富士通が業績上方修正と配当大幅増額を発表
はじめに
富士通(証券コード:6702)は2026年1月29日、2026年3月期(今期)の連結業績予想の上方修正と年間配当の大幅増額を発表しました。通期の純利益見通しは前期比93.4%増の4,250億円に引き上げられ、2期ぶりの過去最高益をさらに上乗せする形です。
翌30日の株式市場では、富士通株は一時前日比7%超の上昇を見せ、投資家からの強い評価を受けました。この記事では、上方修正の背景にあるDX事業の好調ぶり、配当増額の意味合い、そして今後の成長戦略について詳しく解説します。
業績上方修正の詳細と好調の背景
第3四半期累計の大幅増益
2026年3月期の第3四半期累計(2025年4月〜12月)の連結最終利益は、前年同期比3.9倍となる3,436億円に急拡大しました。直近の10〜12月期(第3四半期)単独でも、最終利益は前年同期比55.9%増の816億円を記録しています。
売上営業利益率は前年同期の7.3%から11.9%へと大幅に改善しており、収益性の向上が顕著です。調整後営業利益は2,291億円と前年同期比67.1%増となり、利益率の改善が全社的に進んでいることがわかります。
通期業績予想の引き上げ
通期の業績予想は以下のように修正されました。
- 売上収益: 前期比0.6%減の3兆5,300億円(据え置き)
- 営業利益: 前期比35.8%増の3,600億円
- 純利益: 従来予想3,900億円 → 4,250億円に9.0%上方修正(前期比93.4%増)
- 調整後営業利益: 前期比23.7%増の3,800億円
売上収益はほぼ横ばいながら、利益が大幅に拡大している点が注目です。これは事業構造の転換が着実に進んでいることを示しています。
DXとモダナイゼーション案件の伸長
好調の主因は、サービスソリューション事業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)やモダナイゼーション(レガシーシステムの最新化)案件の伸びです。企業のデジタル化需要は依然として旺盛で、富士通はこの分野で着実に受注を拡大しています。
加えて、採算改善の取り組みが実を結び、プロジェクト管理の精度向上や不採算案件の削減が利益率の改善に貢献しました。
株式売却益も利益を押し上げ
富士通ゼネラルと新光電気工業の保有株売却に伴う売却益も、最終利益を押し上げる要因となりました。事業ポートフォリオの見直しと保有株式の縮減を進める中で、財務面でもプラスの効果が生まれています。
配当増額と株主還元の強化
年間配当50円へ大幅増額
富士通は今期の年間配当を、従来計画の30円から50円に引き上げました。前期の実績配当は28円だったため、実に78.6%の増配となります。業績の大幅な改善を株主に還元する姿勢を明確にした形です。
この大幅増配は、富士通が中期経営計画で掲げる株主還元の強化方針に沿ったものです。利益成長に連動した配当政策を推進することで、中長期的な投資家からの信頼獲得を目指しています。
株式市場の反応
1月30日の東京株式市場で、富士通株は前日比299円(7.33%)高の4,374円を付ける場面がありました。業績上方修正と増配のダブルでの好材料が、投資家の買い意欲を刺激した格好です。
アナリストのコンセンサスは「買い」で、平均目標株価は4,962円とされています。強気買い8人、買い3人、中立2人という構成で、市場関係者の評価は総じてポジティブです。
成長戦略「Fujitsu Uvance」の展望
Uvance事業の急成長
富士通の成長を牽引するのが、DX事業の中核ブランド「Fujitsu Uvance」です。「Universal」と「Advance」を組み合わせた造語で、社会課題の解決とビジネス変革を支援するサービス群を指します。
2024年度のUvance売上は目標4,500億円を大幅に上回る4,828億円を達成しました。2025年度には7,000億円を目標に掲げており、サービスソリューション全体の約30%を占める事業に成長しています。
2030年に向けた長期ビジョン
富士通は2030年度にはサービスソリューション全体の50%をUvanceが占めることを目指しています。特に「Sustainable Manufacturing」「Consumer Experience」「Healthy Living」「Trusted Society」の4つのバーティカル領域の拡大が鍵となります。
AIエージェント技術の活用やPhysical AI技術の開発にも注力しており、テクノロジー面での差別化を進めています。企業のAI活用を「試用段階」から「成果創出」のフェーズへ引き上げることを目指す戦略は、今後の収益拡大に寄与する可能性があります。
注意点・展望
業績好調と株価上昇の一方で、いくつかの留意点があります。まず、最終利益の増加には株式売却益という一時的な要因が含まれている点です。本業の収益力を見る際には、調整後営業利益の推移に注目する必要があります。
また、売上収益自体は前期比でほぼ横ばいの見通しです。利益率改善による利益成長は評価できますが、トップラインの成長が伴わなければ、持続的な利益拡大には限界があります。Uvance事業を中心とした売上成長の実現が中長期的な課題です。
今後の焦点は、2026年度以降のバーティカル領域の加速的な成長が計画通りに進むかどうかです。DX市場の競争は激しく、NTTデータやNECなど競合他社も積極的な投資を行っています。
まとめ
富士通の2026年3月期の業績上方修正は、DX事業の好調と収益性改善が結実した結果です。純利益93.4%増の4,250億円という過去最高益見通しは、事業構造改革の成果を示しています。年間配当も28円から50円への大幅増額となり、株主還元の強化も明確です。
投資家にとっては、Uvance事業の成長持続性と、売上収益のトップライン成長が今後の評価ポイントとなります。2030年に向けたAI・DX領域での成長戦略の進捗を注視していくことが重要です。
参考資料:
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