ディスコ株がストップ高、AI半導体需要で好決算の背景を解説
はじめに
2026年1月22日、半導体製造装置大手のディスコ(証券コード:6146)の株価が一時ストップ高となりました。前日比1万円高(17.07%高)の6万8,570円まで買われ、2024年7月に付けた上場来高値に迫る水準です。
好調な決算発表が株価を押し上げました。26年3月期は6期連続の最高益更新が見込まれ、増配も発表されています。AI半導体向けの製造装置需要が業績を牽引しています。
この記事では、ディスコの事業内容と強み、今回の決算内容、そしてAI半導体市場の展望について解説します。
ディスコとはどんな会社か
「切る・削る・磨く」の専門企業
ディスコは1937年に広島県呉市で創業した半導体製造装置メーカーです。元々は「第一製砥所」という砥石メーカーで、社名は英語名「Dai-Ichi Seitosho CO., Ltd.」の頭文字に由来します。
同社は「切る」「削る」「磨く」の3つの技術に特化しています。半導体の製造工程において、シリコンウェーハを細かいチップに切り分けたり、薄く研削したりする装置を手がけています。
主力製品
ダイサ(ダイシングソー): シリコンウェーハを集積回路ごとの細かいチップに切り離す装置です。1万分の1ミリレベルの精度で、割れや欠けを抑えた高品質な加工が可能です。
グラインダ: ウェーハを薄く削る装置です。5マイクロメートルレベルまで薄く研削できます。薄型化が求められるスマートフォンや先端半導体に不可欠な工程を担います。
ポリッシャ: 研削後のウェーハ表面を磨き、微細なダメージ層を除去する装置です。ウェーハを割れにくくする効果があります。
圧倒的な市場シェア
ディスコの最大の強みは、圧倒的な市場シェアです。ダイシングソーで7〜8割、グラインダとポリッシャで6〜7割の世界シェアを握り、いずれも世界首位を維持しています。
特にAI半導体のような先端品向けでは、競合の東京精密では手がけられない領域があり、ディスコがほぼ100%のシェアを占めています。
今回の決算内容
6期連続の最高益
ディスコは1月21日の取引終了後に決算を発表しました。26年3月期第3四半期累計(4〜12月)の連結経常利益は前年同期比8.0%増の1,264億円となりました。
未定としていた通期業績予想も開示され、26年3月期の営業利益は前期比3.2%増の1,721億円を見込んでいます。達成すれば6期連続の過去最高益更新となります。
売上高は3,038億2,800万円(前年同期比11.5%増)、営業利益は1,262億1,200万円(同9.7%増)を達成し、高水準の利益率を維持しています。
24円の増配を発表
業績好調を受けて、配当方針も発表されました。従来未定としていた26年3月期の年間配当は437円で、前期の413円から24円の増配となります。
株主還元の強化は、業績に対する経営陣の自信を示すものと受け止められています。
1〜3月期も過去最高ペース
さらに、1〜3月期の出荷額も四半期ベースで過去最高を記録する見通しが示されました。AI半導体向けにハイスペックの製造装置販売が引き続き好調です。
AI半導体需要が追い風
データセンター投資の拡大
ディスコの好業績を支えているのは、AI半導体への旺盛な需要です。2024年のデータセンター向け資本支出は前年比36%増との試算があり、各社がAI計算資源の拡充に投資を続けています。
NVIDIAが9割のシェアを占めるAI半導体市場では、GPUの需要が急増しています。この流れは2025年以降も継続すると見られ、製造装置メーカーにとっては追い風となっています。
TSMCの生産能力拡大
AI半導体の製造を担うTSMC(台湾積体電路製造)は、2026年までに生産能力を月産ウエハー10万枚まで拡大する計画を立てています。2024年の売上高は前年比33.9%増と過去最高を記録しました。
TSMCの能力増強に伴い、ディスコの製造装置への需要も高まっています。
日本企業の重要な役割
AI半導体の製造工程を支える製造装置と材料の分野は、日本企業が強みを持つ領域です。一部の専門家は、特定の日本企業がなければAI半導体の製造が不可能になるほど重要な役割を担っていると指摘しています。
ディスコは、この分野で圧倒的なシェアと技術力を持つ代表的な企業です。
株式市場の反応
東証プライム上昇率トップ
1月22日の東京株式市場で、ディスコは東証プライム市場の上昇率トップとなりました。前日の米国株市場で半導体関連株が買われ、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が過去最高を更新したことも追い風となりました。
上場来高値に迫る
株価は一時6万8,570円まで上昇し、2024年7月11日に付けた上場来高値6万8,850円(株式分割考慮後)に迫りました。投資家の期待の高さを示しています。
今後の見通しと注意点
成長継続への期待
AI半導体市場は、2026年に向けても成長が続くと予測されています。米金融機関は半導体市場のピークを2026年半ばと見ており、それまでは強い需要環境が続くとの見方が主流です。
ディスコは先端品向けで独占的なシェアを持つため、この成長の恩恵を最も受ける企業の一つと位置づけられています。
リスク要因
一方で、いくつかのリスク要因も認識しておく必要があります。
景気後退リスク: 世界経済が減速した場合、半導体投資が縮小する可能性があります。
米中対立: 米国による対中輸出規制が強化されれば、半導体サプライチェーン全体に影響が及ぶ可能性があります。
需要の一巡: AI投資ブームが一段落した場合、製造装置への需要が減少する可能性があります。
消耗品による安定収益
ディスコの強みとして、消耗品(ダイシングブレードなど)による安定収益があります。元々は砥石メーカーであった同社は、自社装置の稼働に伴って必ず売れる消耗品からの収益基盤を持っています。
装置販売が変動しても、稼働中の装置からの消耗品需要は安定的に発生するため、業績の下支え要因となります。
まとめ
ディスコの株価がストップ高となった背景には、AI半導体需要を追い風とした好決算があります。26年3月期は6期連続の最高益更新が見込まれ、24円の増配も発表されました。
同社は「切る・削る・磨く」の技術で半導体製造装置市場を牽引し、特に先端品向けではほぼ独占的なシェアを持っています。AI半導体市場の成長が続く限り、ディスコの業績も堅調に推移すると期待されています。
ただし、景気後退や米中対立、需要の一巡といったリスク要因も存在します。投資判断においては、これらの要素を総合的に考慮する必要があります。
参考資料:
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