G7がレアアースの中国依存低減で協調、閣僚級協議開催

by nicoxz

はじめに

主要7カ国(G7)および資源国の財務相が2026年1月12日、米ワシントンでレアアース(希土類)など重要鉱物に関する閣僚級協議を開催しました。この会議では、有志国が連携してサプライチェーン(供給網)を整備し、中国への依存度を引き下げることで一致しました。

レアアースは電気自動車(EV)のモーターや風力発電機、スマートフォンなど、現代のハイテク製品に不可欠な素材です。しかし、その供給は中国に大きく偏っており、地政学的リスクが懸念されています。本記事では、会議の内容と今後の展望について解説します。

ワシントン会議の概要

参加国と議題

今回の協議には、G7各国(日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ)に加え、欧州連合(EU)、オーストラリア、インド、韓国、メキシコの閣僚も出席しました。米財務長官のスコット・ベセント氏が主催し、日曜日の夕食会から会議が始まりました。

米財務省は声明で、ベセント長官が「重要鉱物、特にレアアースのサプライチェーンを確保・多様化するための解決策を議論する」ことを求めたと発表しました。また、各国が中国からの「デカップリング(切り離し)ではなく、慎重なデリスキング(リスク軽減)」を追求することへの期待も示されました。

主な合意事項

日本の片山さつき財務大臣は記者団に対し、「レアアースの中国依存を迅速に低減する必要性について、幅広い合意が得られた」と述べました。

ドイツのラース・クリングベイル財務大臣は、会議ではレアアースの価格フロア(下限価格)の設定や、供給拡大に向けたパートナーシップについて議論されたと説明しました。ただし、議論はまだ始まったばかりであり、多くの課題が残されているとも付け加えています。

レアアースと重要鉱物の供給問題は、2026年のフランス議長国のもとでG7の中心議題となる見込みです。

中国の圧倒的な支配力

精錬工程での独占

国際エネルギー機関(IEA)によると、中国は銅、リチウム、コバルト、グラファイト、レアアースの精錬において47%から87%のシェアを占めています。特にレアアースについては、工業利用可能な形に精錬する工程で世界の91%を中国が握っています。

2020年から2024年にかけて、精製材料の生産増加は主要供給国に集中しており、ほぼすべての重要鉱物で地理的集中が進んでいます。ニッケルはインドネシア、その他の鉱物は中国がほぼ単独で供給増を担っています。

日本を除くG7の脆弱性

2010年に中国が突如として重要鉱物の供給を停止した経験から対策を講じた日本を除き、G7加盟国は依然として中国産の重要鉱物に大きく依存しています。

EVモーターに使用されるネオジム磁石の補助材料であるジスプロシウムやテルビウムなどの重希土類は、ほぼ100%を中国に依存しているのが現状です。

供給途絶のリスクと影響

経済的インパクト

IEAの分析によると、重要鉱物の供給ショックは遠くまで影響を及ぼし、消費者への価格上昇や産業競争力の低下を招く可能性があります。バッテリー用金属の持続的な供給ショックが発生した場合、世界の平均バッテリーパック価格は40〜50%上昇する可能性があります。

中国がレアアースの輸出規制を導入した場合、日本の製造業は深刻な打撃を受けることが予想されています。特にEV、電子機器、医療機器など、レアアースを必要とする製品の生産に影響が出る可能性があります。

地政学的リスクの高まり

中国外務省の毛寧報道官は記者会見で、重要鉱物のグローバルなサプライチェーンの安定性と安全性を維持する中国の立場は変わらないと述べました。一方で、国際社会では中国の供給支配力を戦略的脅威と見なす声が高まっています。

依存脱却に向けた取り組み

G7の行動計画

G7は「クリティカルミネラル行動計画」を策定し、加盟国間で重要鉱物のサプライチェーンを協調的に強化する方針を掲げています。2025年10月までに、G7加盟国は同行動計画のもとで26の新規プロジェクトとパートナーシップを発表し、64億ドルを動員してサプライチェーン強化を図っています。

具体的には、カナダのグラファイト鉱山における日本およびEUとの連携や、ドイツと米国が支援するオンタリオ州での新たなレアアース処理施設などが含まれます。

日本の先進的な対応

2012年の尖閣問題後のレアアース輸出規制を経験した日本は、中国依存脱却に向けて4つの柱で取り組んできました:

  1. 調達先の多様化:豪州、インド、カザフスタンなどとの連携強化
  2. 代替技術の開発:レアアースを使わない磁石や材料の研究開発
  3. 国家備蓄の強化:エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じた戦略備蓄の拡充
  4. リサイクルの促進:使用済み製品からのレアアース回収技術の開発

これらの取り組みにより、日本のレアアース中国依存度は尖閣問題時の90%から現在の約60%に低下しています。

日本企業の技術革新

日本企業はレアアースの使用量削減技術で世界をリードしています。信越化学工業は重希土類(ジスプロシウム)の使用量を半減する「粒界拡散法」を実用化しました。三菱マテリアルは使用済みモーターや家電からの磁石回収・再生技術を開発しています。

これらの技術は国際的にも注目されており、米国などが日本の技術協力を求める動きもあります。

代替供給源の開発

新興バッテリー技術

リン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーは近年急速に普及し、EV市場のほぼ半数をカバーするようになりました(2020年の10%未満から大幅増加)。ナトリウムイオンバッテリーやマンガンリッチリチウムイオンバッテリーなどの新興技術も勢いを増しています。

国際パートナーシップの可能性

グローバルな協力は供給源の多様化に不可欠です。マダガスカル、モザンビーク、タンザニアなどのアフリカ諸国は世界のグラファイト資源の約4分の1を保有しています。また、オーストラリア、ブラジル、ベトナムなどには豊富なレアアース資源が存在し、欧州、マレーシア、米国は分離施設への投資を進めています。

深海採掘とリサイクル

日本では南鳥島近海の水深6000メートルの海底に眠るレアアースの試験掘削が2026年1月より開始される予定です。海底には陸上の何百倍ものレアアースが眠っていると考えられていますが、深海からの採掘と精錬を商業的に成立させることは技術的に困難な課題です。

また、米国では石炭灰からのレアアース回収も研究されており、テキサス大学の2024年の研究によると、米国の石炭灰の備蓄には1100万トン、84億ドル相当のレアアースが含まれているとされています。

注意点・展望

短期的な依存脱却は困難

レアアースの代替供給源開発には長い時間と多額の投資が必要です。鉱山開発から精錬施設の建設まで、通常10年以上の期間を要します。そのため、短期的には中国依存を大幅に低減することは困難であり、段階的なアプローチが現実的です。

価格フロア設定の課題

会議で議論された価格フロア(下限価格)の設定には、WTO(世界貿易機関)のルールとの整合性や、消費者価格への影響など、多くの課題があります。実現には各国間の調整と慎重な制度設計が必要です。

今後のG7の動き

レアアースと重要鉱物の問題は、2026年のフランス議長国のもとでG7の中心議題として継続的に議論される予定です。具体的な行動計画と各国の役割分担が今後明確化されることが期待されます。

まとめ

G7と資源国の財務相がワシントンで開催した閣僚級協議では、レアアースの中国依存度引き下げに向けたサプライチェーン整備で合意が得られました。価格フロアの設定や新たなパートナーシップ構築が議論されましたが、具体策についてはまだ多くの課題が残されています。

日本は2010年の輸出規制を契機に依存脱却に取り組んできた経験があり、技術革新やリサイクル分野で国際的な貢献が期待されています。EV普及や再生可能エネルギーへの転換が進む中、重要鉱物の安定供給確保は世界的な課題となっており、国際協調による対応がますます重要になっています。

参考資料:

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