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by nicoxz

ESG投資が防衛産業を容認する時代へ、欧州で進む新原則の策定

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はじめに

ESG(環境・社会・企業統治)投資の世界で、かつては想像もできなかった変化が起きています。欧州の投資家らが「責任ある防衛投資原則(PRDI:Principles for Responsible Defence Investment)」の策定を進めており、早ければ2026年4月にも発表される見通しです。

これまでESG投資では防衛関連企業は投資対象から除外されることが一般的でした。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、「民主主義を守るための防衛産業」という新たな視点が広がり、投資マネーの流れが大きく変わりつつあります。

本記事では、ESG投資と防衛産業を巡る環境変化と、新たな投資原則がもたらす影響について解説します。

ESG投資と防衛産業の関係変化

かつては「自動的に除外」だった防衛株

従来、サステナビリティを重視する投資家にとって、防衛セクターへの投資は避けるべきものでした。欧州の年金基金をはじめとするアセットオーナーは、各々の責任投資・ESG投資方針に基づき、防衛関連企業への投資を制限してきました。

欧州委員会の2024年3月の報告書によると、EU・英国拠点のESGファンドで航空宇宙・防衛セクターへのエクスポージャーを持つファンドは29.8%にとどまっていました(米国拠点のESGファンドでは36.4%)。

ウクライナ侵攻が転換点に

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻は、欧州の安全保障観を根本から変えました。それまで「自動的に除外」されていた防衛産業が、民主主義と国家安全保障を守るための重要なセクターとして再評価されるようになりました。

特に北欧諸国を中心に世論の風向きが変化し、「抑止力=社会貢献」という新たな投資概念が広がっています。

劇的な資金流入

この変化は数字にも表れています。2022年2月以降、「S&Pグローバル1200エアロスペース・アンド・ディフェンス指数」は約70%上昇しました。これに対しストックス欧州600指数の上げは25%程度にとどまっており、防衛株の優位性は明らかです。

防衛関連ETFへの資金流入も加速しています。2024年の流入額は19億ユーロ弱でしたが、2025年は6月までに既に累計80億ユーロを超える資金が流入しています。

欧州ESGファンドの方針転換

ESGファンドの防衛株保有が急増

ロシアのウクライナ侵攻から2024年末までの間に、欧州サステナブルファンドで運用資産の最低1%を航空宇宙・防衛株に投じる商品のシェアは、アクティブファンドで37%、パッシブファンドでは67%も増加しました。

これは、長年そうした資産を「投資に適さない」としてきたファンドの劇的な転換を意味します。年金基金や保険会社も、投資可能な資産クラスに防衛関連を加えるよう方針を見直す動きが見られます。

ESGファンドへの資金流入が回復

ESGファンドへの逆風も弱まっています。2025年4〜6月期は2四半期ぶりに流入超となりました。欧州で防衛産業への投資を容認する動きが広がるなど、気候変動一辺倒から経済・安全保障重視にカジを切ったことが大きな要因とされています。

「責任ある防衛投資原則」とは

新たなガイドラインの必要性

防衛産業への投資が拡大する中、ESGの枠組みの中でこれをどう位置づけるかが課題となっています。欧州の投資家グループは「責任ある防衛投資原則(PRDI)」の策定を進めており、2026年4月頃の発表を目指しています。

このガイドラインは、ESGにそぐわないと考えられてきた防衛関連企業に投資するための基準を示すもので、サステナビリティと安全保障の両立を図る試みです。

明確な除外対象は維持

重要なのは、すべての軍事関連産業が投資対象になるわけではないことです。ESG投資で明確に除外すべき対象として、以下のものが挙げられています。

  • 非人道兵器
  • 核兵器
  • 対人地雷
  • クラスター爆弾

これらは使用によって民間人を巻き込むリスクが高いため、引き続き投資対象から除外されます。ノルウェー政府年金基金も、軍事関連産業すべてを除外しているわけではなく、これらの兵器に関わる企業のみを除外対象としています。

欧州防衛産業への投資拡大

巨額の防衛投資計画

欧州では今後10年間に1兆6,000億ユーロ超規模の防衛関連投資が計画されています。EUの「リアーム・ヨーロッパ」計画などの政策的な後押しもあり、防衛産業への資金供給は拡大基調にあります。

米国との防衛負担を巡る議論や、地政学リスクの高まりを受けて、欧州各国は国防費の増額を進めており、民間投資家にとっても長期的な投資機会が生まれています。

VCも防衛スタートアップに注目

ベンチャーキャピタル(VC)も防衛関連企業への投資を活発化させています。防衛関連株のETFが初めて上場し、未公開株への投資額も過去最高を更新しています。

北欧を中心に、防衛産業への投資は「民主主義を守るための手段」として社会的に認知されるようになっています。

課題と今後の展望

コンセンサス形成の難しさ

防衛セクター投資をESGの枠組みの中でどう位置付けるかについては、欧州内でも議論が分かれています。ドイツの教会関連年金基金のように、防衛セクターへの投資を依然として除外している投資家も存在します。

コンセンサス不在の状況が長期化すれば、EUのESG投資に対する信頼性や一貫性がリスクに晒される可能性があります。PRDIの策定は、この問題に一定の解を与える試みといえます。

日本への影響

日本でも防衛産業は「新しい成長テーマ」として注目を集めています。欧州でのESG基準の変化は、日本の機関投資家やESGファンドの運用方針にも影響を与える可能性があります。

非人道兵器を製造していない防衛関連企業であれば、ESG再評価の潮流において新たな投資対象となる可能性が広がっています。

まとめ

欧州で進む「責任ある防衛投資原則(PRDI)」の策定は、ESG投資の概念そのものを変える可能性を持っています。かつて「自動的に除外」されていた防衛産業が、民主主義と安全保障を守るための重要なセクターとして再評価される時代が来ています。

一方で、非人道兵器などへの投資除外は維持されており、ESGの根本的な理念が否定されたわけではありません。サステナビリティと安全保障の両立という新たな課題に、投資家がどう向き合うかが問われています。

参考資料:

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