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by nicoxz

FRBパウエル議長が独立性を死守、トランプ政権と対峙

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はじめに

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は2026年1月28日のFOMC後の記者会見で、中央銀行の政治からの独立に「強くコミットしている」と強調しました。5月に議長任期が満了した後も理事としてFRBに残る可能性を否定せず、理事ポストを狙うトランプ政権の動きをけん制した形です。

1月11日には米司法省(DOJ)による刑事捜査を受けたことを自ら公表し、政権の圧力を公然と批判したパウエル氏。FRBの独立性をめぐる攻防は、米国の金融政策の根幹に関わる重大な問題に発展しています。

DOJ刑事捜査の衝撃

異例の捜査と政治的背景

2026年1月11日、パウエル議長はビデオメッセージで自らが司法省の刑事捜査を受けていることを公表しました。捜査の名目はFRB本部の25億ドル規模の改修工事と、それに関するパウエル氏の議会証言に関するものとされています。

しかしパウエル氏は、これらは「口実に過ぎない」と一蹴しました。「刑事訴追の脅威は、FRBが大統領の意向ではなく、国民の利益に最も資するとの判断に基づいて金利を設定してきたことの結果だ」と述べ、政治的動機による捜査だとの認識を示しました。

超党派の反発

この捜査に対しては、与党共和党からも強い反発が起きています。共和党のトム・ティリス上院議員は、捜査が解決するまでパウエル氏の後任の指名承認に反対すると表明しました。リサ・マーコウスキー上院議員もこれに同調し、「FRBが独立性を失えば、市場と経済の安定が損なわれる」と警告しています。

歴代のFRB議長であるジャネット・イエレン氏、ベン・バーナンキ氏、アラン・グリーンスパン氏も共同声明で「検察権を利用してFRBの独立性を損なう前例のない試みだ」と批判し、「新興国の脆弱な制度の下で金融政策が決定されるのと同じ構図だ」と指摘しました。

1月FOMCと金利政策の現状

4会合ぶりの据え置き

FOMCは1月27〜28日の会合で、政策金利の据え置きを賛成10、反対2で決定しました。FF金利の誘導目標レンジは3.5〜3.75%に維持されています。2025年12月にかけて3会合連続で利下げを実施した後の一時停止という位置づけです。

パウエル議長は会見で、雇用の下振れリスクが縮小したとの見方を示し、利下げを急ぐ必要がないとの姿勢を明確にしました。

反対票の意味

ウォラーFRB理事とミラン理事が0.25ポイントの利下げを主張して反対票を投じました。ミラン理事は2026年中に1.5ポイントの大幅利下げを求めており、ウォラー理事も今後1.0ポイントの利下げ余地があると指摘しています。利下げ派の存在は、今後の政策運営に影響を与える可能性があります。

議長退任後の「理事留任」戦略

パウエル氏の選択肢

パウエル氏のFRB議長としての任期は2026年5月に満了しますが、理事としての任期は2028年まで残っています。通常、議長退任後は理事も辞任するのが慣例ですが、パウエル氏はこの慣例に従わない可能性を示唆しています。

理事として残ることで、後任議長の下でも政策決定に影響力を持ち続けることができます。これはトランプ政権がFRBの理事枠を独自の人物で埋めようとする動きに対する防波堤となります。

後任議長候補

トランプ大統領は近々新議長候補を公表する方針です。ウォラーFRB理事、ケビン・ウォーシュ元FRB理事、ホワイトハウス経済顧問のケビン・ハセット氏などが候補に挙がっています。トランプ氏はパウエル氏について「あいつはもうすぐいなくなる」と公然と攻撃しており、より自身の意向に沿う人物の起用を目指しています。

注意点・展望

市場への影響

パウエル氏が刑事捜査を公表した直後、S&P500先物は0.4%以上下落し、ドルも主要通貨に対して0.2%下落しました。FRBの独立性に対する懸念は、金融市場にとって重大なリスク要因です。中央銀行が政治的圧力に屈するとの見方が広がれば、長期金利の上昇やドルの信認低下につながる恐れがあります。

制度的な試練

FRBの独立性は法律で保障されていますが、その実効性は最終的に政治的な慣行と市場の信頼に依存しています。今回の事態は、その慣行が破られた場合に何が起きるかを示す重要なケーススタディとなっています。

まとめ

パウエル議長の「独立性への強いコミットメント」は、単なる修辞ではなく、理事留任の可能性という具体的な行動に裏打ちされています。刑事捜査という異例の圧力に対して、超党派の議員や歴代議長が支持を表明していることは、FRBの独立性に対する制度的な支持基盤がまだ機能していることを示しています。

しかし、5月の議長交代に向けて、トランプ政権がどこまでFRBへの介入を強めるかは不透明です。金融政策の独立性は米ドルの信認と世界経済の安定の基盤であり、今後の展開は日本を含む各国の金融市場にも大きな影響を与えます。

参考資料:

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