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by nicoxz

日欧デュアルユース技術協力の全貌と今後の展望

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はじめに

日本政府が欧州諸国とデュアルユース(軍民両用)技術分野での企業間協力を本格化させています。その第1弾として、フィンランド政府との共同マッチング支援が始動し、融資や貿易保険などの財政支援も検討されています。

欧州ではロシアのウクライナ侵攻以降、防衛費の大幅増額が進み、デュアルユース技術への需要が急拡大しています。一方、日本は長年にわたり軍事研究に慎重な姿勢をとってきたため、この分野で欧米に大きく後れをとってきました。今回の日欧協力は、その遅れを取り戻すとともに、技術革新を加速させる重要な転換点です。

本記事では、日欧デュアルユース技術協力の背景、フィンランドが第1弾に選ばれた理由、そして今後の展望について詳しく解説します。

デュアルユース技術とは何か

軍民両用の基本概念

デュアルユース技術とは、民間と軍事の両方の分野で利用可能な技術を指します。身近な例では、インターネットやGPS、ドローンなどが代表的です。もともと軍事目的で開発された技術が民間に転用されるケースもあれば、逆に民間で発展した技術が防衛に応用されるケースもあります。

近年では特に後者のパターンが注目されています。AI、量子コンピューティング、サイバーセキュリティ、自律型システムなど、民間のイノベーションが防衛分野の変革を牽引する構図が世界的に広がっています。

日本が抱えてきた課題

日本では第二次世界大戦の反省から、科学技術の軍事利用に対して慎重な姿勢が長く続いてきました。日本学術会議は軍事目的の研究に反対する声明を繰り返し発表してきた経緯があります。

しかし、安全保障環境の変化を受けて状況は大きく転換しています。日本政府は2023年8月にデュアルユース技術として重点的に開発を推進する9分野を指定しました。ドローンを含む自律・自動化技術、サイバーセキュリティ、宇宙関連技術などが含まれています。さらに、2025年にはセキュリティ・クリアランス法が成立し、機微情報を扱うための認証制度が整備されました。

なぜフィンランドが第1弾なのか

フィンランドの防衛産業エコシステム

フィンランドが日欧デュアルユース協力の第1弾パートナーに選ばれた背景には、同国の充実した防衛産業エコシステムがあります。フィンランドは2023年4月にNATOに加盟して以降、防衛産業への投資が急増しています。

フィンランドのデュアルユース企業の約60%はソフトウェア関連で、センシング、コネクティビティ、サイバーセキュリティが主な技術分野です。ベンチャーキャピタルの投資額を見ると、宇宙分野で4億8,800万ユーロ(欧州4位)、量子分野で2億5,500万ユーロ(同3位)と、北欧最大の規模を誇っています。

2025年8月には、南部リーヒマキにデュアルユース技術の開発支援のための試験施設が開設されました。この施設はDEFINE(防衛イノベーション・ネットワーク・フィンランド)のイノベーションハブに設置されており、スタートアップに試験環境を提供しています。

日本とフィンランドの深まる防衛関係

日本とフィンランドの防衛協力は近年急速に進展しています。2024年12月には石破首相とオルポ首相が安全保障協力の強化で合意し、防衛装備品・技術の移転に関する条約交渉の開始が発表されました。

2025年6月の共同声明では、防衛省間の政策対話、防衛装備品に関するワーキンググループ、自衛隊とフィンランド国防軍の交流、ハイブリッド脅威への対処協力の4分野で連携を強化する方針が確認されています。

具体的な成果として、陸上自衛隊はフィンランドのPatria社製装甲モジュール車両(AMV)を次期装甲車として採用しました。また、フィンランドのICEYE社が提供する合成開口レーダー(SAR)衛星技術は、日本の東京海上や鹿島建設系ベンチャーなどとの協業が進んでいます。

日欧全体の防衛技術協力の枠組み

Horizon Europeへの日本参加

日本は2026年からEUの研究・イノベーションプログラム「Horizon Europe」に正式参加する予定です。総額935億ユーロの同プログラムに参加することで、日本の研究者や企業がEU側と対等な立場で共同研究に参画できるようになります。気候、エネルギー、デジタル、宇宙、健康など幅広い分野が対象です。

日EU防衛産業対話の始動

日本とEUは防衛産業基盤の強化を共通の優先事項と位置づけ、「日EU防衛産業対話」の立ち上げに合意しています。民間企業が防衛装備品の共同研究・開発に取り組みやすい環境整備が進められており、EUが日欧企業の共同プロジェクトに資金提供する仕組みも検討されています。

欧州防衛投資の拡大

欧州委員会は「欧州の安全保障行動(SAFE)」として1,500億ユーロ規模の加盟国向け融資制度を設置しました。2026年2月以降に融資が開始される見通しで、防衛関連産業への投資が本格化します。この動きは日本企業にとっても大きな商機となります。

注意点・展望

デュアルユース協力の課題

日欧デュアルユース技術協力には、いくつかの課題が存在します。まず、日本企業の欧州防衛市場での実績が乏しい点です。技術力があっても、欧州の防衛調達プロセスや規格に不慣れな企業が多く、マッチング支援だけでなく、実務的なサポートが不可欠です。

また、輸出管理の調整も重要な課題です。デュアルユース技術は安全保障上のリスクを伴うため、技術移転には慎重なルール整備が求められます。日本の防衛装備移転三原則との整合性も確保する必要があります。

中国の対日輸出規制との関連

2026年1月には、中国がデュアルユース規制に基づく対日輸出規制の強化を発表しました。レアアース関連製品も対象に含まれる可能性があり、日本のサプライチェーンに影響を及ぼしかねません。こうした状況も、日欧間のデュアルユース技術協力を加速させる一因となっています。

今後の見通し

フィンランドに続く第2弾、第3弾のパートナー国にも注目が集まります。NATOの技術実装推進機関「DIANA」には欧州各国が参加しており、選定企業には最大40万ユーロの資金とテスト環境が提供されています。日本企業がこうした欧州の枠組みにアクセスする機会は今後さらに広がるでしょう。

2025年4月にはNATOのルッテ事務総長と日本のデュアルユース・スタートアップ8社が経済産業省で意見交換を行うなど、国際連携は着実に進んでいます。

まとめ

日本とフィンランドを第1弾とする日欧デュアルユース技術協力は、日本の安全保障政策と産業政策の両面で大きな転換点です。欧州の防衛費増額による市場拡大を背景に、ドローン、レーダー、サイバーセキュリティなどの分野で日本企業が欧州市場に参入する道が開かれつつあります。

企業や研究機関にとっては、Horizon Europeへの参加、日EU防衛産業対話、各国との二国間協力枠組みなど、複数のチャネルを活用した戦略的なアプローチが重要です。デュアルユース技術は今後の産業競争力を左右する分野であり、この動きを注視していく必要があります。

参考資料:

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