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by nicoxz

多様性を引き出す管理職のファシリテーション術

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はじめに

企業の多様性(ダイバーシティ)推進が叫ばれて久しいですが、女性管理職比率や外国人採用の「数」を追うだけでは不十分です。早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は、多様な人材を集めた後の「意見の引き出し方」こそが本質的に重要だと指摘しています。

入山氏はお笑い番組「アメトーーク!」のMC・蛍原徹氏のスタイルを理想的なファシリテーションの手本として紹介し、管理職に求められる新たな役割を提言しています。この記事では、入山氏の理論を軸に、多様性を組織の力に変えるファシリテーションの具体的な手法を解説します。

ダイバーシティの本質は「知の探索」

2種類のダイバーシティを理解する

入山氏は経営学の理論に基づき、ダイバーシティを2つのタイプに分類しています。1つ目は「デモグラフィー型」で、性別、国籍、年齢など目に見える属性の多様性を指します。2つ目は「タスク型」で、能力、経験、価値観、専門知識といった内面的な多様性です。

イノベーションの創出に本質的に重要なのはタスク型ダイバーシティです。経営学の基本理論では、イノベーションとは「既存知と既存知の新しい組み合わせ」から生まれるとされています。異なる知識や経験を持つ人材が集まり、それぞれの「知」を組み合わせることで、これまでになかったアイデアが生まれます。

ダイバーシティだけでは意味がない

しかし、多様な人材を採用するだけでは組織のパフォーマンスは向上しません。入山氏は「ダイバーシティだけではダメで、その先のインクルージョン(包摂性)が重要」と強調しています。

多様な背景を持つメンバーが集まっても、自由に意見を言えない環境では「知の組み合わせ」は起こりません。社員一人ひとりの多様な意見を引き出すことが何より重要であり、そのためには管理職・リーダー層が会議でファシリテーターに徹することが不可欠です。

「アメトーーク型」と「さんま御殿型」の違い

さんま御殿型は「最悪のファシリテーション」

入山氏は、ファシリテーションの良し悪しをテレビのお笑い番組に例えて説明しています。「踊る!さんま御殿!!」では、明石家さんまという圧倒的な話術を持つMCが中心に座り、出演者は「さんまに指名されないと発言できない」「面白いことを言わないと次から指名してもらえない」という構造になっています。

この構造では、MCと出演者が一対一の放射状の関係になり、出演者同士の横のつながりが生まれにくいのが特徴です。入山氏はこれを「ファシリテーションの観点では最悪」と評しています。企業の会議に置き換えれば、強いリーダーが一方的に仕切り、部下は指名されたときだけ発言する状態です。

アメトーーク型が理想の姿

対照的に「アメトーーク!」では、MC(蛍原徹氏)が出演者と同格か、あえてそれ以下の立場をとっています。蛍原氏は自分が中心になって喋るのではなく、出演者たちが自由に発言し、盛り上がる環境をつくっています。

このスタイルでは、出演者同士が自由気ままに発言でき、「心理的安全性」が非常に高い状態が実現されます。MCの役割は、発言していない人にうまく話を振ること、話が脱線したら軌道修正すること、そして全体の流れをつくることに徹します。

入山氏は、ファシリテーターの最大の仕事は「自分が中心になって喋らないこと」だと明言しています。

ファシリテーション力を高める実践手法

3つの基本原則

入山氏が提唱するファシリテーションの基本原則は以下の3つです。

第一に「ひたすら聞く」ことです。ファシリテーターが話しすぎると、参加者は受け身になります。管理職が自分の意見を述べるのは会議の最後でよく、まずは部下の発言に耳を傾けることが重要です。

第二に「しゃべっていない人に話を振る」ことです。会議では声の大きい人や積極的な人ばかりが発言しがちです。ファシリテーターは発言の少ないメンバーに意図的に声をかけ、多様な意見が場に出るよう配慮します。

第三に「脱線したら軌道修正する」ことです。自由な議論を促す一方で、目的からの逸脱が大きくなりすぎた場合には、穏やかに本題に戻す役割を果たします。

GAPジャパンの実践例

入山氏はGAP(ギャップ)の日本法人における取り組みを好事例として紹介しています。GAPジャパンで人事トップを務めた志水静香氏は、同社の管理職をすべてファシリテーターにすることに注力しました。

志水氏は組織変革認定ファシリテーターの資格を持ち、戦略人事やタレントマネジメント、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を専門領域としています。GAPは多様性を重要視する企業文化を持ち、そのためにはファシリテーション力が不可欠だという考えのもと、管理職教育を体系的に進めました。

GAPジャパンの創成期には「多様な価値観を持つ人たちがさまざまなアイデアを出し合って一つの目標に向かって仕事をする」という組織文化の基盤が構築されています。これは、ファシリテーション型リーダーシップが企業の組織づくりにおいて有効であることを示す実例です。

注意点・展望

ファシリテーション型マネジメントの導入にはいくつかの注意点があります。まず、従来型の「指示命令型」リーダーシップに慣れた組織では、急な転換は混乱を招く可能性があります。段階的に導入し、管理職が新しいスタイルに適応するための研修やサポートが必要です。

また、ファシリテーターに徹するということは、管理職が自分の意見を一切言わないという意味ではありません。最終的な意思決定の場面では、リーダーとしての判断を明確に示すことが求められます。重要なのは、判断に至るまでの過程で多様な意見を十分に引き出すことです。

日本企業では同質性の高い組織文化が長く続いてきましたが、グローバル競争の激化や労働人口の減少に伴い、多様な人材を活かす経営への転換が急務となっています。ファシリテーション力は、これからの管理職に求められる最も重要なスキルの一つです。

まとめ

多様性推進の本質は、多様な人材を集めることだけでなく、一人ひとりの意見を引き出して「知の組み合わせ」を実現することにあります。入山章栄教授が提唱する「アメトーーク型ファシリテーション」は、管理職が中心で喋るのではなく、参加者の発言を引き出し、心理的安全性の高い場をつくるアプローチです。

「ひたすら聞く」「しゃべっていない人に話を振る」「脱線したら軌道修正する」という3つの原則を実践することが、イノベーションを生む組織づくりの第一歩です。自社の会議を振り返り、「さんま御殿型」になっていないか確認してみてはいかがでしょうか。

参考資料:

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