その足元では経済の停滞が深刻化しています。2025年の消費者物価指数(CPI)は前年比0.0%と16年ぶりの低水準を記録し、デフレ圧力が強まっています。不動産不況は4年連続で続き、景気回復の兆しは見えません。

経済減速下での軍拡継続は、中国財政にどのような影響を与えるのか。そして、この状況は日本を含む周辺国にとって何を意味するのか。本記事では、中国が直面する「軍拡とデフレ」という二重の課題について解説します。

中国の軍拡の現状

国防費の急拡大

中国国務院が2025年3月に発表した2025年の国防費は、前年比7.2%増の1兆7,846億元(約36兆7,600億円)です。これは日本の防衛費の約4.2倍に相当し、中国の経済成長率(実質GDP成長率5.0%)を上回る伸び率となっています。

4年連続で7%を超える国防費の増加は、経済が減速する中でも軍拡を最優先とする習近平政権の姿勢を明確に示しています。トランプ米政権が中国やロシアに国防費削減を呼びかける状況においても、中国は軍拡路線を堅持する方針を鮮明にしました。

2027年「建軍100周年」への布石

中国人民解放軍は2027年8月に創設100周年を迎えます。習近平国家主席は、この節目に向けて「機械化・情報化・スマート化の融合的発展」による軍の近代化を推進しています。

米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は、習近平主席が「2027年までに台湾侵攻を成功させるための準備を人民解放軍に指示した」ことをインテリジェンスとして把握していると述べています。侵攻を決定したわけではないものの、その「関心と野心の真剣さ」が表れているとの分析です。

2027年は習氏の3期目任期満了の年でもあり、台湾統一に向けた成果を示すことで4期目への足がかりとする思惑も指摘されています。

核戦力と通常戦力の増強

米国防総省の2025年中国軍事力報告書によると、中国は「歴史的に急速な核増強」を実行中です。数百発だった運用可能な核弾頭は600発以上に増加し、2030年代には1,000発を超える可能性があります。

通常戦力においても、台湾に対する複数の軍事オプション(上陸侵攻、火力攻撃、海上封鎖など)の精緻化を進めています。2024年には海上・陸上目標への攻撃、太平洋における米軍への攻撃、主要港湾の封鎖などの訓練を実施しました。攻撃能力は中国から1,500〜2,000海里に及ぶとされています。

台湾周辺での軍事活動の激化

「聯合利剣-2025」演習

2025年12月29〜30日、中国軍は「聯合利剣-2025(Justice Mission-2025)」と名付けた大規模演習を実施しました。海軍、空軍、ロケット軍などが参加し、「海空戦闘即応巡視」「総合的優位の確保」「主要港湾・領土の封鎖」「三次元外縁抑止」を訓練項目として掲げました。

この演習は2022年8月以降に実施された6回の大規模演習の中で最大規模となり、台湾の防空識別圏に130機以上の航空機が進入し、14隻の艦艇が動員されました。従来の示威行動とは異なり、全面戦争に至らない強制シナリオ、特に台湾を経済的・政治的に締め上げる封鎖や検疫の実践訓練と解釈されています。

米国の大型武器売却との関連

中国当局はこの軍事的エスカレーションを、2025年12月に承認された約110億ドル規模の米国による台湾への大型武器売却に結びつけて説明しています。これは過去数年で最大規模の武器売却の一つとされています。

2025年末時点で、中国と台湾の緊張は近年で最も高いレベルに達しています。米国の軍事支援拡大、地域同盟国からの警告、中国の軍事演習が相互に作用し、緊張が高まる構図となっています。

深刻化するデフレと経済停滞

2025年の経済実績

中国国家統計局が発表した2025年の実質GDP成長率は前年比5.0%増で、政府目標の「5%前後」を達成しました。しかし、名目GDP成長率は3.9%にとどまり、実質成長率を下回る「名実逆転」が8四半期連続で続いています。これはデフレ状態にあることを示す重要な指標です。

2025年の消費者物価指数(CPI)は前年比0.0%と横ばいでした。マイナスを記録した2009年以来、16年ぶりの低水準です。需要不足と価格競争の激化により、物価が上がりにくい状況が続いています。

不動産不況の長期化

2025年の不動産開発投資は前年比17.2%減となり、4年連続のマイナスを記録しました。下げ幅は2024年の10.6%減より拡大しており、住宅や商業施設の販売面積も8.7%減と、不動産市場が上向く兆しは見られません。

不動産セクターは中国GDPの約3割を占めるとされ、その長期低迷は経済全体に深刻な影響を与えています。地方政府の土地売却収入が減少し、財政悪化も進行しています。

「債務デフレ」のリスク

景気の回復がもたつき、企業収益や家計所得が伸び悩む中、「債務デフレ」のリスクが高まっています。中国の総債務はGDPの約3倍に達しており、名目成長率が低迷すれば借金返済の負担感が増大します。

経済全体のインフレ圧力を測るGDPデフレーターは8四半期連続でマイナスとなっており、デフレからの脱却は困難な状況です。

軍拡と経済停滞のジレンマ

財政への影響

経済減速下で国防費を毎年7%以上増やし続けることは、財政に大きな負担を与えます。中国の国防費の対GDP比率は約1.7%とされていますが、専門家の間では「国家財政支出に計上されている国防費は全軍事支出の一部にすぎない」との指摘もあります。

歴史的な教訓として、冷戦期のソ連は国民所得が米国の3分の1から半分という状況下で、軍事的優位を求めて防衛支出を増大させ続け、最終的に経済崩壊を招いたとされています。中国がこの教訓をどう認識しているかは注目点です。

内需刺激と軍拡の優先順位

デフレ脱却のためには内需刺激策が必要ですが、軍拡に資源を振り向ければ、消費者向けの経済対策に回せる財源は減少します。2025年には耐久消費財への補助金政策が実施されましたが、2026年以降はその反動減も懸念されています。

大和総研は2026年の中国の実質GDP成長率を4.4%程度に減速すると予測しており、IMFも米中関税引き上げ等を反映して2025年・2026年いずれも4.0%と見通しを引き下げています。

社会不安への懸念

経済停滞が長期化すれば、雇用や所得への影響を通じて社会不安が高まる可能性があります。習近平政権にとって、経済成長の鈍化は政権基盤を揺るがしかねないリスク要因です。

一方で、軍拡や対外的な強硬姿勢は、国内のナショナリズムを喚起し、経済問題から国民の目をそらす効果もあるとの見方もあります。

日本と周辺国への影響

安全保障環境の変化

中国の軍拡は、日本を含む周辺国の安全保障環境に直接的な影響を与えます。台湾有事のシナリオでは、日本の南西諸島が軍事的な影響範囲に入る可能性があり、日米同盟の抑止力強化が急務となっています。

フィリピンや日本が台湾問題に関与する姿勢を強めており、2027年に向けて地域の緊張は高まる可能性があります。

経済的な相互依存

中国はデフレ下にあっても日本にとって最大の貿易相手国であり、サプライチェーンの観点からも深い相互依存関係にあります。中国経済の停滞は、日本企業の業績や日本経済全体にも影響を及ぼします。

軍事的緊張と経済的相互依存という二律背反の中で、日本は難しい舵取りを迫られています。

今後の展望と注意点

2027年への注目

2027年は中国にとって複数の重要な節目が重なる年です。人民解放軍の創設100周年、習近平3期目の最終年、そして秋の共産党大会での4期目への道筋が決まる可能性があります。

米国防総省や専門家の分析では、2027年までに中国は台湾に対する「戦略的決定的勝利」を達成できる能力を持つとされています。ただし、台湾国防部は軍内部の腐敗粛清の影響で、この目標が2035年まで遅延する可能性も示唆しています。

誤算とエスカレーションのリスク

現時点で最も可能性が高いとされるシナリオは、即座の侵攻ではなく、持続的な圧力、誤算、危機のエスカレーションです。台湾周辺での軍事活動が活発化する中、偶発的な衝突が大規模な紛争に発展するリスクは高まっています。

2025年は台湾海峡で銃弾が飛び交うことはありませんでしたが、地域が数十年で最も深刻な試練にどれほど近づいているかという幻想は薄れつつあります。

経済の行方

2026年の政府成長率目標は、2026年3月の全国人民代表大会で発表される予定です。多くのエコノミストは2025年と同じ「5%前後」を予想していますが、4.5%前後に引き下げる方が健全との見方もあります。

デフレからの脱却が困難な状況が続く中、軍拡優先の財政運営が経済回復の足かせとなる可能性は否定できません。

まとめ

中国は2027年の建軍100周年に向けて軍拡を加速させていますが、その足元では深刻なデフレと経済停滞に直面しています。2025年の国防費は前年比7.2%増の約36兆8,000億円に達する一方、消費者物価指数は16年ぶりの低水準となり、デフレ圧力が強まっています。

経済減速下での軍拡継続は、かつてのソ連の轍を踏む可能性も指摘されており、中国は「軍事大国化」と「経済安定」という両立が困難な課題に直面しています。台湾周辺での軍事活動も激化しており、2027年に向けて地域の緊張は高まる見通しです。

日本を含む周辺国にとって、中国の動向を注視しつつ、安全保障と経済の両面でバランスの取れた対応を検討することが重要です。

参考資料:

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