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by nicoxz

NYダウ急反発、トランプ氏のグリーンランド関税撤回で安堵

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はじめに

2026年1月21日、米国株式市場は劇的な反発を見せました。トランプ米大統領がスイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)年次総会で、デンマーク自治領グリーンランドの取得について「武力は使わない」と明言し、さらに欧州諸国への関税措置の撤回を発表したためです。

前日の20日には、グリーンランドを巡る米欧対立の激化懸念から、ダウ工業株30種平均は870ドル安と、2025年10月以来の大幅下落を記録していました。わずか1日で市場心理が一変した背景には何があったのでしょうか。本記事では、この急展開の経緯と市場への影響、そして今後の見通しについて詳しく解説します。

トランプ大統領のダボス演説と関税撤回

「武力は使わない」発言の背景

トランプ大統領は21日のダボス会議での演説で、グリーンランドについて「米国の領土だ」「国家安全保障上の核心的利益だ」と改めて主張しました。一方で「武力を使いたくないし、使わない」と明確に述べ、軍事的手段による領有を否定しました。

グリーンランドを「氷の塊」と繰り返し呼びながらも、北極圏における戦略的重要性を強調。ロシアや中国の北極進出に対抗するため、米国による管理が不可欠だという認識を示しました。この発言により、前日までの「武力行使も排除しない」という強硬姿勢からの軟化が印象付けられました。

NATOとの「枠組み合意」発表

演説後、トランプ大統領はNATO(北大西洋条約機構)のルッテ事務総長と会談。「グリーンランドを含む北極圏全体に関する将来の合意に向けた枠組み」を構築したと発表しました。

具体的な合意内容は明らかにされていませんが、トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「この理解に基づき、2月1日に発効予定だった関税を課すことはしない」と投稿。欧州8カ国への関税措置の撤回を正式に表明しました。

撤回された関税措置の詳細

トランプ大統領は1月17日、グリーンランド領有に反対してデンマークを支持する欧州諸国に対し、厳しい関税措置を発表していました。対象となったのはデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、イギリス、オランダ、フィンランドの8カ国です。

当初の計画では、2月1日から10%の関税を課し、6月には25%に引き上げるとしていました。「グリーンランドの完全な購入で合意が成立しない限り」という条件付きの脅迫的な措置でしたが、これが撤回されたことで欧州各国は安堵の姿勢を示しています。

株式市場の劇的な反応

ダウ平均588ポイント高の急反発

21日のニューヨーク株式市場で、ダウ工業株30種平均は588.64ポイント(1.21%)上昇し、49,007.23ドルで取引を終えました。S&P500種株価指数は1.16%上昇して6,875.62、ナスダック総合指数は1.18%上昇して23,224.82となりました。

特にナスダック総合指数は12月以来の大幅上昇を記録。S&P500は11月以来の好パフォーマンスとなりました。小型株指数のラッセル2000は2%近く上昇し、過去最高値を更新しました。

セクター別の動向

上昇を牽引したのはエネルギー(XLE)、素材(XLB)、テクノロジー(XLK)セクターでした。ダウ平均の構成銘柄では、トラベラーズ、シェブロン、ハネウェル・インターナショナルが上昇。エヌビディアやアメリカン・エキスプレスも買われました。

一方、四半期決算を発表したジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は下落。ボーイングやマイクロソフトも売られる展開となりました。決算内容が市場予想を下回ったことが要因とみられます。

前日の急落からの反動

21日の急反発は、前日20日の急落からの反動という側面もあります。20日にはトランプ大統領がグリーンランド取得に向けて「武力行使も排除しない」と発言し、欧州8カ国への関税を発表。これを受けてダウ平均は870ドル安と、2025年10月上旬以来の下げ幅を記録していました。

投資家は米欧間の貿易戦争激化を懸念し、リスク回避の売りが広がっていました。それがわずか1日で一転したことで、市場のボラティリティの高さが改めて浮き彫りになりました。

欧州の対応とEUの報復措置

EU、17兆円規模の報復案を準備

トランプ大統領の関税発表を受け、EU(欧州連合)は930億ユーロ(約17兆円)規模の報復関税措置を検討していました。米国産品に対する関税引き上げや、米国企業への規制強化などが含まれていたとされます。

関税撤回によりこの報復措置も見送られる見通しですが、EU当局者は「今後も米国の動向を注視する」との姿勢を崩していません。

ドイツでW杯ボイコット論

興味深いのは、ドイツ国内で浮上したワールドカップ・ボイコット論です。2026年のサッカーW杯は米国、カナダ、メキシコの3カ国で共催されますが、1月15〜16日に実施された世論調査では、米国がグリーンランドを領有した場合のボイコットについて、賛成が47%、反対が35%という結果が出ました。

スポーツと政治の分離が原則とはいえ、国民感情がここまで高まっていたことは、米欧関係の緊張度を示す一つの指標と言えるでしょう。

注意点・今後の展望

合意の詳細は不透明

NATOとの「枠組み合意」について、トランプ大統領は具体的な内容を明らかにしていません。グリーンランドの領有についてデンマークが譲歩したわけではなく、単に「対話を続ける」という程度の合意である可能性もあります。

市場は関税撤回を好感して急反発しましたが、根本的な問題が解決したわけではありません。今後の交渉次第では、再び緊張が高まる可能性は十分にあります。

大統領発言による市場変動リスク

今回の事例は、トランプ大統領の発言一つで市場が大きく動くリスクを改めて示しました。21日の反発は、発言による「安心感」が主因であり、ファンダメンタルズの改善によるものではありません。

投資家は、政治的発言に過度に反応することなく、企業業績や経済指標などの基礎的要因を重視した投資判断が求められます。

米欧関係の今後

関税は撤回されましたが、米欧間の根底にある緊張は解消されていません。北極圏の資源や安全保障を巡る対立は続いており、今後も様々な形で摩擦が表面化する可能性があります。特に6月のサッカーW杯開幕を控え、欧州の対米感情がどう推移するかも注目されます。

まとめ

2026年1月21日、NYダウは前日の急落から一転して580ポイント以上の急反発を記録しました。トランプ大統領がダボス会議でグリーンランドへの武力行使を否定し、欧州8カ国への関税措置を撤回したことが主因です。

しかし、NATOとの「枠組み合意」の詳細は不透明であり、グリーンランド問題の根本的解決には至っていません。大統領発言に左右される市場のボラティリティは今後も続く可能性が高く、投資家は冷静な判断が求められます。米欧関係の動向は、引き続き世界の金融市場に影響を与える重要なファクターとなるでしょう。

参考資料:

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